研究者が生成AIを使ってみた
2023年度ChatGPT出現の衝撃
2023年はChatGPTが一般公開され,話題を席巻しました。どうしてこれほど話題になっているかというと,ChatGPTが,具体的な要望に対応して回答を生成することができるからでしょう。例えば,「〜についての問題を5問作成してください」とお願いすれば,その要望に沿った問題を作成したり,「以下の文章で論理の飛躍がないか,論点として不足している点がないかをチェックしてください」とお願いすれば,それについてチェックしてくれたりします。また,「次の文章を,〜という評価基準に基づいて採点してください」とお願いすれば,採点までしてくれるようです。他にも,音楽を作曲したり,外国語で会話する際の練習相手にもなってくれたりするのだと言います。これからも,生成AIについては色々な使い方が提案されていくことでしょう。ただし,それだけ便利な分,注意も必要と考えます。使う側のリテラシーや研究に対する倫理観もアップデートする必要があります。
大学におけるChatGPTとの付き合い方
各大学で,ChatGPTの使い方について方針が立てられています。本学の学術研究所においても,ChatGPTの理解と実践に関する講座を2回実施しており,教職員や学生が新しい技術とどう付き合っていけば良いか,模索している最中です。2023年12月時点では,人が主体となり,生成AIはアシスタントやCopilot(副操縦士)として使うという方法が適しているという結論に落ち着いています。個人的にも,研究者として生成AIがどのようなものか知っておきたいと思っていますし,どう付き合っていけば良いのかについても考えていく必要がある,そう考えています。
生成AI「Notta」を活用してみる
このようなことから,私も,学内学術雑誌のインタビュー記事を作成する際の文字起こしにおいて生成AIを活用してみました。生成AI「Notta」は,自動文字起こしサービスであり,対談データの文字起こしと簡単な要約を行ってくれるものです。通常,2時間の対談を人が打ち込みで文字起こしする場合,たいていはその倍以上の時間がかかります。しかし,「Notta」に音声データを読み込ませてみたところ,2時間の音声データを10分程度で文字起こししてくれ,かつ,簡潔な要約までしてくれました。精度については誤植や軽微な言い間違いがいくつかあり,人の手で修正する余地はありましたが,その作業効率は計り知れないものでした。
もちろん,インタビューデータを研究者自身が文字起こしすることによるメリットも多くあります。自分で打ち込みをすることによって,話の内容をリフレインでき,その中でひらめきや思いつきが生じ,研究がさらに深まるといったことなどです。
結局,使用する人間の側が目的を明確にした上で,「Notta」を活用できれば,とても頼りになる相棒となってくれました。
生成AIを活用してみての感想
今回は,「Notta」を活用したことで,文字起こしにかける時間を大幅に短縮でき,その分,文章の作成・推敲作業に多くの時間をかけることができました。文字起こしという作業的な部分を生成AIに担当させ,思考・推敲する部分を人間が行ったパターンであり,生成AIをCopilot(副操縦士)にしたパターンといえるでしょう。私は研究者であり教員です。高い倫理観が求められていますので,今後も,生成AIと程よい距離感を保ちつつ,共生していける道を探していきたい,そう思っています。