27話-帰国
私はこの町の清掃のバイトをし始めていろんなことがわかって来た。
この国はアボリジニという先住民がいて、昔イギリスからの迫害を受けて人口が減少しそれをオーストラリアというイギリスの植民地にするとともに、アボリジニを保護しようと言う方針になり、オーストラリアの税金はほとんどがアボリジニの生活保護に回ることになった。
そしてアボリジニは守られた生活を手に入れると共に、この国を象徴する人族となったわけだが、如何せん働かない。
全てのアボリジニがそうではないし、私のオーストラリアの親友はアボリジニの血が入っていたし、全てのアボリジニが悪い人なのではない。
しかしアリススプリングスに蔓延っている、ホームレスのような生活をしていた人間の九割はアボリジニだった。
毎月生活保護としてもらった金を酒に費やしたり、悪い奴になると薬に手を出したりする始末でロクな奴はいなかった。
町を汚くしている半分以上の原因は奴らのせいだとわかった。
たまに家にラリったアボリジニが押しかけて来て、追い返したことも何度かある。
もう一つは小さい町なので噂話がすごい力を持つと言うことがあった。
私のいた柔術道場は町に二つしかない道場のうちの一つで、よく腕試しみたいな奴がよく来ていた。
まるで空手バカ一代か昔のグレイシー柔術みたいな感じである。
何度か腕試しのやつをとっちめたこともあった。
陰口や噂がすぐ広がるこの街で何度か新聞のインタビューを受けたこともあった。
その度にグレイシーバッハにいる日本人は・・・とアレヤコレヤ言われるわけである。
うんざりだった。
生活自体には何の問題もなかった。
しかし私はアリススプリングスで経過していく時間に、本当にこのままでいいのか?と思い始めた。
このままでは仙人になってしまうのではないかと思った。
私は自分が死ぬような経験をした18歳の頃に考えたことを思い出した時、もし私が今この地で死んでしまったら思い残すことは何だろう?と考えた。
私は「今の実力がどれぐらいのものなのか試したい」と思った。
私は日本に帰ると決めた。
そう決めた私の行動は早かった。
仕事先はサイモンにHALLEOサプリメントと言うサプリメント会社を紹介してもらった。
そして今のグレイシーバッハを昔少し交流があった名古屋の木内コウさんに引き継ぎして私は日本に帰った。
1年半のオーストラリア生活で私は23歳になっていた。
実際のところいろんな経験はできたがあまり身のある経験にはならなかった。
しかし今まで突っ走って来た人生を振り返り、また自分の人生に活力が出て来ていたのでそう言った意味では長いバカンスだったのかもしれない。
そして私はHALLEOの正社員になるために仙台へ向かった。