小説『真夏に降る雪』
夏の雪
まえがき
やぁ俺は怜、突然だけど、みんなは地球温暖化という言葉は聞いたことはあるかな?恐らく聞いた事はあるだろう。
今の日本、いや、世界中で大問題になっている。
地球温暖化が進み、田面は旱魃し、海水面の上昇による海水浴場の減少、絶滅した生き物も少なくはない。
そして、地球温暖化が急速に進むことによる被害はまだまだあるが、その中でも一番大きな変化を見せたのは「降雪量が激減」した事だろう。
雪ってなんか特別だよな。
思い入れが深かったりするんだよね。
だから雪って大切だと思うんだ
心が病んでる人にも読んで欲しいなぁ。
- 綺麗な木箱 -
「なぁ隆、お前が亡くなって一年経っちまったけどよ、お前の金持ちになるっていう夢、もうすぐで叶えることができそうだぞ。おまえの夢でもあるんだちゃんと見守ってくれよな。墓参りはまた来月、涼しくなった頃にも来てやるからよ。」
「もっと一緒にいてやりたいけど親父とお袋のとこにも行ってやらないと可哀想だろ」
そう言って墓石をじっと眺めているとひんやりと頬が濡れた
「ん?雨か? いや違う。こりゃあ、雪だな」
「真夏の雪といえば昔を思い出すな。あの日の事は死んでも忘れねぇよ。」
涙か雪か分からない濡れた頬を拭い、柄杓も元に戻し墓石の前に戻ってきて最後に軽く撫でた。
「よし。そろそろ帰るか。隆、また来るからな」
怜は帰ろうとしたがあるものがふと目に留まる
「ん?何だこれ。今さっきまでこんな箱なんて無かったぞ。」
確かにさっきまでこんな綺麗な木箱はなかったはずだ。
「 ん?なんか紙が入ってる?」
ー 真夏に降る雪 ー
今年もやってきた、髪が焼けるほどの炎天の季節。
「あー今年も暑いなぁ」
「今年は例年より暑いんだってよ」
「そんなの言われなくても分かってるよこんな暑いんだから」
怜と隆平はどこにでもいる中学生。
隆平は人並み以上の能力があるが、本人は傲慢な態度はとらず、どちらかといえば謙抑的な方だ。
普通の生活を送っていた。
夏休み真っ只中、鵫中学校に通う怜と隆平はいつものように夕山公園でブランコに揺られていた。
その日はいつもより蒸し暑かった。
昨日は涼しい真夏日だったのに今日は四十度を超える猛暑日だ。
「おいおい。これ以上気温上がるのやめてくれよな」
「そんなの願ったってお天道様は聞き入れてはくれねぇよ」
怜は微笑みながら、
「明日の天気もお天道様におまかせするよ」
と言って。少し間を空けてから、
「そういや隆は夏休み予定あるの?」
「ある訳ないだろ。宿題終わっても勉強ばっかりで休みなんか無いよ」
「いいよな隆は勉強できるし運動神経もよくて」
隆平は、卓抜した運動能力があり勉強もできる方だが、自分では進んで勉強や練習ははしない。
「別に勉強はしたくてやってるんじゃないんだよ」
そんな他愛もない話もしながら、今日の終わりを告げる六時の
チャイムが鳴る。
「チャイムが鳴ったし帰るか」
「あぁ。そういや明日は勉強があるから遊べない」
「あぁ、わかった」
帰り道で怜は独り、
「明日は暇だし勉強でもするか」と、小さな声で呟いた。
それから何日か経ったある日、明け方だろうか日が登って間もなくの頃だった。
こんな時間に起きるなんて今までなかったが、今日は異常なまでに寒かった。
「台風でもきたのか」
つい昨日、大型台風が日本列島を縦断しているというニュースを観た。
「台風にしては来るの早いな」
そういいながらカーテンを全開にして外を見ると· ····
怜は愕然とした。
我に戻ると怜は真っ先に隆に電話した。
「おい隆外見てみろ!」
『あぁ、見てるよ·····』
驚くのにも無理はない。
ここ数年は冬でも、異常に暑かった、しかも今は八月だ。
それなのに今外では
ー 真っ白な雪が降っているのだから ー
この日も怜と隆平はいつもの夕山公園でいつもとは違う景色で
ブランコを漕いでいた。
「そういや俺、雪見るの初めてかも」
「俺も人工雪は見たことあるけど本物の雪を見たのは初めてだ」
「えっ、お前、雪見た事あるのかよ」
「人工雪だよ」
「いや、分かってるけど似たようなもんだろ」
「まぁ、大して変わんないな」
今日も六時のチャイムが鳴る
「また、夏に雪降って欲しいな」
「冬でも雪なんて降らないから現実的じゃねーけどな。でも。」
「でも?」
「また降ってくれるなら一緒に見ような。」
「あぁ、そうだな」
その日から三年、五年、十年と月日が流れたが、それ以降一日たりとも雪は降ることはなかった。
ー また今度 ー
あの雪が降った日から十五年が経ち、ニ人は地元の高校と大学を卒業し、別々の会社に就き普通のサラリーマンとして生活を送っていた。
昼間かいた汗を流し、ふと思った。
「久しぶりに隆に連絡してみるか····」
まだ仕事なのか、何度電話しても出ない。
「やっぱりあいつは頑張ってるのかな別に俺が頑張ってない訳じゃないけど·····」
「一応夜中まで待ってみるか」
ちょうど十二時。怜の電話がなる。
『もしもし、久しぶり怜。どうかしたのか』
「いや、特に用は無いんだけど久しぶりに飯なんてどうかなって」
『一言目にお誘いかよ、仕事とか体調の事聞くだろ(笑)』
隆平は少し嬉しそうにそう言った。
「せっかく仕事終わったのに仕事の話はしたくないだろ。あと、お前の事だ上手くいってるだろーよ」
『あぁそうだな。上手くいって、昔言ってた金持ちになるって言ってたのも夢じゃないかもな(笑)』
「俺はそこそこだよ(苦笑)」
『そうか。それで怜はいつ空いてるんだ』
「俺は毎週土日は休みだけど隆はどうだ」
『来週の日曜日なら休みだけど仕事入るかも知れないからなんとも言えないな』
「そうか、なら一応来週の日曜日空けとくから無理だったら当日にでも連絡頼むな。さすがに連絡なしはやめてくれよな(笑)」
『分かってるよ(笑)土曜の夜でいいか』
「おう、わかった。 そう言えば季節野菜っていうラーメン屋あるじゃん?そこでさ````」
昔のようにそんな他愛のない話で盛り上がり、気づけば明け方まで話していた。
『やべぇ、もうこんな時間だ。』
「俺はかけ放題だから何時間でも話せるぞ」
『そういう事じゃない、俺は明日仕事だよ(笑)』
「そうだったな悪い。」
『久しぶりに話せてよかったよ。じゃあまた、来週連絡するわ』
「あぁ、待ってるぞ。おやすみ」
『おやすみ』
ツーッ。ツーッ。
「何も変わってなかったな」
と小さな声で呟き、その日は昼過ぎまで寝てしまった。
ー 叶わぬ約束と夢 ー
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