地方平均年収より上。だけど遊ぶ時間はごくわずか。27歳三男の話。
春になると思い出す。
チビが社会人になった年のことを。
高卒で就職したチビがすぐに役に立つはずもないのに、仕事で何をやっていいのかもわからなし、理解できる範囲を超えて上司がやいのやいの毎日毎日いうものだから、チビは毎日鬱々と仕事に行っていた。
自分から友達を作るタイプでもなかったので仕事の伝達事項以外一言も誰とも口を利かず呼吸をするのさえも難しかったんだと思う。
親は毎日無事に帰ってこい!と念を送るしかなく、とにかく生きて帰って来てくれと願っていた。
そんなこんながしばらく続いた。
とある日。
チビは「おれ、たばこ吸うことにした」
宣言をした。
「な、なんで?どした?」
と聞くと
「休憩所では、みんなそれぞれ間隔をあけて座って、寝ているかスマホを見ているかでだれともしゃべっていない。だけど、喫煙所ではなんか話をしている様子が見える。あの会話に混ざってみたい。だからたばこをすうことにした。」
とすでに買ってきたたばこを手に握りしめていた。
まあ、やってみるがいい。
と「ふうん」とだけ返事をした。
心の中ではいい着眼点だな。
と思った。
それ以降チビはたばこを吸う人になっているわけだけれども。
おかげさまでいろいろお誘いを受けていろいろなことを(遊びを含めて)吸収したようだ。
そんなこんな行っているうちに何年か経ち、たぶんたばこがなくてもチビは今のように仕事の重要ポジションについているんだとは思うのだけれども、でも、たばこがチビの重い扉をあける勇気になったことには違いないのだろう。
で、そんなこんなのうちに
チビの会社は全社禁煙になってしまった。
チビはすでに仕事をしながらでも雑談ができるレベルになってはいて喫煙所がなくてもコミュニケーションがとれるようにはなっているのだけれども
出勤して退勤するまでたばこを吸わずに働いている。
現在休憩中のチビは何をしているんだろう?
と気になって聞いてみた。
「スマホでゲームか、TikTok見てる」
という。
仕事をしながら話をしないと行けないことが多く、休憩中はスマホを眺めながら静かにいるのが今はいいらしい。
4勤2休2交代制の某生産工場のMK
日勤の場合は朝8時前に家を出て帰りは23時近く
夜勤の場合は夜8時頃に家を出て帰りは翌昼11時近く
地方でも2交代制の工場内で働く給料は平均よりずいぶんいい。
休日は一日中寝て体力回復につとめている(いいふうな解釈)
か、
夜、質のいいおしゃれな服をまとい、「飲みにいってくるわ」と1キャバ使ってくる。(1キャバ=5万円(伊藤家の独自単位))
20代の金銭感覚これでいいのか?
と思う時もあるけれども、まあ、チビの人生だし、まじめに仕事に行くし、まあ、いい。
お金はあるけど時間がない27歳。
ところが、チビと話をしているといろいろな情報を持っていることに驚く。テレビを見る暇もない。会社以外の人と話す機会も少ない。だけれども、仕事の企画書などで煮詰まった時にアドバイスを求めると的確な指示を出してくる。
どこで、情報を蓄積しているのか?
いつ、情報を見て記憶しているのか?
想像してみると、
それなりに大きい地方の工場勤務の現場で働くアラサーの思考と行動を予想できるし、勤続やわら10年の会社でのコミュケーション範囲も想像できる。
毎日チビを翻弄させた厳しい上司は現場を離れデスクワークに昇進したが、時々呼ばれて会話を求められるらしい。
地方在住のいろいろな年齢層、性別、業種、家族構成を想像して、それぞれの日常を時々ストーリー仕立てで空想する。
そういや、私小学校通学路いつも物語一本考えてたな。
そんなことも思い出した。