32話-アジア王者
DUMAU PROの当日。
なんとか体重を落とし切った私は体重を計測し、すぐにリカバリーを始めた。
塩を舐めながら水を飲み少しの糖分を取った。
あまり腹にたまりすぎないように気をつけたが、それでも喉が渇いていたので抑えるのに大変だった。
金古さんは一回戦G-Freeの小林さんと戦っていた。金古さんが足関節で一本勝ち。
その時小林さんは足を痛めて欠場。
私は一回戦不戦勝で勝ち上がった。
そして金古さんとの試合。
前情報はあった。
金古さんは生田さんの次の世代の王者で、当時は頭一つ抜けた実力を持っていてアジア選手権や全日本を優勝していて、その当時のトップ黒帯の一人だった。
私は力がどれぐらい込めれるか心配だった。
一人で名古屋に来ていたのでアップを手伝ってくれる人を探した。
すると仙台DUMAUの時に知り合った奥田さんが僕に声をかけてくれた。
私は道着の握りだけを確かめたかったので、「じゃあ襟を掴ませてください」と変なアップを強要してしまった。
本当にまだ腿と腕が力を全開で入れると攣るようなコンディションだったので、試合中身体が攣らないことだけを願った。
試合が始まった。
まずは引き込みあいでダブルガードになった。
そこから少し攻防が続き
私がカーフスライサーに行ったところで
金古さんが起き上がった。
私はレッグドラッグのような体勢になりかけた時、
腿が攣りそうにのでなった
しかし力を抜いて後転しながら逃げて
そのままハーフガードに絡みつき
流れでリバースハーフになった。
そこから金古さんが足を抜こうとして来たが
私はしっかりラペラをつないで
攣った腿が回復するのを待ってスイープ。
2点が入った。
そこから金古さんは得意のスパイダーガードから
攻撃を仕掛けて来た。
私は冷静に対処。
三角を耐えオモプラータに切り替えた
金古さんの脚をハーフガードで抑えた。
そのまま暴れる金古さんを抑えて
2-0で勝利した。
どれぐらいやれるか試して、金古さんと言う高い壁に勝てたことは長い努力が報われた瞬間だった。
しかしひどい勝負であった。
体のコンディションも満足に作れずに苦しんだ。
そして同時に思った。
これは戦う体ではないと。
私は軽い階級で戦って見て自分の体で納得した。
やはりやらずに納得は出来ない。
失敗してもやってみることにやはり意味があったと思う。
金古さんとはその後も仲良くしてもらい今も会場で会えば冗談を言い合う仲である。
その度に「君さえいなければ国内戦績で長年俺に黒星がつかなったのに」と皮肉を言われる。
しかし私はあの時金古さんと戦えたことは本当に良かった。
私は勝ったり負けたりをその後も繰り返すがこの試合のことはよく覚えている。
金古さんが言っていたことで倒されて相手に自慢されるような選手になりたいと。
僕は金古さんに勝ったこと国内軽量級最強に勝ったと思いを今でも誇りに思う。