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【訪問看護の経営】起業に必要な資金まとめ【アンケート結果有】

私はえん訪問看護ステーショングループという訪問看護ステーションを経営していますが、よく『訪問看護の起業っていくらかかるんですか?』という質問をいただきます。

確かに、訪問看護ステーションの起業を考える方にとって、初期投資や資金繰りに関する情報は極めて重要なので、知りたくなる気持ちはわかります。

しかし、どれだけの資金が必要で、どのようにして資金を集めるのか、その具体的な部分は曖昧になりがちです。

この記事では、訪問看護ステーションを立ち上げる際に必要となる資金の具体例を中心に、黒字化するまでにはどのくらい必要なのかまで詳しく解説します。

途中にはXで集計をした80票超のアンケートも載せているので、これから訪問看護業界に挑戦しようとする起業家の方は、ぜひ参考にしてみてください。


訪問看護起業に必要な資金まとめ

早速、訪問看護の企業に必要な資金をお伝えしてまいります。

元も子もない結論を言ってしまえば、「会社による」となってしまうのですが、その中でも大まかな目安として捉えていただければと思います。

大前提、訪問看護の起業には初期費用と運転資金の両方が必要ということを押さえておきましょう。

初期費用とは、事務所を開設するための経費や設備の購入にかかる費用であり、運転資金は毎月の運営にかかる経費を指します。


初期費用

  • 事務所開設費用:100万〜300万円

    • 事務所の開設に必要な設備や内装費用。

  • 車や自転車購入:30万〜200万円(リース可)

    • 訪問に使用する車や自転車の購入費用。リースを利用することも可能。

  • パンフレットや販促物:10万〜30万円

    • 利用者に配布するパンフレットや広告用の資料の作成費用。

  • ウェブサイト作成:3万〜50万円

    • 事業のウェブサイトを作成するための費用。規模や仕様によって大きく異なる。

  • その他物品:10万〜50万円

    • 必要な物品(家具、医療器具など)の購入費用。

以上より、初期費用は合計で150万〜500万円程度で落ち着くかなと思っております。


毎月の運転資金

  • スタッフ人件費:50万〜150万円

    • 看護師や管理者などスタッフの人件費。

  • 役員報酬:0〜50万円

    • 経営者自身の報酬。状況に応じて支払う額を調整可能。

  • 家賃:5万〜20万円

    • 事務所の賃料。

  • 士業費用:3万〜10万円

    • 税理士や社会保険労務士など、専門家への報酬。

  • リース・システム代:3万〜10万円

    • 車両や業務システムのリース代。

  • その他費用:5万〜20万円

    • 雑費やその他の運営費用。

上記より、毎月の運転資金は合計で80万〜250万円程度が必要になるかなと思います。


これらの費用をまとめると、最低限必要な初期費用が150万円、運転資金が80万円で、合計230万円あれば開設1ヶ月目までを乗り切れる可能性があります。念を押しておきますが、あくまでも「最低限」です。

ちなみに、日本政策金融公庫総合研究所の「2020年度新規開業実態調査」によると、開業資金の平均額は989万円と言われています。
500万円未満の割合が43.7%と最も高く、次いで500万~1,000万円未満が27.3%という結果も出ています。

業界開業資金の平均額

  • 医師開業(歯科医院・クリニック):1億~1億5,000万円

  • 美容院:1,200万~2,000万円

  • カフェ・喫茶店:1,000万円前後

  • 飲食店(居酒屋・焼き鳥屋など):200万~1,500万円

  • お店(アパレル・雑貨関係など):300万~1,000万円

  • エステサロン・ネイルサロン:200万~300万円

  • 学習塾:200万~1,000万円

  • 士業(税理士・行政書士・社労士等):50万~100万円

参考:2020年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所


ただし、この金額はあくまで最低限のものであり、事業の安定化や拡大を目指すためには、一般的にさらに多くの資金が必要になる場合があります。


資金調達のポイントと注意点

最低限の金額は上記でお伝えした通りですが、あくまでも最低限です。

私はよく、訪問看護の起業には最低でも1,000万円、できれば2,000万円の資金を確保することが望ましいとお伝えしています。

特に全体の必要予算感は年々上がってきている状況です。

一昔前までは1,000万円あれば大丈夫という風潮でしたが、今は1,000万円は心許ない金額だと判断しています。


これら必要となる資金は、自己資金と融資の組み合わせで調達するのが一般的です。

資本金に関しては、融資希望額の約5分の1程度を自己資金として準備することが望ましいです。

理由は金融機関からの信頼を得るためです。

また、日本政策金融公庫(公庫)からの融資は、資本金の最大10倍まで借りられる可能性がありますが、資本金が少ないとハードルが高くなるため、計画的な資本金の設定が求められます。

さらに、資金調達の際には、事業計画書の作成が不可欠です。

事業計画書とは、収支の予測や運営方針、事業の展望などを具体的に示す書類となります。

そのため、どのくらい資金調達をしなければならないかを、事前に考えておくことが重要です。

状況により、資金が少なくて済むこともあれば、予想以上にかかってしまうことも考えられます。


資金が少なくて済むパターン

  • 利用者が既にいて売上が見込める

    • 既に利用者がいる場合、開業後すぐに売上を確保できるため、資金的な負担が少なくて済む。

  • 居抜き物件でスタート可能

    • 前のテナントが使っていた設備をそのまま利用できる場合、事務所開設費用を大幅に抑えられる。

  • 代表が看護師兼管理者(セラピスト)

    • 代表自身が現場で働ける場合、管理者の人件費を削減でき、コストを抑えることが可能。

  • 人員換算2.5人でのミニマムスタート

    • 最小限の人員で事業を開始することで、人件費を削減し、資金の節約が可能。

  • 全員が経営者的な存在で人件費が安い等

    • チーム全員が経営者的な視点を持ち、報酬を抑えて事業に貢献することで、資金の負担を軽減できる。


資金が多く必要なパターン

  • 0ベースからのエリア開拓

    • 新しいエリアでゼロから利用者を開拓する場合、マーケティングや販促費用がかさみ、資金が多く必要となる。

  • 事務所の大幅な改装が必要

    • 事務所を開設する際に大幅な改装が必要な場合、初期費用が増加する。

  • 代表が有資格者でなく現場をしない

    • 代表者が現場での業務を行えない場合、管理者の雇用が必要となり、その分の人件費がかかる。

  • メンバーが集まらず採用費をかける

    • 必要なスタッフが集まらない場合、採用活動に多くの費用がかかる可能性がある。

  • 人件費を高めに設定

    • 人件費を高めに設定する場合、毎月の運転資金が増加し、資金的な負担が大きくなる。

  • こだわっていい物品を揃える

    • 質の高い物品や設備を揃えることで、初期費用が増加する。

  • 売上が上がらず損益分岐点まで到達出来ない等

    • 売上が想定通りに上がらず、損益分岐点に達するまでの期間が長引く場合、運転資金が多く必要になる。


これらを総合的に判断して資金の予測を立てるようにしましょう。


黒字化までの道のりと弊社の実例

訪問看護の起業は、開業して終わりではありません。

その次のステップは、「黒字化」です。

弊社の実例を挙げると、黒字化までにトータルで1,000万から1,200万円(補助金を除く)程度の資金が必要でした。

高知市中心部での新規エリア開拓に挑戦し、代表者は現場に入らず、看護師3名とセラピスト1名の体制でスタートしました。

具体的には、登記から開業までの費用として400万円がかかり、そのうち管理者の人材紹介費用が100万円を占めていました。

幸いにも創業補助金があり、180万円は補助金として戻ってきました。

その後、運転資金として800万から1000万円程度を投入し、ようやく黒字化に至ったという流れです。

また、一旦黒字化した後も安心はできません。

新たなスタッフの採用によって再び赤字に転落することがあります。

スタッフ数が7から8人程度では、人件費と稼働率のバランスが難しく、利益が不安定になることが多いです。

スタッフ数が10人を超えると、稼働率が安定しやすくなり、月に50万から100万円程度の利益を出せる可能性が高くなるかなといったところです。


他の訪問看護ステーションは単月黒字化までいくらかかった?

弊社の場合は上記の通りですが、他の訪問看護ステーションは黒字化までどのくらいかかっているのでしょうか?

Xで「他の訪問看護ステーションは単月黒字化までいくらかかった?」というアンケートをとったところ、以下のような結果が得られました。

【アンケート内容】
Q.他の訪問看護ステーションは単月黒字化までいくらかかった?
※初期の事務所開設費用も含めてざっくりいくらか?500万円単位
※整合性を合わすためにPLでの黒字化までの必要金額回答をお願いします。



アンケートでも「1,000〜1,500万円」が一番多く、弊社と大きく乖離がない結果が得られました。

ただ、思った以上にバラけている印象もあり、やはり「会社による」というのが一番正解なのでしょう。


まとめ

訪問看護の起業には、多くの資金が必要であり、その資金をどのように調達し、どのように管理するかが成功の鍵となります。

初期費用や運転資金の見積もりをしっかりと行い、自己資金と融資をバランスよく組み合わせて資金を準備することも重要です。

また、事業の安定化には、スタッフ数や稼働率のバランスも大きな影響を与えます。

そのため、訪問看護の起業にあたっては、少ない資金でスタートするための工夫や、必要に応じて追加資金を投入するといった柔軟性も求められてきます。

この記事が、訪問看護の起業を考えている方々の参考になれば幸いです!


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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

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