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期待した人材が育たない

期待してる人材が思うように育たなくて悩んでる責任者の方々は多いんじゃないでしょうか?

これまで
・ベンチャーの社長
・中小企業の社長
・大手企業の営業責任者
の方々の期待人材をどう育成したらいいのかという悩みに対して色々と取り組んできました。

今回は社長と期待している人材の
「役割を任せ・任せられたことをめぐる意味のズレ」を調整してコミュニケーションがスムーズになった事例をQ&A方式で1つご紹介したいと思います。

Q.どんな会社の事例でしょうか?
A.住宅リノベーション事業(以下リノベ事業)を主軸として創業して5年。 順調に事業が成長している6名のスタートアップ企業です。

Q.どんなお悩みを抱えていたんですか?
A.社長は事業拡大に向けて新規事業に挑戦をしたいが、ほぼ全ての案件を社長経由で仕事を獲得しているため、とてもじゃないけど新規事業に時間を割くことができない。その現実に直面をし“No.2”を成長させないとこれ以上事業が伸びていかないことを痛感していました。そこで、期待する人材Bさんにリノベ事業の事業責任者を任せてみたものの事業責任者として期待している動きには繋がっていなかったんです。Bさんを育てないと事業が伸びていかないのはわかっているが、どう育てたらいいか悩んでいました。

Q.社長はBさんにどのような期待をされていたのですか?
A.事業責任者として、
①事業の数字責任を持つこと
②事業が成長していくための事業計画を描くこと
 この2つを期待していました。

Q.なるほど。Bさんの動きはどのような動きだったんですか?
A.社長から見ると
 ①については、Bさんが担当している案件は数字責任をもって取組むので安心して任せていました。しかし、協業案件では協業者がミスやトラブルを起こしても「協業者に任せていますから」と自身が先頭に立ってフォローに入る動きはなかったです。
 ②については、社長から言われた数字を貼り付けただけの事業計画を作成していました。数字を達成するための行動計画を質問すると答えに窮している状態でした。

Q.社長はBさんなら任せられると思っていたんですか?
A.はい。そこは任せられる人材だと思っていました。Bさんは社長と同じ大企業出身で一緒に仕事をした経験から能力も業績達成意欲が高いと感じていました、それに経営者になるために経営に近い立場で仕事をしたいという思いでジョインしてくれているのでBさんにとってもいい機会になると期待をしていました。

Q.Bさんは期待されていたんですね。
A.はい。社長はBさんに期待をしていたのですが、Bさんは期待を受け取っていなかったんです。

Q.Bさんはどのように受け取っていたんですか?
A.社長から「リノベ責任者やれ」と言われたものの「責任者ってなんだ?」とイメージが湧かなかったみたいです。むしろ「社長はやりたくない仕事を全部僕に押し付けているんじゃないか。僕は日々現場が忙しいし、どうせ事業計画を立てても動かすのは自分じゃん」と思っていたので事業計画を作る意味を全く感じていなかったんです。

Q.なるほど。今回は何を解決したんですか?
A.大きく3つあります。
①社長とBさんが認識しているリノベ事業を任せ・任せられたことをめぐる意味のズレの調整をしました
②社長のBさんへの関り方の見方を変えました
③Bさんの意欲を引き出しました。

Q.解決に向けて具体的にどのようなことをされたんでしょうか?

取組んだ概要の紹介をします。

【1on1MTGの概要紹介】
コミュニケーションのエンジニアリングという独自の技術を用いた独自メソッドによる
社長とBさんの課題改善・課題解決を実現するオーダーメイドセッション。

具体的には
①Bさんへの1ON1ミーティングによるパーソナルトレーニング
本人の幼少期~現在までの間を振返り、やりがいを感じた体験、困難を克服した体験などを丁寧に紐解きます。その上で、今の仕事で実現したいこと、挑戦したいこと、問題・悩みなどについて、背景を含めて言語化していきます。

②社長との1ON1ミーティング二人三脚で課題改善・課題解決に向けてPDCAを回していきます
上記①の内容を踏まえ、社長の要望に照らしてBさんをどのように見るか、どのように関わるのが有効なのかを社長と一緒にPDCAを回していきます。

③上記ミーティングを双方と行う中で、コミュニケーションのズレを調整して解決するアシスト
をします。
 双方の思いや意図を受け止めて理解し、認識や理解のズレを見つけ出し、正しく受け取ってもらう状態を作ります。

サービスのイメージを掴んだところで、実際にどのように解決していったか事例を用いながら説明をしていきます。

【サービスの中で起こったこと1】
まず、社長とBさんが認識しているリノベ事業を任せ・任せられたことをめぐる意味のズレの調整をしたことについて見ていきます。

社長がBさんに任せた事業は事業の根幹であるリノベ事業です。新規事業に注力するためにはリノベ事業の成長は欠かせません。社長はBさんにリノベ事業を任せた時にリノベ事業を成長させていくことは伝えているつもりでした。

Q.伝えているつもりとは?
A.はい。社長は「リノベ事業を成長させていく」とBさんに伝えていたのですが、Bさんは「リノベ事業は成長させずに安定維持なんだ」と捉えていたのです。

Q.何で捉え違いが起こったのですか?
A.Bさんから見ると新規事業にリノベ事業の半分の人員が異動させられ、社長自身も新規事業に軸足を置いているからリノベ事業にはもう興味がないのかとも感じてしまっていました。Bさんは「当面の食い扶持を稼ぐために事業責任者を俺に任せたのか」という感じです。

Q.お互いの認識のズレは何でわかったんですか?
A.最初に社長からBさんへの期待、リノベ事業の方向性を伺ってからサービスをスタートします。次にBさんとの1on1MTGでリノベ事業の方向性を伺った時にお互いの認識のズレがあることが発覚しました。そこで社長に改めてリノベ事業の方向性を再確認し、Bさんが捉えている現状を伝えました。社長が「あー、だからか。毎月会議していていつも話が噛み合わないと思っていたんだよね。ちょっと俺の伝え方も悪いかもしれないから改めてBさんに伝える機会を作るよ」とリノベ事業の方向をすりあわせるMTGをしてもらいBさんも任されたリノベ事業が安定維持ではなく成長させていくことがわかり安心していました。

ここで起こった認識のズレなんてあるの?と思われる方がほとんどだと思うのですが、これが意外と多いんですよ。社長は「伝えているから大丈夫」で終わらせ、受けて側がどのように受け取っているのか確認せずお互いの認識がズレたまま進んでいくことはよくあります。こうやって丁寧にお互いの感じていることの背景を紐解いていくと認識のズレは調整することができます。

【サービスの中で起こったこと2】
社長のBさんへの関り方の見方が変わったことを見ていきます。

事業責任者を任せる前は、「 Bさんは社長と同じ大企業出身で一緒に仕事をした経験から能力も業績達成意欲が高いと感じていました」。しかし、事業責任者を任せたあとのBさんの「協業メンバーのミス・トラブルが起きても先頭に立たないこと」「事業計画が俺(社長)の言う数字をそのまま貼り付けて何も考えているように感じない」行動を見ていると「事業責任者としての自覚があるのか?やる気ないんじゃないのか?」とBさんに感じるようになっていました。

BさんはBさんで、
事業責任者を任せられた時に「なんだよ。社長がしたくない仕事を押し付けてるんじゃないか」と感じていましたし、事業計画作成についても「結局、最後は社長が引き取って作るんですよ」と不満を感じていました。

Q.その二人の状態で社長のBさんへの関りの見方が変わっていくのですか?
A.変わっていきました。まず、私が社長とやりとりをする際に意識したポイントが3つございます。
1.Bさんのインタビューの会話録を共有する
2.Bさんの状態を整理した図を用いてディスカッションする ※下記図①参照
3.Bさんが現状を突破するための兆しとなる仮説を準備する

図① Bさんとの1on1MTGを整理した図

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会話録、整理した図の事実を見ながら社長との打合せを重ねていくと、「Bさんは経営者になりたいって言っていたけど、自分の力で新たに雇用を生めることをしたいのか。それは知らなかったな。」と社長が新しい気付きを発見していきます。そこで社長と私でBさんの実現したい「自分の力で新たに雇用を生めることをしたい」ことと社長が期待したい「事業責任者」の接点がどこにあるのかを探し「雇用を生むために採用ができる状態になる」ことがBさんの実現したいことに近づくだろうと仮説を立てました。そのために「事業計画を立てること」がBさんにとって適切なテーマだと置きました。

仮説を持ってBさんとの1on1に臨みます。するとBさんにとって「事業計画を立てる≠採用できる」でした。ここでBさんが躓いている原因に耳を傾けると「事業計画を立てたいんですけど、何をどうやって作ったらいいか正直わかんないんですよ・・・」と言っていたので「社長に作成方法を聞いたらダメなんですか?」と聞くと「そんなこと聞けませんよ。いつも、いつできるんだ?この数字はどういう意味だ?と言われるので」とポロっと本音がでてきました。

Bさんとの打合せを整理して社長に見てもらいました。「こうやってBさんの言葉を見ていると、俺(社長)の伝え方が悪い部分もあるな。いつも結論だけ伝えて背景とかは説明していないかもしれない。それはBさんに悪いことしてるな」と日常Bさんとやりとりされていることが社長の中で想起されていきます。すると社長から「一度事業計画の作成方法をちゃんと伝えます」と言ってくれました。また、「Bさんに何のために事業責任者を任せたのか、Bさんにとってどんな意味があるのか?もちゃんと伝えてみます」と根幹のコミュニケーションにも目を向けていきました。今まで「Bさんはダメなんじゃないか」という見方の社長が私の関りで変わるかもしれないと気付けた一歩を生むことができました。

【サービスの中で起こったこと3】
Bさんの意欲を引き出したことについて見ていきます。

Bさんと上図①を用いながらやりとりをしている中で「自分が“経営”という言葉をざくっと使っていたが、人を採用して、人を育てて、雇用を生むことだと言語化できたことが大きい。自分のやりたいことが“雇用を生むことなんだ”と腹落ちできてきました」と表情が晴れやかになっていきました。

その後のMTGを重ねていくと明らかに意欲が高まっているのを感じたので「どうしたんですか?」と聞いたら「実は社長から、いやーすまん。新規事業を軌道に乗せるためにリノベ事業の人員を半減し、俺の伝え方だったら安定維持と捉えてもおかしくないな。ホント申し訳なかった。俺はBさんの能力だったら人員が半減になってもリノベ事業を今以上に成長させてくれると期待していたんだけど言い方が乱暴だった」と僕に事業責任者を任せる意味とか背景を丁寧に説明してくれたんです。あと、最近は「事業計画を達成すると、僕が実現したい雇用を生むことに繋がる、ということを強調して言ってくれるんです。そこまで僕の成長とか夢について社長がここまで考えてくれるなんてビックリです」と嬉しそうに語ってくれていました。

【その後の変化】
リノベ事業を予定通りBさんに任せることができ、社長が新規事業に注力できる環境になっていきました。

後日談ですが、1on1MTG終了2ヶ月後の社長との雑談の場で、
「時間が経てば経つほど効果を実感するわ。Bさんが俺に言われる前に粗利管理もお客様対応、メンバー対応をしてくれて事業責任者として当事者意識を持てるようになったのは会社にとってすごく大きい。この動きだと新たに数千万円を新しく生み出してくれるよ。やっぱり本人の関心がある景色の中で話をしないと動かないんだな」としみじみ語ってくれていました。

【最後に】
今回のようなNo.2育成の場合、コミュニケーションの対象はどこにあるのか?
置いたのは「任せた役割-任された役割」。No.2育成ならこれが関心・問題の中心にあるだろう。何事につけコミュニケーションが大事だということは皆んなわかっている。しかし、忙しい現実の中で全てに丁寧なコミュニケーションすることは不可能である。
ここをハッキリさせて、「任せた役割-任された役割」をめぐってお互いの立場に会いながら、どう感じ・どう思ったか、をフラットに交換していくと根幹のところができる。
さらには、これさえできれば、大きな対立とか誤解なく、お互い知恵を出し合っていけるようになっていきます。

今日はここまでです。
また別の悩みに対して色々と書いていきたいと思います。

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