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「天城山からの手紙」11話

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森が日に暮れる時、そこは熱い想いが燃え上がる。闇夜が来る前、森に生きる者達は、最後の足掻きをしているからかも知れない。天城の撮影をしていると、時の狭間に迷い込むときが多々あるのだが、一日の終わりの時間は往々にして森の特別な瞬に迷い込んでしまう。およそ20分ほどであろうか?真っ赤に燃える時間を過ぎると、その先は静寂に包まれた闇が待っている。何回歩いてもやはり暗い森に残されるのは気持ちのいいものではない。それも相まってどうしても夕暮れの撮影は感傷的になるのだろう。この日も太陽を追いかけながら森を歩いていると、木々の隙間から差す光はキラキラと輝き、影にいる者までに希望を与えている様だった。そんな情景を嬉しく思いながら撮影に集中していると、木々たちが暗い闇へと吸い込まれ始めた。辺りを見渡せば赤く染まった光が選ばれた者達を業火の中へと引き込んでいる。私も真っ赤な炎が上がる中へと走り込みシャッターを押した。その情景はまるで、それぞれの想いが燃やし尽くされ無心に成っていく様だった。しばらくすると、私は、暗い森に取り残され、現実の世界へと戻っていた。


掲載写真 題名:「業火」
撮影地:八丁池付近
カメラ:Canon EOS5Dmark4 EF24-105mmF4 IS Ⅱ
撮影データ:焦点距離78mm F16 SS 1.3sec ISO400 WB太陽光 モードAV
日付:2017年11月1日PM16:53

伊豆新聞連載 天城山からの手紙11話 2018年12月22日掲載

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