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感染症の広がりを疑似体験する化学実験
滋賀県国際協会とJICAの共催イベントのワークショップで講師をしました。その一部を紹介します。
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この写真、どっちが僕かわからないんじゃないかと心配されました。
いやいや、どうみても左やろ!
ここから実験の紹介。
noteでは動画ファイルをうまく見れない??いちいちダウンロードしなきゃいけない?めんどくさい?パソコンの方が見やすい?
YouTubeとかだったらスムーズにみれるのに・・・
①交流
なんの実験か伝えずに、ちょっとしたゲームをしようと言って、参加者に1人に1個、無色透明な謎の液体を配ります。
なんやろ?これただの水かな?って思います、たぶん。
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「これは命の源です、ここにはとても大事なエッセンスがつまっています。他の人からエッセンスをどんどん吸収していきましょう。」などてきとうな事を言いました。
上の図のようにビーカーに入った液体をすべて相手のビーカーに入れる。そのあと半分かえしてもらう。これを繰り返しましょう。
できるだけたくさんの人と交流した方がいいかもしれません。
・・・と言ってみる。
あっちでもこっちでも、どんどん交流しています。
②検査(実験あり)
たくさん交流しちゃいました。ここで緊急速報!
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持ってる液体はみんな無色透明、だれが感染しているのかわからない。
簡易キットを使って検査してみよう。
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感染していない場合、検査薬を入れたら薄い黄色っぽい色になります。感染しているともっと毒々しい色になります。
次の動画は感染している様子がわかるやつです。
驚きの声(悲鳴?)があちこちから聞こえてきます。
③薬を選ぶ
ほとんどの人が感染してしまいました。ここで治療薬を手に入れましょう。
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これらは感染症Xに効果のある薬です。値段が異なり、高い方が良く効きます。好きな薬を買いましょう。
ちなみにあなたの所持金は次の設定です。誕生月×血液型(赤字は私の場合です)
11月生まれのB型なので、11×100=1100円。
血液型が不明の人とO型の人は、×1です。
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では、自分の所持金と相談して薬を選んでください。
僕は1100円もってるので、一番高いビタミンCを買います。
ちなみに、重症化するまでタイムリミットがあります。
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私は1983年生まれなので、重症化まであと30分・・・
④薬の効果(実験あり)
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ほぼ同時にすべての薬を入れます。
次の動画は、薬を入れた直後のものです。
ビタミンCはすぐに効果がでました。あっという間に色が消えました。
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10分経つと、鉄はすこし効果があらわれてきたようです。
20経ったら色が消えました。
鉄を選んだ人は10分では重症化が防げませんでした・・・
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ぶどう糖はなかなか効果があらわれません。24時間では重症化は防げませんでした。
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丸二日経ったら色が消えていました。
この実験は学校でこっそりやっていたので、正確に何時間で色が消えたかわかりません。ほったらかして帰って、次の日にきたら色が消えていたので。
ちなみに鉄を入れたビーカーが黄色っぽい色になっているのに気づいた人もいるかもしれません。これはおそらく、2価の鉄イオンが空気中の酸素によって酸化されて3価の鉄イオンに変化したためだと思います。
教科書では
2価の鉄イオン・・・淡緑色
3価の鉄イオン・・・黄褐色
次の動画は薬を入れる様子。グループの中で1人だけ助かっています。
⑤ワクチンや治療薬が広がれば(実験あり)
助かった人もいれば、助からなかった人もいます。経済力によって薬が手に入るひともいれば、薬を買えない人もいます。
次の動画は、ワクチンや治療薬が全員に届けば感染している人を救えるかもしれないという気持ちにさせるものかもしれません。
日本赤十字によると、A型4割、O型3割、B型2割、AB型1割(日本人)
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今回の設定でいうと、約1割の人が即効性のある薬を買えて、3割弱の人が薬を買うことができない。半分くらいの人は効果の弱い薬が手に入ることになります。
現実の世界でも、ワクチンや治療薬が手に入りやすい国や地域もあれば、なかなか手に入らない国や地域もあります。どこで生まれたかで決まってしまう、自分ではどうにもできない・・・もやもやした気持ちになりますね。このもやもやを大事にしてほしいです。
⑥実験準備
この実験はヨウ素デンプン反応と酸化還元反応を利用したものです。しかも家庭でも準備できます。
まずは感染症の広がりの実験について、これはヨウ素デンプン反応を利用しています。
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準備するのは片栗粉とポピドンヨード入りのうがい薬(イソジンうがい薬など)、ヨードチンキなどでもできると思います。
水溶き片栗粉をつくります。ティースプーン一杯もあれば十分です。
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水溶き片栗粉ができたら、熱湯を注ぎます。
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熱湯は200mLくらいでいいと思います。溶け残り?や濁り?などがあれば、もう少し加えてみましょう。
それをほんの少し(30mLくらい?)コップなどに取り分けたら準備おっけー(これを原液とする)
下の画像は一番左が原液、それを半分の濃度にどんどん薄めていきました。
左から原液、2倍希釈、4倍希釈、8倍希釈、16倍希釈
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それぞれにイソジンうがい薬を2滴たらします。
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濃い目の青紫色になるのは、半分の濃度にする操作2回くらいまででしょうか。操作を増やしても、イソジンを薄めただけの色とは異なるので陽性か陰性を確認するには十分だと思います。
つぎに感染症を治す実験について、これは酸化還元反応を利用しています。
身近なもので効果的なのがビタミンC(アスコルビン酸)かなと思います。さきほどの感染したコップにビタミンCが入ったサプリメントなどを入れたらすぐに色が消えます。
ヨウ素デンプン反応はヨウ素とデンプンで出会って青紫色になるので、ヨウ素を還元してヨウ化物イオンにすれば青紫色にならないのです。ビタミンCは酸化防止剤として、ペットボトルのお茶などに入っていますね。還元剤なんです。ヨウ素を還元します。
身近なものでできる実験を考えました。誰でも気軽にできる素晴らしい実験です。

中日新聞に載せてもらったらしいです。
今回の実験にストーリーと振り返りをつけてSDGsについて考えるバージョンのものは以下を参考に。