街を丸ごと組み立てる不思議な感覚
去年、いや一昨年だったかな?
サークルのメンバーが娘のめいにお年玉としてくれたのがこのプラモ。
1/3000集める軍艦シリーズNo.99『軍艦島(端島)』〔フジミ 2,680円(税込)〕!
ってこれ、なーにが「集める軍艦シリーズ」だよ、島じゃねーか!
そんなツッコミを入れたくなるけれど、フジミさんはそれはわかってやっているようで、ナンバー99もおそらくシャレのつもりなんでしょう。
だって、このシリーズ、せいぜい30種類くらいしかリリースされてないからね…。
そういうシャレは嫌いじゃない。
なにより島のプラモなんてそうそう無い。
ゆえに作ったことも無い。
こりゃあ、作るしかないっしょー!と、もらったまましばらく積んであっためいにおねだり。
「好きそうだもんねー(笑)」と、わりと快くキットをくれたのでした。
箱を開けてびっくり。
これしかパーツないの??
ランナー1枚とクリアパーツの海面のみ。これで2680円は高いのか、安いのか…。
一応、デカールも付いているんだけど、そのままじゃちょっとディテールがヌルいかなと感じたので純正のエッジングパーツを買うことに。
エッチングパーツは2400円。キットがもらいものでよかった…。
「上級者向き:当製品の組み立てには、高度な加工が必要です」という注意書き。こういうのって実は言うほど難しくなくって「俺って上級者かも〜」って気持ち良くさせてくれるものでしょ?
でもね、注意書きはハッタリなんかじゃなく、本当に難しかったよ(泣)。
もともとは板状になっている真鍮製のエッチングパーツを箱組みしたり折ってクレーンなどを作る…。1mm四方もないような箱を組み立てたのなんて生まれて初めてでしたわ。
エッチングパーツの細かな作業の連続に心折れそうになるけど、その苦労は確実に報われる。プラ製の街とはディテールが段違いに良くなるのだ。
…虫眼鏡で見ないとそのディテールは見えないけれども。
まあ、そんな苦労は措いといて…。
なぜこんな不思議なプラモが発売されたのか。
その背景にはやはり廃墟ブームというものがあると思う。
あと、2015年の世界文化遺産登録。
詳しくはなくとも長崎に軍艦島という廃墟があることをしている人は多いんじゃないかな。僕も名前だけ知っていた類の一人だったんだけど、島に建物のパーツをひとつひとつ設置しているうちに、「これ、なんの建物だろう?」と興味がわいちゃって自然と軍艦島について調べちゃったよ。
軍艦島こと端島は、長崎県にある島でもともとは大きな瀬にすぎなかったのを、石炭の採掘のために埋め立て拡張がされてできた島。
その大きさは南北に約480m、東西に約160mで、周囲がコンクリートの岸壁で覆われ、高層鉄筋アパートが立ち並ぶそのシルエットが軍艦「土佐」に似ていることから「軍艦島」と呼ばれるようになったそうな。
最盛期の1960年には約5300人もの人が住み、人口密度は当時の東京都区部の9倍にまで達し、党内には病院や学校など生活に不可欠な建物だけでなく、映画館やパチンコホールまで立ち並んでいたようで、このキットはその最盛期を再現したもの。
その後は他の産炭地と同様に廃れていって、ついには無人島になるわけだけど、30年以上もの風雨にさらされて「日本初の鉄筋コンクリート造の高層アパート」は良い具合の廃墟に。
しかも無人島。
廃墟フリークが食いつかないわけがない島が誕生したのだけど、残念ながら2019年の台風の影響で上陸が不可能に。
そして今年2月下旬から上陸できるようになったって話だったけど、コロナ…。ついてない…。
だけど、この騒動もそのうちおさまるよね。
上陸前の予習としてこのキットは大いに役にたつんじゃないかなって作ってて思いました。
島の建物を自らの手で組み、色を塗って軍艦島に上陸すれば、地図や資料を見ただけではわからない実感が、目の前に広がる瓦礫から感じられるんじゃないかって。
自分が完成した島を見に行ってみたい。
これ、プラモを作って初めて味わう感覚でしたわ。
こりゃあ、観光客誘致にインバウンドばっかりあてにしてないで、北海道の奥尻島や利尻島、天売島・焼尻島もフジミさんにキット化を打診したほうがいいんじゃない??
ところでこれが完成したのは今年(2020年)に入ってから。
実は何度も途中挫折して放置しては再開を繰り返し、約1年かかっちゃいました(笑)。今年3作目がこの軍艦島になります。
完成した作品写真は下の記事にまとめてます。