21話-お金がない!
織田裕二のドラマではないが、ブラジルの物価について少し話をしよう。
ブラジルの貨幣はヘアル。
私がいた時はだいたい1ヘアル=38円
食べ物で言うと1ヘアルで、バナナ10本ぐらいついた1フサが買えたし、マンゴー三つで1.5ヘアルぐらいだった。
格安定食4ヘアルで腹一杯食えたし、その時のサラリーマンの月収がヘアルから1500ヘアルぐらいと言われていた。
ブラジルの物価はかなり安く、特に食べ物は安く食うに困らないレベルの安さだった。
しかし問題が起きた。
一ヶ月経ってみて、私の財布には日本円にして7000円ぐらいしか残ってなかった。
私は焦った。
あと二ヶ月いなきゃ行けないのにもう7000円しかないって・・・
私の柔術漬けの日々は急に生活できるかどうかと言う問題に切り替わった。
しかしお金がないとは柔術の奴らに言ってもそんな間柄ではない。
小林さんには県人会と言う格安の日本人宿舎を紹介してもらったので、家賃はなんとかなる。
しかし月会費とか食費を考慮すると明らかにお金が足りない。
なぜこんなことになったかと言うと、私は現金10万円持って日本を出た。
そこでリベルダージに着くまでのバス代や移動手段を全く考慮していなかったのと、極め付けは最初泊まったホテルで結構高めの金を要求されたこと。
今になって思えばぼったくられたのである。
しかし現状と財布の中を見つめても7000円である状況は変わらず、今までお金がないと寄って来ていたストリートチルドレンに「金なんかねーよ!」とキレてしまうぐらい切羽詰まっていた。
私は助けを求めるように、バルボーザ道場の近くの日本人大使館に行った。
そこはインターネットや本が読める設備になっていて、昼練習が終わってからよく暇つぶしに行っていたが、そこには日本人が集まるので情報を集めに行った。
見ず知らずの人にいきなり「お金がない!助けてくれ!」と言うのは中々言いにくかったが背に腹は変えられないので、いろんな人に話しかけて手伝いをやらせてもらえる人がいないか聞いて回った。
そしたら受付のおねーさんが、田口さんというおじさんを紹介してくれた。
この田口さんがブラジルで大工をやっているらしく私が昔、基礎屋や水道、解体屋をやってい
たと聞いて、自分の仕事を手伝わないかと行ってくれた。
私は週に一度この田口さんの仕事を手伝って、お礼として生活を助けてもらうことになった。
さすがにブラジルまで来てブロック塀作りをやるとは思わなかったが、昔働いていた大嫌いだった仕事に命を助けられた。
人間なんでも経験してなんでもやっている方が、しぶとく生き残るコツであると身をもって知った。
そして生き抜こうとする自分の行動力にも今思うとびっくりした。
人は追い詰められるとなんでもやろうとする。その力は侮れない。
たまに県人会の小林さんがやっていたペンキ塗りも手伝わせてもらった。
おかげで私はブラジルでなんとか生活できるようになった。