知識とスキル。どちらかが先行して特化すると苦しみが増えるという話
一芸に秀でる事は時に強力な武器となって私たちに力を貸してくれます。
打ち込む分野を一つに絞ることで多大な時間と労力を費やすことができ、マルチな能力を持った人には到底辿り着けない境地まで自分の能力を伸ばすことができるからです。
さらに、自分が秀でられなかった分野の能力を持ったチームメイトやパートナーと協力すれば弱点もなくなります。
しかし、各分野での「知識」と「スキル」。
この二つに関しては両立させなければ「楽しく学ぶ」ということができなくなってしまいます。
正確には楽しく学ぶ事が難しい、苦しい時期が生まれるのです。
どういうことなのか、バスケットボールで例えて具体的に説明していきます。
・知識が先行してしまった場合
これは情報量の多い現代と人間が潜在的に知識欲を持っていることから、最近ではよくみられるパターンです。
例えば試合で「相手の2-3ゾーンを崩したい」という時、「ゾーンはアウトサイドシュートに弱い」や「ハイポストにボールを入れてゾーンを収縮させてからローポストやウイングに捌く」といった知識を身に着けていたとします。
しかし、アウトサイドシュートを決めるスキルが無かったり、DFに囲まれて視野を保つことが出来なかったりすれば「正解は知っているが、自分のスキルはそれらを体現できないレベルのもの」という現実と向き合うことになります。
もちろん、自分の何が足りなかったのかを見極められるのは良いことです。
しかし、この例でもっと知識量が先行していたら「あの時間帯で自分が決めれなかったことが大きかった」「タイムアウトを取れば良かったのに慌ててそれすらできなかった」「あのオフェンスミスで味方の集中力が切れてしまった」と自分の至らない点や、それによって与えた周囲へのマイナスな影響などがたくさん見えてきてしまいます。
知識が先行するほど、自分のスキルの至らなさが見え過ぎてしまうのです。
知識量は自分にとっての満点の理想値です。
自分のスキルが50点だとして、知識を増やすということは満点を100点から120点 → 150点 → 200点へと上げる行為です。
スキルが置いてけぼりになれば、実際の自分のスキルと理想との乖離は大きくなり、これが苦しさを生むのです。
せっかく身に着けた知識をコート上で表現したいと思っても体現できなければ無力感が強くなっていきます。
さらにチームメイトや下の世代に知識を与えよう、シェアしようと思ってもそれを実際にやって見せることができません。実演できなければその知識は聞く側からすれば説得力がないので伝えることが難しくなります。
・スキルが先行してしまった場合
この場合はどちらかというと、「先行した後」もそうですが、「スキルを先行させようとしている」時も苦しくなります。
これは学生の部活動によく見られます。
例えばフットワークやスキルドリルはスキル向上に必要なものですが、ではそれらの練習をすることで自分のどんな能力が伸び、自分のプレーにどんな良いことがあるのかを知らないまま取り組み続けられるでしょうか?
(今はわかりませんが昔の部活動では普通でしたね)
これはスポーツに限らず、仕事に関する資格やPCスキルを身につけようとする際にも同じ事が言えます。
仮に取り組み続けられたとしても「これ、意味あるのかな?」と不安を抱えながらの練習は効率が悪く、なにより楽しく学ぶ事は難しいでしょう。
中高生が運動部に入っても、辛いからとすぐ辞めてしまうのはここに原因があるケースは少なくないと思います。
これはとても勿体ないことです。
これが仮に「このメニューをこなして、こういうスキルが身に付いたら、君のパフォーマンスはこれだけ良くなる。NBA選手で例えると○○選手みたいにね。」という風に言われたらどうでしょう?
多少辛くてもなりたい自分を目指して頑張れるかもしれません。
(ちなみに、スラムダンクの安西先生は桜木へシュート2万本に取り組ませる時にこういう指導をしていましたね。)
また、先ほどの点数の例で言うと、スキルが200点でも知識量が50点では自分のスキルは50点分しか見えません。
つまり、先行してしまった後も知識が追いつくまではスキルを十分に活かすことが出来ない為、「自分よりスキルの低い選手になぜか勝てない」といった状況も出てきます。
これらの事から知識とスキルは同時に伸ばしていくことが理想的です。
知識を体現するのはスキルであり、スキルを活かすのは知識なのです。
1つ知識を学んだらすぐに実践してマスターし、スキルを追い付かせる。
そして、昨日の自分ができなかったことが今日できるようになった喜びを感じながら学んでいく。
この歩み方をしていけば、継続して楽しく成長していけると思います。
この記事のまとめ
・知識量が先行するほど自分のスキルの至らなさが見え過ぎてしまう
・スキルを先行させようとすると、楽しくスキルを伸ばすことは難しくなる
・スキルが先行するとスキルを活かしきれない。
・知識を体現するのはスキルであり、スキルを活かすのは知識
・1つ学び、すぐ実践して成長を楽しむ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。