通算1000。マブンガが人知れず達成したBリーグ史上初の記録。
富山グラウジーズは破天荒なチームだ。
予想のつかない山あり谷ありの試合を繰り広げ、そして良くも悪くも様々な記録を叩き出す。
他にも1Q25点ビハインドから追いついたり、20点リードを一瞬で溶かしたりとこのチームの試合はことごとく大人しく終わらない。
さらに過去5シーズンでは残留プレーオフかCSのどちらかに必ず進出しており、シーズンが60試合で終ったこともないのである。
(コロナで中断した19-20シーズンを除く)
ディフェンス、安定感はそっちのけ。
そして常に何かが起こる。
そんな面白いチームだ。
その破天荒富山の1つの要因として挙げられるのがジュリアン・マブンガである。
マブンガは先日の33節京都戦。
とあるスタッツ指標でBリーグ史上初の通算1000を記録した。
この数字は2022年4月27日現在、マブンガがリーグ内でぶっちぎりの数字であり、2位に続くのはニック・ファジーカスの751である。(岩沢調べ。2位に関しては精度は保証できない)
ではここでこの数字が何のスタッツなのかを明かしたい。
それはBリーグ通算ターンオーバー数だ。
これを見て「なんだターンオーバーか」と思う人もいるかもしれない。
確かにターンオーバーは本来少ないほど優秀であり、多いことはネガティブなことだ。
しかしこのターンオーバーも通算で1000回もしたとなるとその意味合いは変わってくる。
この事実を掘り下げてみるとこれはむしろ不名誉なものではなく、マブンガの偉大さを証明するものでもあるのだ。
今回はそれをお伝えしたい。
1,ターンオーバーは誰にでもできることではない
まず、ターンオーバーとはボールコントロールミスや被スチールによって相手にボールを渡してしまう行為だ。
故にボール運びを担う司令塔やクリエイター役を担う得点源が最もこのリスクが高く、シューターやオフボールの役割が主であるディフェンダーやロールプレイヤーはこのリスクが低い。
故に通算1000ターンオーバーはマブンガが常にハンドラーとクリエイターを務め続けた、いわばチームの主軸であり続けたことの証明でもある。
2,ターンオーバーが多ければ通常は干されるが…
通常であれば特定の選手が一試合に4回、5回とターンオーバーをしたならHCも「これはえらいことだ」となってベンチに下げるだろう。
それに伴ってプレータイムが減り、ボールの所有率も減ってターンオーバーをし得る機会は減っていく。
故に通算1000ターンオーバー(1試合平均3.4回)はやろうと思っても記録できるものではない。
3,マブンガの偉大さ
ではなぜマブンガはターンオーバーをしてもベンチに下げられないのか?
その理由が“スーパーマブンガ”だ。
ゾーン状態に入り、スリーもペイントアタックも全てが決まるこの状態のマブンガはBリーグ内最強のスコアラーである。
スーパーマブンガと聞いてマブンガを知っている人が真っ先に思い浮かべるのはこの試合だろう。
20-21シーズンの千葉ジェッツ戦。
4Q終了時点で99-99のハイスコアゲーム。
以降もハイペースのまま2OTまでもつれ、129-130にまで至った死闘だ。
彼はこの試合。
3P6本を含む47得点、12アシスト、14リバウンド、14ファウルドローン、EFF59というとんでもない数字を記録した。
では、同じくこの試合。
彼が7回ターンオーバーをしたことを覚えている人はどれだけいるだろうか?
おそらくは、ほとんどの観客が認識すらしていないのではないか?
これがマブンガの偉大さである。
7ターンオーバーが印象に残らないレベルの活躍をする。
それができる選手は稀だろう。
4,1000に到達した理由
しかし、マブンガをこの“スーパーマブンガ”にするには多くの投資が必要だ。
プレータイム、シュート試投数、ボールの所有時間、スペーシング。
そして、ある程度のターンオーバー数の許容。
これらの多大なコストを費やさなければならない。
コーナー待機のスポットシューターのようなスペースもボールの所有時間も消費しない低コストな運用では“スーパーマブンガ”になってくれないのだ。
しかし、それだけの投資をする価値が彼にはある。
実は先日の京都戦GAME2で記録した彼の1000回目のターンオーバーは、正しくそれを証明する内容のものだった。
マブンガがターンオーバーをしたのは第4Q残り8分7秒のプレーだ。
このマブンガのターンオーバーで点差は9点ビハインドとなり、富山は危機的状況に陥った。
しかし、ここからマブンガはBJとのピック&ロールを3ポゼッション連続で成功させ、試合を支配する。
振り返ればこの8分間で6点4アシストを記録し、チームを逆転勝利に導いた。
この1000回目のターンオーバーとその後の展開こそ、彼が1000回ターンオーバーをしてもなおB1のチームの主軸としてスタメンであり続けられる理由なのだ。
1試合平均3.4ターンオーバーでもおつりが返ってくる。
そんな計算をされる選手は稀だろう。
一般的にターンオーバーは少ないほど優秀とされている。
そういう意味でジュリアン・マブンガは評価の分かれる選手だ。
ミスも多いが、それ以上の活躍をする破天荒な選手か。
神がかった試合はしないが、ミスの少ない優等生な選手か。
これらは一概に優劣をつけられるものではないが、
マブンガの強烈な個性は間違いなく観客を魅了している。
唯一無二。ジュリアン・マブンガ。
これが彼の魅力と言えるだろう。
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