歯科技工に関連して歯科医院・歯科技工所が守らなければいけないルールとは
ついついNoteの更新が、空いてしまいました。
常在戦場で、日一日が飛ぶように過ぎていきます。ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオが、著書「Plinciples」の中で記載している一節、
は、真実だと思います。何もかもが過去になっていくのだから、今定められる未来に向かうベクトルを良い方向に向けるために、痛みをバロメーターとして使用しながら最善の手を打ち続けることが大切です。
ここ最近は、日本全国を飛び回りました。短期間で10講演を行い、長崎、福岡、大阪、愛知と…バタバタしておりました。
1. 歯科技工に関連して歯科医院・歯科技工所が守らなければいけないルールとは
「技工くん」を通じて推し進めてきたデジタル歯科技工指示書に対する歯科界の温度感が変わってきたことを感じています。
6月1日から施行されている診療報酬改定で、歯科医療のデジタル化が大きく盛り込まれてきました。光学印象や歯科技工士連携加算の保険収載がそれに当たります。それに伴い、
と言う先生方に多く出会いました。昨年6月に先行営業開始に伴い、私自身がセールスとして動いていた時期は、「こういうサービスを始めます。どうか話を聞いてもらえませんでしょうか?」という日々でした。この世界になかったものを作る時はいつも、受け入れと拒絶の両方の反応があります。あれから1年弱で、世界は確実にその方向に向かい始めています。
この期間を通じて、歯科技工に関連して歯科医院と歯科技工所が本来的に守らなければいけない事項についてご説明をすると「えっ、そうだったんだ」という反応がよく見られました。無論、理解していながらのルール違反はほとんどなく、単に正しい情報を知らずに・・・というのが大半です。
しかしながら、診療報酬において様々な連携が収載され、今後も例えば光学印象の適用範囲の拡大などが予測される中、歯科技工物の出し手である歯科医院がこれまで以上にルールに注意して臨まなければ、その受け手である歯科技工所に迷惑をかけてしまう可能性が高まっていきます。
そこで今回のNoteでは、いくつかの大切な情報について記載させていただきます。
#1 歯科技工指示書、患者の口腔内写真、その他患者に関わる画像/文字情報/3Dデータなどは医療情報
歯科医院と歯科技工所間で仕事を行う上で一番大切な前提は、歯科技工に関連して「何を医療情報として取り扱わなければならないか」です。これ次第で、守るべきルールが大きく変わってきます。
厚生労働省に確認をさせて頂いたところ、歯科技工指示書、患者の口腔内写真、その他患者に関わる画像/文字情報/3Dデータなどは全て医療情報にあたるとのことでした。
そのためこれらについては、今回の診療報酬改定の施設基準の届出等で再三出てくる厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を準拠した体制下での取り扱いが求められます。
ここにおいて、例えば「スマートフォンで歯科技工指示書の写メを撮って、普段使いのSNSで歯科技工所に共有する/口腔内写真などを共有する」などでガイドラインの準拠に当たるかどうかは、多くの先生から聞かれる質問でした。こちらについて、厚生労働省に確認をさせて頂き、私自身当ガイドラインを読み込みましたが、「ダメ」という結論に至らざるを得ませんでした。
また、メールでの共有はどうかというと、ガイドラインを準拠するには「歯科医院が利用するメールサーバまでは、歯科医院が責任を有する」「歯科技工所への到着までは責任を有する」等を決定する必要があります。歯科医院が個別の歯科技工所毎に、この線引きを決めていくのはとてもハードルが高いように感じています。
#2 ガイドラインを守らなければならないのは歯科医院だけで、歯科技工所は関係ないというのは誤り
「ガイドライン」では、医療情報の受け手となる歯科技工所側の責任についても明記されています。
歯科医院から歯科技工所への医療情報の提供における【遵守事項】として、
と明記されています。また、
とも明記されています。つまり、歯科技工指示書・口腔内写真などは医療情報であるため、歯科医院から歯科技工所への共有の際に、医療機関である歯科医院がガイドラインに違反した医療情報の取り扱いをすると、医療情報を受領した第三者にあたる歯科技工所に医療情報を適切に管理する責任を果たせない状態を強いることになります。
#3 IOSでも歯科技工士指示書は必要
光学印象でCAD/CAMインレーを発注する場合でも、歯科技工士法で規定される歯科技工指示書を作成・交付・保存が求められます。IOS上での発注情報では、歯科技工士法を準拠することができない場合が多くあります。そのため、光学印象のデータに加えて、歯科技工士法で定められる歯科技工指示書が併用されることになります。
#4 自費の歯科技工物でも、歯科技工指示書は必要
歯科技工士法で、定められている通りです。
#5 院内ラボにおいて、歯科技工指示書が必要かどうかはケースバイケース
歯科技工士法において、歯科技工指示書について
と記されています。つまり、院内ラボの場合、歯科技工指示書はなくても良いということです。とはいえ、全ての歯科技工物において直接の指示を得ることは現実的ではないため、院内ラボを有する多くの歯科医院において歯科技工指示書が発行されています。
#6 IOSに限らず、歯科技工物の設計ができるのは、歯科医師か歯科技工士のみ
こちらは注意が必要です。歯科衛生士・歯科助手などが設計することは違法になります。
#7 歯科技工指示書はデジタル化して良い
平成28年3月31日「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律等の施行等について」の一部改正についてにおいて、歯科技工指示書のデジタル作成・交付・保存は認められています。
2. 「技工くん」ユーザーの声
名古屋のナディアパークデンタルセンターの飯田吉郎先生に、「技工くん」の導入事例インタビューにご登場いただきました。クリニックとラボの両面を経営されている先生の目から、「技工くん」の導入メリットについて語っていただきました。
飯田先生は一流の臨床医・歯科経営者であり、ファウンダーであるグレーター・ナゴヤ・デンタルミーティングは、東海地方を代表するシンポジウムに成長しており、私が尊敬する先達のお一人です。
そのような先生に、「全ての技工所で使用して欲しい」と言っていただけたこと、本当に嬉しく感謝です。
おかげさまで、「技工くん」は継続的に伸びています。前回投稿時は5万回突破だった累計受発注実績は6.1万回を超えています。
一気に、日本の歯科医療界において必要不可欠なインフラへと一気に育てて行くことができれば・・・と、願って日1日を積み重ねています。
技工くんに興味をお持ちの歯科医院様・歯科技工所様へ
技工くんは、「歯科技工を包み、高める」をコンセプトとして事業展開をしています。
お問い合わせいただけましたら、大切に対応をさせていただきます。今いまの導入はまだでも、情報として知っておきたい方に対しても、喜んで対応をさせていただきます。
歯科技工に関わる業務の無駄を減らし、歯科医院・歯科技工所それぞれが本業に集中できる世界を作ることで、目の前の迫った歯科技工問題を解決する一助となれるよう、日一日全力で取り組んでおります。
ぜひ、そのような世界を共に作っていきましょう。
WHITE CROSSに掲載ご希望の歯科技工所様へ
ぜひご気軽にお問い合わせくださいませ。
3. 本を出しました
素晴らしい先生方と、医歯薬出版社さんから「医科歯科連携・多職種連携」という本を出しました。
日本社会に素晴らしい価値を生み得る医科歯科連携・多職種連携について、断片的な情報が溢れています。悪いことではなく、そのようにして社会は形作られていきます。とはいえ、一過性のブームに終わらせないために、当領域を網羅的に捉えた教科書が必要であり、その理念に基づいた一冊が近く上梓されます。執筆者一覧をご覧いただきますと、まさに連携のボーダーを広げられている若手の先生方と、医療を形作ってこられた医科歯科を代表する先生方が結集しています。
医科歯科問わず、これからの医療を担う学生さんや若手の先生はもちろんのこと、地域医療のこれからについて真剣に考えてくださっている意思決定権を持つ先生方に手に取っていただければと願っております。