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有事における優先順位づけは経営者の使命

危機的な状況に直面したとき、経営者が「自分たちにとって大切なことの優先順位」を明確に示すことができれば、周りは自分が今何をしなくてはならないかが見えやすくなるため、全体的に危機対応の動きも加速します。

危機に際しての最優先事項は緊急避難的な対応です。目の前に降りかかってくる火の粉に対し、どう対応するのかを決める必要があるからです。
緊急対応をしながらも、今起こっている危機の全容を把握することに努めます。その中でも大切になるのが、今回の危機をもたらしているキーファクターはそもそも何なのか、をしっかりと特定していくことです。キーファクターを明確に見極められれば、その相互の関係性を見つけることで危機の全容を構造化して捉えられます。全容を構造化して捉えていけば、先を見通しやすくなるのです。先が見えてくることで、次に打つ手が想定しやすくなります。


現在の新型コロナウイルス感染拡大の危機を例にとって考えてみます。
まず、緊急対応としてやらねばならないのは、ウイルス感染からの防御策です。当初、水際作戦が話題になったのがそれに当たります。
加えて、日本で流された情報はマスクの着用と手洗いの奨励です。
そうこうしている間に、新型コロナウイルスの感染者には無症状の人がたくさんいる、という新たな実態が見えてきました。この特性こそが今回のコロナ危機のキーファクターということになります。

同時に、飛沫感染による感染力が非常に強い、というのも大事なキーファクターです。
この二つが掛け合わされることで、新型コロナウイルスの脅威は生まれている、と私は捉えています。
もちろん感染は認められるのに症状は出ないというのがどのような状態なのかは当初は不明でしたし、何も処方しないままで、どのくらいに期間で感染力がなくなるのか、などがはっきりしているわけではありません。
いずれにせよ、当初、あまり危機感を持って対応していなかった欧州で、爆発的な感染が広まり始め、それは米国に広がり、医療体制が整っておらず、衛生状態に問題を抱える南米や、中東、アフリカ諸国など世界各国に蔓延していく状況が生まれています。

危機の全容をこのように捉えた時、もし日本が1カ月前に緊急事態宣言を出していれば台湾や韓国のように新型コロナ危機を何とか抑え込めたであろうことが想定されます。
しかし、対応が遅れ、無症状の感染者が急速に増加している現状を見ると、ワクチンが早期にできる場合は別にして、簡単にこの危機が収束する、という見通しは立て難くなっています。


問題は、今なされている対応のほとんどは、まだ緊急避難の延長線上にあるものだということです。それもあって、多くの企業は平時ならばやっていたはずのことをやらずに、緊急対応として、単に先延ばしにする、というやり方をしています。しかし、このやり方は緊急避難ですから、このままでは長期戦は戦えないのです。
そういう意味で、今からすぐにでも始めなくてはならないのは、長期戦に入るための心の準備とそのための体制づくりです。つまり、単なる先延ばしをするのではなく、今の限られた条件下でどういう工夫をすれば、日常的な業務を推進していけるのか、なのです。


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