![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/26419169/rectangle_large_type_2_e2548e15ad0ed1d0131f5274ee039994.jpg?width=1200)
穴よりドリル
マーケティングでよく言われる、「顧客はドリルではなく、ドリルで空けた穴が欲しい」みたいなのあるじゃないですか。
これ、くそほど使い古された表現だと思うんですが、ちょっとネットで調べたら、今ですら自称マーケッターがこのことをしたり顔で(見えないが)、ブログやツイッターに書いてる。
で、大体「ベネフィットですね!」みたいなコメントがぶら下がっている。
でもさ、本当にそうか?
twitterで流れてきたこの投稿をみて、改めて考えてみた。
「客が欲しいのはドリルではなく穴だ」に対して「カッコイイ電動ドリルが欲しいに決まってんだろ」と言っている人がいて目から鱗だった。
— どうぐや💮 (@1098marimo) June 2, 2018
た…確かにそうだ…俺たちが欲しいのは必要最小限の機能が付いたただのツールではないはずだ。また悪い大人に騙されるところだった。
【バリュー】
実現↑↓利用
【機能】
実現↑↓利用
【物理】
みたいに物事をenableな関係で捉える考え方はシステムズエンジニアリングの定番だし、サイモン・シネックのゴールデンサークルもそうだ(あれは本来的にはプレゼンテーションだけど)。
だから、バリューとかいわゆるベネフィットが重要だというのはわかる。
で、上記のenable関係では、バリューを特定することで、機能や物理の自由度を高めている。
でも、entityにはentityの価値がある。
そうでないと、世の中に多数のドリルがあることは説明できない。
これは、ひとつは設計者側が持っている解空間によるところが大きい。
だからこそ私は、上位のバリューを拾うインサイトやニーズファーストの「発明」と、entityの引き出しを増やす素材・シーズファーストの「起業」を、両輪にした「発明起業家」を名乗っている。
ドリルのたとえでいうなら、顧客側の持つ「穴」の実現する手法の解空間が「ドリル」しかないからホームセンターにいくわけだが、ホームセンターの人に「ドリル」以外の解空間を求めるのは酷だろう。これは、その時点で顧客がホームセンターという解空間を選んでしまっているから。
もうひとつは、entityにはentityの価値がある。
日本人なら、たとえ質が全く同じ穴でも、「ドリルで大量に空けた穴」と「熟練の職人が手作業で開けた穴」に、「価値」の違いがあるのは、感覚的にわかると思う。
そのへんは、この前書いた前世や血統の価値に通ずるところ。
肉体というentityの価値があるということは、むしろこのコロナ禍の下で、顕著になったと感じる。
もちろん穴があけたいとしても価値は複合的だ。
ドリルにはドリルの、価値がある。