デジタルマーケティングと私

デジタルが浸透することで消費者の生活行動が変わり、その変化に呼応する形でマーケティングも変化を続けています。長年マーケティング業界に身を置いている私がデジタルとどのように関り、デジタルをどのように捉えてきたのかについてお話したいと思います。

実践を通じて学んだデジタルマーケティング黎明期

私がデジタルを活用したマーケティングに初めて関わったのは、1990年代中頃のことでした。当時はまだ日本企業で自社のWebサイトを立ち上げている企業はほんのひと握りというような状況でした。当時勤務していた広告代理店で担当していた某海外自動車メーカーはデジタルの活用に積極的な企業であり、日本語のWebサイトを立ち上げたり(公開初日に、プロバイダーの問題により、一部の方がサイトにアクセスできないというトラブルが発生したことを今でもよく覚えています)、オフラインで持っていたCRMの仕組みをデジタル化し、リードジェネレーションから顧客管理までの一貫した仕組みを構築等、デジタルを活用した施策を色々と実践していました。

私自身も当時、デジタルの知識はほとんど持ち合わせておらず、デジタルを活用したマーケティングに関する情報も日本には少なかったので海外の事例を独学で勉強するなどしましたが、実際は、顧客のプロジェクトで試行錯誤しながら実践を通じて学んだことが多かったと感じます。

この頃のデジタルに対するイメージは、新しいことに取り組むことによるイノベーティブなブランドイメージの構築と、顧客接点としての面が増えるだろうという程度で、まだコミュニケーションのメインストリームになるイメージは持っていませんでした。

デジタルの可能性:双方向のコミュニケーション

その後に入社したオグルヴィ・アンド・メイザージャパンでも顧客の広告やブランド構築全般に関わっていましたが、オグルヴィは360度でブランド体験を構築することを提唱する広告代理店であり、全体戦略の中でデジタルをどのように活用できるか・すべきかということを日々検討していました。マーケティングにおけるデジタルの可能性を大きく感じたのはこの頃です。


それまでのマーケティングコミュニケーションは、いわゆるマス媒体に広告を出稿して企業のメッセージや世界観を伝え、消費者の態度変容を促すという、基本的には一方通行のものでした。しかし、デジタルがマーケティングコミュニケーションに広く活用され始めたことで、これまで間接的にしかコミュニケーションが図ることができなかった顧客や見込み客と企業は直接的に、双方向にコミュニケーションを図り、関係を構築することができるように大きく変化しました。生活者のブランド体験が一方通行なものから双方向なものへと変わっていく。これこそが大きな可能性であると思ったのです。実際に、オグルヴィでは、外資系のブランドで多くのインタラクティブキャンペーンを実施していました。

マーケティングトレンドにおける最大の変化はスマホの浸透

インターネットの世界の変化は激しく、Googleの登場などエポックメイキングな事象は数多くありましたが、一方でマーケティングにけるデジタルの活用はまだ入り口に差し掛かったくらいであるという認識でした。

インターネットやデジタルの浸透によってコミュニケーションのあり方が変われば、広告やマーケティングのあり方も変わっていく。では広告・マーケティングはどのように変化していくのか?

デジタルの大きな可能性を意識しながら、私は当時は、そこに強い興味を感じており、日本マイクロソフトでは、当時買収したaQuantiveのアドネットワーク事業(DRIVE PM)の責任者、その後オンライン広告事業の責任者をしていました。アドネットワーク事業においては、その当時のFacebookのバナー広告の販売もパートナーとしてやっていました。これはまだ(ニュース)フィード広告が始まる以前のことです。

これらの経験を通じて、今後アドテックがさらに発展し、オークションベースの広告配信や、オーディエンスデータの重要性が上がっていくだろうということ、またソーシャルネットワークのマーケティング活用が進むだろうと感じたことを鮮明に覚えています。

私が長年マーケティング業界で従事してきた中で、個人的に最も大きなインパクトであったと考える変化は、スマートフォンの普及とソーシャルメディアの登場です。


現在私が日本代表を務めるFacebook社も生活者のコミュニケーションを変え、マーケティングにも大きな変化をもたらしました。これらの変化がマーケティングに与えた影響については、次回ご紹介したいと思います。