11/3

父と母が東京に来た。1年に1度の旅行だ。品川駅で出迎えた。数週間前に会ったばかりのはずなのに父と母の雰囲気が少し変わったように感じた。はなが亡くなってから父と母は実家で2人きり。はなのいない寂しさを1番身近に感じていたこともあり、その疲れや悲しみがたまっていたのかもしれない。そんな父と母と3人で品川駅のスープスパゲッティの店に入った。父は初めてスープの入ったスパゲッティを食べたという。料理人だった父が食べたことのない料理、確かに自分自身も食べるのは初めてだった。かなり珍しい料理ということと、単純に美味しかったこともあり、非常に満足だった。その後、JRにて宿泊先のある三軒茶屋に向かう。品川から三軒茶屋までは渋谷を経由して、約30分。初めて降り立った三軒茶屋の印象は思ったより繁華街アーケード。なぜなら、地下の駅を出た瞬間に見えたものが大きなビッグエコーだったから。その後、三軒茶屋の商店街を歩くこと10分、宿泊先に到着する。途中、商店街内の歩行者天国に道の真ん中にて休憩しようというコンセプトのイベントがあり、自由な街、面白い街という印象を受けた。宿泊先は非常に広く屋上も合わせると4階建て。ベッドもキングサイズが2つとシングルが2つ、かなり広かった。その後、2人はスーパーに買い出し。俺は家にいた。相変わらず、出不精の引きこもり体質は治っていないらしい。2人が買い出しから帰ってきてしばらく休憩した後、兄と待ち合わせをしている赤坂の焼肉屋に3人は向かった。赤坂駅地下から出た瞬間に見えたのは、あまりにも高く聳え立つ赤坂Bizビル。母はこんなにも高いビルをみたことがなかったという。赤坂はオフィス街だが、祝日ということもあり人の気配はない。待ち合わせの焼肉屋は繁華街の一角にあった。ギラついたキャッチを横目に建物内に入る。出迎えたのは、白髪の50代前半男性だった。愛想がよい。ほんの10分後に兄は到着。今日は彼の奢りだという。ケチな兄だが、奮発するときはすると決め込んでいるらしい。その日のその場は彼の独壇場となった。これだけ奮発してくれるのだから、彼にはもっと気持ち良くなってもらえばよかった。その瞬間、自分がどういった態度をされるのかとか 自分がどう笑いをとるかとかどう目立つべきかどう話を聞いてもらうか等々自分のことばかりを考えていた。俺は感謝の挨拶もろくにできず、今思うと本当に未熟だった。これまで家族にちやほや甘やかされすぎて、自分が少しでも注目されないといじけたり拗ねたりしてしまう。注目されたいなら、話の輪に入りたいなら自分から話しかければいいし、自分のことばかりではなく、目の前の相手が何をしていたのかとか相手を尊重し会話を楽しむべきなのに。ベクトルが全て自分の方向に向いていた俺は愚かすぎた。自分の話を聞いてもらいたいなら、相手の話をもっと聞くべきだ。どうせ自分の話なんて聞いてもらえないだろうとか勝手に妄想して遠慮がちになったり、それで勝手に傷ついて勝手に人を恨むのではなく、そんなこと抜きにして自分の話を楽しそうにして、きいてもらえばいい。あの場でテンションが下がってしまったこと全部、俺自身の誤った考え方が原因だったのだ。そんな勘違いをして何だかどんどんテンションが下がってしまって、終いには家族のことがちょっぴり嫌いになってしまってた自分が恐ろしい。そんなこんなで、夜に気分が下がり、悲観的な気持ちのまま眠りについたのだった。その時も、落ち込みやすい病気なのかなとか偏った考え方で更に落ち込んでしまっていたのは言うまでもない。これまでの人生も、なぜか暗い気持ちになったり傷つけられたり嫌な思い出とか楽しくないとかいう記憶はあるけれども、全て自分の偏った考えた捉え方で自分自身で面白くなくしたり、勝手に被害者になったりしていたのだろう。と気づく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?