我が家には泥棒と忍者がやってくる
これは、非日常な日々の話である。
犯行現場
足の踏みどころがないとは正にこのこと。
部屋が荒らされている。確実に泥棒の仕業だ。
しかし、この泥棒は変わり者。
これっぽっちも人目を気にすることはない。
なので、いつも犯行現場に居合わせてしまう。
目が合うと「ぎゃはは」と笑って逃げていく。
泥棒の正体
もうお分かりだろう、息子と娘だ。
まっ逆さまのおもちゃ箱。
ひらひらと舞うおりがみとティッシュ。
いたるところに貼られたガムテープ。
二人の相乗効果で犯行に拍車がかかる。
取り押さえようと追いかけると、
レゴブロックを踏んで身動きが取れなくなる。
これが朝から何度も繰り返されるので、
午後にはかなりストレスフルだ。
静寂の術
場面は変わり、夜のリビング。
決まって二人の忍者がやってきて、
音のない世界をつくり出す。
抜き足差し足はあたりまえ。
意志疎通には独自のサインを。
もちろん扉の開閉だって無音だ。
おそらく「静寂の里」の上忍だろう。
忍者の正体
何を隠そう、わたしと妻の二人である。
広くない家に住んでいることもあり、
音に敏感な子どもらを起こさぬように。
寝かしつけに手こずり
頭を抱える日々もあった。
だいぶ眠りが深くなってきたので
昔ほど気を遣わなくなってきたが、
その忍術は身体にしみついている。
泥棒も忍者も今のうちだけ
泥棒の犯行に対して、
イライラしてしまった後によく考える。
こんな日々も、ずっと続くわけではない。
いずれは子どもらも自分の部屋を持ち、
そこで過ごす時間が増えるだろう。
かわいい泥棒に出会うことはないし、
忍者もお役御免である。
いまこの瞬間瞬間は苦労だったとしても、
家族みんなで笑いあえるような
手放したくない思い出に変わるはずだ。
あっという間に過ぎていく子どもとの時間。
ともに観て、聞いて、考え、悩んで、
感受性を高めて味わっていきたい。
そんな想いをめぐらせながら、
眠る子どもらに忍び寄り、
ほっぺとほっぺでおやすみをする。