真夏に味わうバロック・オペラと現代の弦楽四重奏曲~2024年8月後半のサントリーホール主催公演
2024年8月後半、サントリーホール主催の公演が面白そうだ。
17日には「アントネッロ」のヘンデル《リナルド》全曲上演。
第53回(2021年度)サントリー音楽賞を受賞した、日本を代表するリコーダー奏者の濱田芳通。
その彼が指揮者として率いる、古楽アンサンブル「アントネッロ」の評判がとにかくいい。バッハの受難曲やヘンデル「メサイア」などの大曲で鮮烈な演奏を作り上げて、絶賛が続いている。
個人的にはまだ未体験の楽団。昨年のマタイ受難曲後、尊敬する出演者の「この瞬間のために楽器を弾いてきたと思えた」という発言をきき、聴き逃したことをいっそう悔やみ続けてきた「アントネッロ」。やっと体験できそう。
《リナルド》は、有名アリア「私を泣かせてください」を含む、エネルギーあふれる大作。ヘンデルのすばらしい音楽を、彼らの演奏で体験できるのもうれしい。セミステージ形式で演出、舞踊もありの濃密な4時間半。
https://www.suntory.co.jp/.../detail/20240817_M_2.html
その翌週の22日には、サントリーホール「サマーフェスティバル2024」が開幕。
「ホール開館時から毎夏続く現代音楽の祭典」で、ふと気がつくと「夏は現代音楽!」という意識さえ定着している。
毎年プロデューサーとテーマ作曲家を設定し、筋の通った硬派かつ有意義なプログラムを組んでいる。芥川也寸志サントリー作曲賞もこの一環。
今年のテーマ作曲家は、フランスの重鎮、フィリップ・マヌリ。作品集公演とワークショップも。
個人的に注目なのが今年のプロデューサー。創設50周年のアルディッティ弦楽四重奏団のリーダーで、泣く子も黙る(?!)現代音楽の鬼、アーヴィン・アルディッティが招かれる。
4つのプログラムが用意され、とにかく3回の室内楽コンサートが凄い。武満徹、西村朗、細川俊夫といった日本のビッグネームをはじめ、ハーヴェイ、ラッヘンマン、カーター、バートウィッスル、ファーニホウ、そしてクセナキス(必殺の「テトラス」!)など、これまた強烈な作曲家の名前が並ぶ。しかも多くはアルディッティQのために書かれた作品。さらに坂田直樹の四重奏曲やパレデスのピアノ五重奏(ピアノ北村朋幹)といった世界初演曲も。
オーケストラ・プログラムも、細川とマヌリによる四重奏とオーケストラの作品のほか、クセナキスの稀少作も実演で聴ける。
いずれもアルディッティQの面目躍如たるプログラム。彼らの歴史はすなわち、この半世紀における弦楽四重奏曲の歴史でもある。これほど網羅的に体験できるのは貴重。
なにより、彼らのシャープな演奏と、怖いくらいの熱を体験してほしい。
さすがに年齢を感じさせる場面もあるはずだが、それ以上に彼らの年輪の重ね方が重要。年輪とはいってもアルディッティのこと、全く円くなることなく、同時代の音楽を演奏し続けることの何たるかを見せつけてくれるはず。
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2024/
大変な猛暑となっている8月だが、暑さを押してサントリーホールに通う価値は十分すぎるほどにある。鮮烈な音楽体験をしたい人はご注目を。