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【記事0004】山内 MAYPOS Silk マフラー(2022aw)【生地0003】
3生地目は、山内 MAYPOS Silk マフラーを紹介。
2生地目に引き続き、シルクヘリンボーン。
公式による説明があったわけではないが、「山内 CATHEDRAL別注デッドストックシルク・シャツジャケット」の生地に起毛加工を施したものだと思う。
フシのないシルクのヘリンボーン。
波打つようなひだの美しいドレープ。
滑らかな手触り。
きっと、
たぶん、
おそらく、
もしかすると、
同じ生地なんじゃないかと思う。
ひょっとすると。
このマフラーは、名古屋市にある山内のアトリエ兼ギャラリーショップを初めて訪れるきっかけとなったアイテムだ。
普段、出不精なくせに、好きなことに限ってはアクティブなわたくし。
埼玉県からはるばる約500kmの道のりを車で飛ばして行った。
当時の運転距離の中ではダントツ(遠出といっても50kmそこそこがいいところ。)だったが、ハイになっていたのだろう。
(この3年後さらに200km先の岡山市まで車で行くことになるとは、その当時、僕は知る由もなかった。)
余談だが、ちょうど僕がアトリエ兼ギャラリーショップを訪れる頃、スタッフの倉員(くらかず)さんが僕が注文していた別のアイテムの発送準備をしていた。
そんなタイミングで出会ったものだから、倉員(くらかず)さんは目をビー玉のように丸くし、「なんでおるねん(300%誇張)。」というリアクションだった。
おどろき、いただき。
今はもういらっしゃらないスタッフさんなのが寂しい(300%喪失)。
ちなみに、この年(2022年)に初めて東京・中目黒での一般向け展示受注会が行われており、当然の如く僕は参戦。
顔は覚えてもらっている状態だった。
かくして、初の聖地デビュー。
山内のデザイナーである山内さんの奥さん・知美(ともみ)さんにこのマフラーのことをお話ししていただいた。
このマフラーに使われているシルクは、「MAYPOS Silk(メイポスシルク)」というもの。
そして、「もう作ることのできない技術で織られたもの。」であると。
その技術とは、シルクの繊維を糸にする際、中心に空気を含むように織るというもの。
これにより、シルクの保温性・放湿性がさらに高まるのだ。
なぜ、これが、「もう作ることのできない技術」なのかというと、この技術が特許技術であって、その工場が特許を保有したまま閉鎖してしまったからだというのだ。
なんと厳しい世の中なのだろうか。
アパレル業界というのは、特許を取るほどの技術を持つ工場であってもなお、安寧を保障するわけではないのだ。
きっと、その工場だって特許の上であぐらをかいていたわけではないだろう。
特許技術を生み出すほどの情熱があろうとも、生き抜くことのできない世界があるのだ。
と、思考をしながら知美(ともみ)さんのお話を聞いていた。
さて、お披露目の時間。
「布帛(ふはく=織物)屋」を謳う山内の解釈を経ることで、通常は編み地であるマフラーが、「布帛(ふはく=織物)」で成り立つことの凄さを感じる。
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近づく。起毛加工によって、より一層、陰影がくっきりした佇まい。
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さらに近付く。スマホマイクロスコープの出番。
起毛加工により、ふんわりとほぐれているのが分かる。
参考までに、2生地目に紹介したシャツジャケットの生地を並べる。
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もっと近付く。
本来の織りの美しさを損なうことなく、起毛加工を施している。
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並べると違いがよく分かる。
この加工ひとつで、手触りが段違いなのだ。
マフラーの、あの、繊維の一本いっぽんが肌を伝う感覚がここにある。
そして、それが髪の毛の約20分の1以下の細さのシルクなのだから、チクチク感なぞ存在しない。
通常は編み地で形成されるマフラーを、「布帛(ふはく=織物)」で実現するという制限の中、【布帛屋山内】の創意工夫が込められたアイテムである。
【布帛屋山内】は勝手に呼びました。ごめんなさい。
つづいて、広げて垂らす。もう優雅。
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使う時は縦2つに折る。織りがしっかりしてるので、生地が重なるだけでも温かみが違う。
読者さんに届け〜。
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品質タグ。いつもは白だが、今回は黒。
「MAYPOS Silk(メイポスシルク)」の文字。
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の、裏。
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縫製者は、「倉員 冶基」さん。
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...倉員(くらかず)さん?
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うおーん!倉員(くらかず)さーん!
落ち着いて、着用。2つに折ったものを垂らすことが多い。
ダンディさを醸し出したい時はこちら。
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次は、ワンループ巻き。
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周囲に、「いや〜、今日は冷えますなぁ。」と、冬の訪れを伝えたい時はこちら。
ちなみに、知美(ともみ)さんから、「品質タグもデザインの一部。」と伺った。
よく見ると品質表示が“日本語”ではなく“英語”になっている。
これについて、知美(ともみ)さんから、「いつの日か海外の人がこのマフラーを見て、目に留めてもらうように。」とも伺った。
...覚えがある。
山内の服以外のアイテムはとても希少なので、ファン垂涎もの(すいぜんーもの・欲しいと熱望する魅力的なもの)。
冬の訪れが待ち遠しくなる、春の訪れが寂しくなるアイテムだ。
今回、紹介したマフラーは、Instagram投稿No.0003。
ぜひ見てください。