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スイッチはいつも転がっている

僕は、吉田松陰もさることながら、弟子である高杉晋作の事も好きだ。

晋作は「幕末の風雲児」と呼ばれ、倒幕、
そして明治維新に貢献したことは
教科書にも載っているが、人生の大半を苦悩と共に過ごしたことはあまり知られていない。

実はとても繊細な性格で、エリート一家出身の晋作は、悶々とした生活を送りながら、最後は父の言うことを聞く優等生だった。
イギリスへの留学が決まり掛けていたが、
惜しくも最終選考で落選。
一方、長州藩のライバルである久坂玄瑞は京都で着実にその名を轟かせていた。
焦りや悩みを開示できないまま、苦悩を抱え過ごしたとされている。

晋作はとても人間臭いところが良い。
そしてその苦悩を元に多くの詩や漢詩を
創ったアーティストとしても知られている。

晋作を一気に変えた出来事が、上海への短期留学だった。
晋作は、当時アヘン戦争で敗北した中国人が列強であるイギリスやフランスに奴隷のように
扱われていることを目の当たりにする。

日本も同様になるかもしれないという果てしない危機感と、ヨーロッパの近代化の凄さを
体感した晋作は帰国後、
師匠である松陰のようになっていく。
そう。ここから晋作の自我はやっと開示されていく。
それがやがて奇兵隊の結成や、瀕死の長州藩を救うリーダーシップの原点になっていく。
晋作の本当のスイッチを押したのは、海外での経験だった。

世界はとても広い。
まだまだ知らないことはとても多い。
見たことがない景色を見ることは、
とてもワクワクする。
自分自身の知識の海が広がっていくような感覚は何とも言えない。

晋作は獄中にいる松陰に手紙でこんなことを
聞いている。

晋作「男らしい男として、どういうときに死んだらいいでしょうか?」

松陰「死んで自分が不滅の存在になる見込みがあるなら、いつでも死ぬ道を選ぶべきだ。また、生きて、自分が国家の大業をやり遂げることができるという見込みがあるのなら、いつでも生きるべきだ。生きるとか死ぬとか・・・・、それはかたちに過ぎないのであって、そのようなことにこだわるべきではありません。」

いかにも松陰らしい言葉だ。
確かに当時の時代背景と今の時代は全く違うものの、驚くべきはまだ150年前に生きた人達の言葉だということだ。

どのように生きるか?」ではなく、
どのように死ぬか?」を問う。
一見似ているようで、全く違う問いだ。

仏教の教えに「諸行無常」という教えがある。
これは、あらゆるものは全て変化するという意味で、永遠に変わらないものはないということだ。

この世の中で、死なない人はいない。
しかし、明日死ぬと思って生きている人は
とても少ない。
いずれ迎える死を感じながら生きるということは、豊かな現代においてこそ必要な問いなのかもしれない。

脈絡のない内容になってしまったが、
最後に晋作の有名な詩をご紹介したい。

「おもしろき こともなき世に おもしろく 
 棲みなすものは 心なりけり」

意味は、
世の中で生きていくということは、そもそも、”おもしろい”ものではない。
けれども、その”おもしろい”ものではない世の中でも、自分の”心”次第では、
”おもしろく”暮らしていくことができるのです。

という意味らしい。

ちなみに晋作が詠んだのは上の句「おもしき こともなき世に おもしろく」までで、
後半の句は歌人である野村望東尼という人が付け加えたとされている。

何となく意味だけを聞くと、どんな悲しいことがあってもポジティブに生きよ!と捉える人が多いように思う。
しかし、晋作がこの句を詠んだ時期が趣深い。

いち早く近代化に取り組んだ長州藩はやがて薩摩藩と同盟を組む。
もはや幕府軍も長州藩には勝てないほど、
長州藩はライジングしていく最中、
晋作は突然肺結核を患う。
そして、あっけなく半年くらいで
亡くなってしまう。
翌年に迫った大政奉還を見届ける間もなく。
なぜこの時期にと思っただろう。

きっとこれからの日本の行く末を
見届けたかっただろう。
やっとこれから活躍出来ると
確信していただろう。
やっと自分が思い描く時代が来たと
思っていただろう。
生きていたら間違いなく明治維新での
中心人物になっていただろう。

そんな矢先での不治の病に罹患。
そのような状況でポジティブになんて考えられなかったはず。
きっと自分に言い聞かせるように詠んだのではないだろうか。
悲しみや苦しみを抱えながら。
これから大きく変わる日本に期待を抱きながら。

27歳8ヶ月。
晋作の活躍は実に亡くなる2年くらいのものばかり。人生は本当に何があるか分からない。

きっと、あなたが動けば動いた分だけ、人生を変えるスイッチは転がっている。
悩んだり、やる気が出ない時こそ、動いてみると良い。
大丈夫。能力は必ず後からついてくる。


僕もこれから見る景色を楽しみに、新たなスイッチを探す旅に出よう。





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