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ぼくの一番のお友だち

そのときは突然やってきた。

ばぁばのおうちに、ママと泊まっていたある朝のこと。

目が覚めて1階に降りると、すぐにばぁばの朝ごはんがでてきたんだ。それを、いつもより急いで食べてるママ。

少しするとパパが迎えにきて、ママとクルマに乗り込んだ。今日は朝早くから3人でお出かけみたいだけど、パパの様子もいつもと違う。

クルマがとまったのは見たことがある建物。生まれたばかりの頃に、何回か来たことがあるような気がした。

中に入るとママだけいなくなった。パパと待っているうちに、ばぁばもやってきた。

いったい何をするんだろう?

しばらくすると、僕よりも小さな赤ちゃんを抱っこするママがいた。

パパもばぁばもとても喜んでいるが、この赤ちゃんはいったい誰?
とても不思議な気持ちだった。

そういえば、よくみんなから「もうすぐおにいちゃんだね」って言われてたけど、どういう意味なんだろう?

色々考えてるうちに、パパに連れられて別の部屋に行った。ベッドがあってホテルみたいだ。

ママが一人で入ってきた。疲れてるみたい。

だけど、みんなでお昼ごはんを食べたり、みんなでいろいろお話ししたり、暗くなるまで楽しく過ごした。

ひとつわかったのは、さっきの赤ちゃんが「いもうと」で、ぼくが「おにいちゃん」のようだ。まだよくわからないけど。

夜になると、パパと2人で帰ることになった。ママと離れるのは寂しいけれど、お正月にパパとお泊まりしたこともあったし平気だった。

次の日起きると、また朝からお出かけだった。
ママのところに行くみたいだ。今日もお部屋で、みんなで遊ぶのかな!

ワクワクしながらママの部屋に入ると、そこには昨日の赤ちゃんがいた。

その日も、ご飯を食べたり、お話ししたり、おもちゃで遊んだり。だけどママは、ときどき赤ちゃんを見ているし、赤ちゃんと一緒にどかに行くこともあった。

それを見ると、また不思議な気持ちになった。

外が暗くなり夜になった。

今日もパパと2人で帰るようだ。だけどそうとわかった途端、なんだかとても悲しくなり、声をあげて泣いてしまった。昨日は平気だったはずなのに。

クルマで帰る途中に、パパが色々お話ししてくれた。たしか、パパもおにいちゃんだよって言ってた気がする。

家に帰ってご飯とお風呂をすませた後、テレビを見てた。さっき泣いたことも忘れてたと思う。

だけど、「そろそろ寝んねしようか」とパパが言った瞬間、またあの気持ちがやってきた。

さっきよりももっと大きな声で泣いちゃって、泣きすぎたせいで、口に入っていたものも出てきちゃったし、それを見てまた怖くなった。

いっぱい泣いたら疲れちゃって、しばらくの間、パパが抱っこしてくれていた。

そのとき思ったんだ。こんなことなら「おにいちゃん」になりたくなかった。

それから2年が経って、今日は家族4人みんなで、妹の誕生日パーティー。

大きな声でハッピーバースデーの歌をプレゼントしてあげたんだ。

だって妹は、ぼくの一番のお友だちだから。
だってぼくは、妹のお兄ちゃんなんだから。

ただ、今でも妹がママと2人でいると寂しくなることもあるけどね。


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