コロナ禍でも模索し続ける新鮮な近隣コミュニティ
今回は、私が住んでいる地域での人と人との「つながり」をつくること、について考えてみます。
私が現在住んでいるのは品川区にある静かな住宅街です。約15年前に大田区から引っ越してきました。3人の子供たちがみんな小学校を卒業して、あちこちの私立中高に通い始めたので、みんなが通いやすくて私の会社にも近いところ、という趣旨で今のマンションに移り住んだのです。
ただ当初は、近隣地域の人たちと私たち家族とのつながりはまったくありませんでした。というのも、子供たちが私立中高に通い始めてからの引っ越しだったので、子供同士はもちろん、子供を介した親同士のつながりがまったくと言ってもいいほどなかったからです。
■子供中心の家族ぐるみの付き合いから地域の活動へ
前に住んでいた大田区へ引っ越したのは、その地域にある小学校に子供を入れたい、という理由からです。最初の子供が入学するときに移り住んで、3番目の子供が卒業するまで、子供たちの年齢差が4歳なので、ちょうど10年そこに住んでいたことになります。
同じ小学校に通う子供が3人いたわけで、子供つながりの人間関係は引っ越してもう15年になるのに今も健在です。子供たちもつながっていますし、特にお母さん同士は、今も非常に濃い状態でつながり続けています。そこにときどき私たち男どもも加えてもらっている状態です。誰かの家でパーティをするとか、ゴルフを一緒にするとか、です。
しかし、子供つながりがまったくないと、地域での人間関係を新しくつくる機会、というのは、何もしないでいるとなかなか得られません。同じマンションに住んでいる人たちとのつながりが持て始めたのは、引越ししてしばらくたってマンションの理事を引き受けたころで、マンション内のみなさんとの会話が少しずつ増えてきた、という状況があったからです。
そんなとき、一枚のビラが入ってきました。発信は地域の環境を守るということを目的に、意識の高い人たちが集まってつくっている、かなりしっかりとした団体です。そこの会合に何回か出席しているうちに、「懇親会を開こう」ということになり、志ある人たちが何人か集まるようになりました。その中に非常に熱心な、この地域に子供のころから住んでいる方がいて、その方を中心にいろいろな企画をするようになったのです。私の役割はもっぱらサポート役です。
そんなこともあって、数年前から年に2回、「雑談パーティ」と称するものをするようになってきました。近くにおしゃれな結婚式場があり、そこを安く使わせてもらっています。
参加者は年々増えてきて、60人を超えるようになりました。6人くらいで囲むテーブルの真ん中に地域の地図が一枚置いてあり、お互いがどこに住んでいるのか、から始まる雑談です。
昨年は残念ながらコロナのせいで、今までのような感じではできなかったのですが、新たにバザーをやることになりました。企画の中心になったのは比較的若いみなさんです。地域内にある、空き地をお借りして開催しました。参加者の数は数えませんでしたが、何百人という規模のかなり多くの地域の方が参加してくださったことは確かです。わざわざお世話しているみなさんに差し入れを持ってきてくださる方も何人かいらっしゃいました。
■地域で世代を超えた「大人の隣人関係」をつくる
いちばんよかったのは、若い人の参加が多かったことです。出店者にも幾人もの若い人や夫婦がいましたし、訪れる人も子供連れが多かったのが特徴です。
それまでの「雑談パーティ」にもそれなりに人数は集まっていたのですが、残念なことに平均年齢が圧倒的に高かった。もちろん、高齢者が来てくれること自体は大歓迎なのですが、同時にもう少し若い人たちも参加してくれる魅力的な集まりができたらいいね、とみんなで話していたものですから、そういう意味でもバザーは大成功です。
あとはこの集まりを一過性のもので終わらせてしまうのではなく、互いに通りすがりにも気楽に立ち話ができるような関係性が続くといいね、と話し合っています。
互いのプライバシーを尊重しながら、話しやすい人間関係をつくっていく、という新鮮なコミュニティというのは、非常に大切です。住んでいる地域でお互いが近しくなってしまうと、かえって変に気を使う必要が出てきてしまうのではないか、という懸念を持っている人は確かにいます。そんなことになるくらいなら、互いに不干渉を決め込んでいるほうが楽だ、というわけです。
そういう意味でも、互いにプライバシーを尊重する、という基本姿勢が大切であり前提になります。プライバシーを尊重しながら親しくなる、という新しい大人の関係性です。
それに、宗教とか、政治に関してはそれぞれが持っている考え方を互いに尊重し合って、必要以上には踏み込まない、といったエチケットも必要だと思います。
いずれにせよ、こうやってみんなで集まっている目的は、緊急時などで隣人同士ができうる限り助け合う、であるとか、お互いに気楽に相談し合える関係性をつくるなど、今風の大人の隣人関係を築いていくことです。今は、こうしたつながりを持っている人がたくさんできてきています。
■オンラインでも可能な新しいつながり方
ここ最近やっているのは、主に高齢者の方を対象にした「スマホ勉強会」です。
このコロナ禍で、お孫さんにも会えなくなっている高齢者の方がたくさんいる状況を見聞きして、せめて、オンラインで会話ができるようになろう、といった趣旨で数回やってきました。
こういう活動をして一番うれしいのは、気楽に話ができる、近所に住む仲間がたくさんできたことです。
ラインを共有してつながっている28名は、いつでも気軽に意見交換ができるし、「会おう」と言えばすぐに10名くらいは集まります。そして、その中の半分くらいは若い人たちです。ここで若い人たちといっているのはお子さんのいる40歳前後の人という意味ですが。
いずれにせよ、自分が住んでいる地域に気楽に話ができる仲間がいる。しかも単なる世間話ばかりではなく、しっかりとした中身の伴った話もできる、ということの幸せを、コロナ禍の今だからこそ余計に感じている毎日です。
今年はまだどうなるかわかりませんが、すぐにこのコロナ危機が収束するとも思えないので、リモートでできることをさらに増やしていこう、と思っています。