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アンパンチのこと --- 「ダウン症があるとかないとかどうでもいい、誇りがあればいい。」

何歳くらいだっただろうか。
息子は、アンパンマンが好きになった。まあ、誰もが通る道だ。
しまじろうはそれほどでもなく(でも好きではあるけれど)、最初に食いついたのはアンパンマンだったような気がする。

そしてアンパンマンと言えば、「アンパンチ」である。

はい全国の親御さん、分かりますね、皆さんを悩ませる、アンパンチです。

大抵の男子はアンパンチをします。多分2歳くらいの時。

ある日、パンチをしながら「パンチー」って喋ったんだな。
声に出して。
それはもう、嬉しくてねえ。可愛くてねえ。
これは怒れないわけだ。

5歳になった今は、普段はあんまりしないけれど、でもアンパンマンを見ると思い出すようではある。

ちなみに彼の中では、アンパンマンは自分、バイキンマンはお父さん、ドキンちゃんはお母さん、らしい。

さて、子供は誰もが通るアンパンマンであるが、難しい存在であると思う。

そもそものアンパンマンは、「僕の頭をお食べ」と言って自らの血肉を与えることで、困っている人を助ける自己犠牲の人であった。
作者のやなせたかし先生自体が、ぼくの作品をお食べ的なスタンスをどんどん進めた結果、今のようなアンパンマンになった。とにかくサービス精神が旺盛な作家だと聞いたことがある。

今のアンパンマンの問題解決は、パンチである。基本はパンチ。

確かに、「罪を憎んで人を憎まず」という点は徹底していて、「バイキンマンが悪い事をしたからそれに対しての制裁」であって「バイキンマンは悪い奴だから攻撃」ではない。

でも攻撃は攻撃であり、殴り合いは殴り合いである。
殴り合いをするのなら、せめて自己の主義主張をそれらしく叫びながら殴り合ってもらいたい。シャアとアムロのように。
もっとも、そんなことをやっているから、あいつらは色々こじらせたのだろうとは思うが。

「アンパンチは誰でもやるもの」とは言われるのだが(小児科の先生とか他の親御さんとかから)、普通の子供だと5歳くらいになればアンパンマンは卒業するものだが、成長が遅い子だと、5歳になってもアンパンマン現役というのが、ちと困る。
何が困るかというと、5歳にもなれば、男の子であっても普通は口喧嘩で大抵が収まるのだが、言葉が出ないと手が出る。アンパンチ的な。
それはよろしくない。

そもそも息子の嗜好を観察するに、最初アンパンマンを気に入ったのは、おそらくキャラの見た目の愛らしさのように思える。基本的に丸いからな、あいつ。

そのうち、アンパンチをはじめとした、キャラの行動を認識するようになったと思う。

であれば、アンパンチ抜きでもアンパンマンはおそらく人気を得ることができて、かつ子供はアンパンチをしない。

ただこれも難しいところで、アンパンチはしないけれど、別の何かを攻撃手段として使おうとするはずで、それはおそらくもっと野性的な行動だと推測される。
野性的ってのは、噛んだりひっかいたり火炎瓶投げたり催涙弾を水平に撃ったりとかである。

そう考えると、パンチというある程度ルールにもとづいたな攻撃パターンに落とし込ませていると考えられなくもない。

そういえば、シャーロック・ホームズのドラマの中でホームズが上着を脱ぎながら「ここにいる皆さんは、僕が正当防衛だという証人になってください」と言いつつ、ボクシングでチンピラを打ちのめすというシーンがあった。

パンチとは、紳士の攻撃方法なのである。アヘン中毒のホームズが紳士かどうかはさておき。

そうであるならば、だ。

18歳になったアンパンマンとバイキンマンが、紳士のバトルとしてのパンチと高度な科学技術で戦う二次創作があってもいいのではないだろうか。
科学部部長のバイキンマン(眼鏡男子)と、生徒会長のアンパンマン(快活で女子にも人気があるが、手が出ることがある)とが織りなす、衝突しながらも友情を深める物語。

何を書いていたのかわからなくなってきた。

アンパンチは暴力ではないか。アンパンマンは暴力で物事を解決しているのではないか。子供に悪影響ではないか。
という疑念があるんじゃないのか?という話。

パンチは戦闘のフォーマットのひとつといえるし、敵を倒すのではなく追い返すだけなので、まあいいんじゃないの?
書いていて、そんな気分になった。

(2016年12月26日記)

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