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ネパール⑤(化学と人間生活)
2016年にJICA教師海外研修でネパールに行って、それを化学の授業で還元したときのもの。化学の時間にネパールのことって・・・。とにかく、僕がネパールで感じた化学を伝えることにしました。
ネパール①〜④については過去にあげたものを確認して下さい。
ホームステイ
パトリケット村というところでホームステイをしました。
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歓迎のとき、おでこにティカをつけてもらえます。
ティカをつけることは「幸せを願うという」意味らしいです。
お祝い事のときや、出会いや別れのセレモニーでもつけられます。ちょろっとつけるのはかわいいものです。たくさんの人から少しずつ、最終的におでこいっぱいにつけられることもあるようです。
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この村の多くは野菜を育てたり、牛からミルクを取ったりしています。この家でも、ミルクを取って売りに行きます。
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うちのホームステイ先は村の上の方だったので、ミルク回収センターまで結構時間がかかりました。途中で村の娘たちにも会いました。みんなお手伝いでミルクを売りにいくのですね。20分くらい経った頃
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ゴール直前には立派な道路がありました。これはインドまで続く道路で、日本の支援で作られたとか。
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持ってきたミルクは、重さと乳脂肪分とその日のレートで計算されて、後日まとめて換金されるそうです。
乳脂肪分はどうやって測るのでしょうか?この写真を見てください。なにやらストローのようなもので、ミルクを吸っているように見えますね。
これは職人技でミルクの味から乳脂肪分を測定している・・・
・・・わけではなく
ここで、素直な生徒は
「へぇーーー、すごーーい・・・・ってちゃうんかい!」
ってなります。
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ストローのようなものはホールピペットでした。牛乳用のホールピペットがあることに驚きでした。初めて見たもん。
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へんてこな器具に定量した牛乳を入れて、あやしげな液体を入れて、遠心分離をしていました。遠心分離は牛乳を持ってきた人が自分で回すシステムでした。
ネパールは計画停電しているので、電気は使わず手動型の遠心分離機でした。もし電気があっても、コスト面で手動のものを使うだろうな。
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遠心分離後、乳脂肪が上に浮いているので、この器具の目盛りを読んで、乳脂肪分がわかります。
ゲルベル法
ネパールにいるときは、これはいったい何をしているんだろう・・・と思っていました。何をしているか分からなかったのですが、日本に帰ってきてから調べてみると、これは「ゲルベル法」という乳脂肪分の簡易測定法だということが分かりました。
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参考(2016年)
関東化学株式会社、生乳検査マニュアル - J-milk
リンクにつながらなくなっていました。
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Q.約90%硫酸を調整するには濃硫酸、蒸留水はそれぞれ何mL必要か。
準備物:濃硫酸(98%、1.8 g/mL)、蒸留水 、ピペット
濃硫酸10 mLは18 g、これに水を2 g加えたら全体20 gで90%の硫酸ができますね。(98%なので溶質は17.64 gだけど、約18 gとした)
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あの器具(ゲルベル乳脂計)がなかったので、ガラス製の遠沈管にいくつかのサンプルを入れて目視で乳脂肪分の違いを確認することにした。
ゲルベル乳脂計があったとしても、それに対応する遠心分離機がなかった。
今回のサンプルは
低脂肪牛乳(約1.2%)、牛乳(約3.6%)、生クリーム(約45%)、生クリームの牛乳割(おそらく約24%)
それでは実験スタート
まずは、90%硫酸とイソアミルアルコールを入れます。
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その後、それぞれのサンプルを入れます。
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数回転倒させると、色が変化してきます。
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約65℃で15分間あたためます
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最後に遠心分離をすると
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おぉー、上に浮いている透明な液体が脂肪分でしょうか。
断面積は同じだろうから、透明な部分の高さの比がだいたい脂肪分の比と合ってそうですね。
低脂肪牛乳(約1.2%)、牛乳(約3.6%)、生クリーム(約45%)
めでたし、めでたし。
標高と沸点の関係
ネパールで使われている鍋は圧力鍋のようなものが多かった気がします。
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やっぱり標高が高いから??
炊飯の科学によると
おいしくご飯を炊くには、沸騰後必ず98℃以上を20分間保つことが大切らしいです
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パトリケット村でも、沸点は92℃か93℃くらいになるんですね。
おしまい。
これでネパールのお話は以上になります。
次はアフリカのお話をしようかな・・・