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愛すべきタミヤ「ヨンパチ」の世界
昨年(2019年)の暮れの話だったと思います。
僕が所属する模型サークル「メッガーネ タートルズ」の例会でメンバーとおしゃべりしてたときのこと。
「うちもさー、自由なサークルなのはいいんだけど、たまにはみんなでなんかやらない?」ってメンバーの誰かが言いまして。僕だったかもしれんけど、それは覚えていないけれども。
去年のHME(北海道モデラーズエキシビション)で僕らはなんだか知らないけれど、やたらと戦車の模型ばかり見ていて「かっけーな!戦車、かっけーな!」と話してました。誰もガルパン見てないのに戦車の魅力にとりつかれてたのね。
だけど…
「作ってみたいけど、全然詳しくないんだよなぁ」
これが戦車模型に飛び込むのをためらわせてた。
事実に忠実であることを尊ぶ向きのあるスケールモデルの世界。
興味はあるけど、資料はないし歴史背景も詳しくないから尻込みしてしまってたわけです。ようは恥をかきたくない。
模型歴が長いほど、スタンダードなものってできなくなるよね。
「やっぱ、ガンプラしかできない人なんだ」と恥をかきたくない。
模型歴が長くなって、共通の趣味の人も増えて、SNSで交流もできて楽しいんだけど、一方でこういった見栄が模型を楽しめなくする。そういったことってわりとあるかもしれないよね。
でも、そうじゃないよね。
好きなものを好きなように作るのが模型の本分。
うまく出来上がらなくてもいいじゃないかー。別にコンテストで入賞をめざすわけでもないしー。
ってことで、みんなで次の例会までに戦車を作ろうという話になったのです。
「戦車といえばタミヤが作りやすそうだよね。そういえばタミヤの戦車プラモって作ったことないや…」
娘のめい以外、うちのメンバーはみんなタミヤの戦車を作ったことがありませんでした。
あまりにスタンダードすぎて通らない道ってあるよね。
これは良い機会だ。
タミヤのミリタリープラモを年末までにそれぞれ作ってみよう、ということになって僕は『日本海軍 コマツ G40 ブルドーザー』を作ることにしたってわけ。
これ、戦車じゃなくて重機だけどね…。
でもね、戦車も大砲などの牽引車の悪路走破性が評価されて開発が始まったものだから、戦場で使われる重機も戦車みたいなもんですよ、たぶん。うん。
タミヤのミリタリープラモを作ってみようと模型店でタミヤの戦車を探してみると、どうやら1/35と1/48が主流のよう。
ヨンパチ(1/48)だと飛行機模型のスケールとも合致するからか、戦車以外にも給油トラックや高官が乗るような軍用車など、飛行機を使ってジオラマを作るときに名脇役になるようなキットが多い。
そして価格も安くて、高い部類でも2千円程度。
敷居が高いと思っていたけれど、パーツ数もほどよくて、気楽に取り組める価格じゃん!ってことでヨンパチの中でも異彩を放っているように思えたブルドーザーをチョイスしたんだけど、これが大正解!
そう思えるほどの楽しい制作体験だったんだよね。
タミヤのミリタリープラモのほとんどには解説書が入ってるんだけど、これがとにかく面白い。
組み立て説明書のほうにもこの重機が日本で最初に誕生したブルドーザーであることなどが解説されているんだけど、G40ブルドーザーの解説書では米軍に接収されフィリピン近海に投棄されたはずのG40が1979年にオーストラリアで発見され、終戦から34年を経て祖国に帰還したエピソードが資料写真とともに綴られている。
歴史背景に詳しくないからと、スケールモデルの世界に尻込みする必要はまるで無かった。
タミヤのプラモを買い、その解説書を読み、作りながら自然と詳しくなっていくものだったのだ。作れば作るほど、その世界に詳しくなっていくのである。
ただ博識になりたいのであれば、図鑑などを読み込めば事足りそうなもの。
でもね、でもね。
兵器にまつわるエピソード、人間模様などを解説書で味わった上で、手を動かしてプラモを作るということが特別な体験となるのですよ。
本で読んだだけならすぐに忘れてしまいそうなものだけど、プラモを作ると日本最初のブルドーザーの存在はもちろんのこと、そのエンジンスターターの位置までずっと憶えていられそうなのよ。愛着とともにね。
ミリタリーの世界に詳しくなったからなんだって考えもあるだろうけど、知識を得るってことはそれだけでちょっとした快感だし、何かに愛着を持つって楽しいものです。
手のひらサイズの精巧なタミヤのプラモを見てそんなことを感じちゃいました。
ほんと、このサイズ感はたまらないちょうど良さ。
迫力には欠けるけど、デスクにちょこんと置いておける心地よい大きさ。小さなものを慈しむ、そんな日本らしさを感じられるスケールだ。
さて、ここからは制作記を。
接着剤は必要だけど、難しいというわけではなく小学生でも作れるレベル。
ガンプラの場合、タミヤの白セメントはいつまでたってもくっつかないと感じるけど、タミヤプラモには最適の接着剤と感じました。わりと早く溶けてくっついてくれる。あれはタミヤによるタミヤのための接着剤なのかな、と実感。ガンプラでも使うけどね。
チッピングはちょっとやりすぎだけど、楽しいんだから気にしない。
サビ入れは水彩色鉛筆を使用。茶サビに関してはなぜかダイソーの12本セットに入ってる茶が一番好き。
サビが浮いちゃってるけど、埃汚れを入れれば馴染むだろうと期待。
埃汚れを入れてみました。どんどんこ汚くなっていきます。
履帯の汚れを先に入れてから組み立てればよかったと学習しました。狭くて筆が入らない入らない…。しかし、初めてミリタリープラモだからこういう失敗もいいんです。
そんなこんなで作り始めてものの2日ほどで初めてのミリタリープラモが完成!
手頃な値段だし、組みやすくてパパッと完成できるし、プラモそのものの出来も素晴らしい。こりゃしばらくヨンパチの世界にはまっちゃいそうだなと思っちゃいました。
もう少しで模型歴10年になるけど、まだまだ知らない魅力がたくさんある。模型ってほんとに奥深くて飽きない趣味だよねー!