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【訪問看護の経営】廃業率3〜5%の業界で生き残るための3つのポイント【お金は血液】
訪問看護業界は、今後も需要が伸び続けていくでしょう。
しかし、あわせて供給が増えているのも事実で、近年ますます競争が激化しています。
新規事業所の参入が増える一方で、年間3〜5%もの事業所が廃業しているという現状があります。
この記事では、訪問看護業界の現状を知るとともに、廃業しないためにはどういうことが必要なのかを中心にお伝えしてまいります。
実際、私も訪問看護を経営(えん訪問看護ステーショングループ)しており、そして現在も経営し続けることができています。
その経験をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
訪問看護業界の現状をおさらい
冒頭でお伝えした通り、訪問看護ステーションの数はここ数年で急激に増加しています。
全国訪問看護事業協会が行った令和4年度の調査によれば、ステーション数は14,304ヶ所に達し、前年から1,301ヶ所増加しています。
増加率は10%に達し、これは約10年前(2011年)の伸び率3.3%と比べても、訪問看護が非常に速いペースで拡大していることを示しています。
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需要の高まりに伴い、新規開設される訪問看護ステーションの数は増加し続けていますが、一方で廃業に追い込まれる事業所も少なくありません。
2021年度の同調査結果によると、年初時点で13,003ヶ所あったステーションのうち、490ヶ所が廃業しました。
これにより、廃業率は約3.8%に達しています。
地域別の状況を見ると、東京都は3.4%、大阪府は5.4%と、地域ごとに廃業率にばらつきがあることがわかります。
訪問看護業界の廃業率は高い?低い?
「3〜5%の廃業率」
この数字がいまいちピンとこない人も多いかと思います。
結論、訪問看護におけるこの廃業率は、他の中小企業と比較をしても高い数字を示しています。
2020年時点での国内中小企業全体の廃業率=3.3%(出典:中小企業白書2022|経済産業省)
また、訪問看護事業の廃業率は、他の医療・福祉分野と比較をしても高めになっています。
2020年の医療福祉業界全体の廃業率=2.24%(出典:雇用保険事業年報 令和3年度)
「訪問看護の廃業率は、他の業態と比較をして高くなっている」
まずはこの現状を押さえておく必要があるでしょう。
実際に廃業するという話もチラホラ…。
訪問看護の廃業は、単なるデータだけではなく、実際に私の耳に入ってくることも多くなってきました。
実際、東京都における某年4-7月の新規出店数が70箇所程度、うち何箇所かは8月くらいに撤退するという話を耳にしてます。
たった3~5ヶ月程度で訪問看護業界からの退場。
撤退時の負債は1000万円超えるケースも多いでしょう。(例:出店費用300万円、赤字200万円/月、撤退費用100万円)
10年前までは「やってみたいからやった」程度の動機と覚悟で成り立っていたかもしれませんが、相当難しい業界になってきているのは事実です。
どうすれば、この訪問看護業界を生き抜くことができるのか。
このように、需要が高い一方、廃業率が高まりつつあるのが訪問看護業界です。
しかし、95%以上の訪問看護事業所は生き残っていることも忘れてはなりません。
では、どうすれば生き残ることができるのか。
様々な要素があることは重々承知をしていますが、私は以下の3つが欠かせないポイントだと思っております。
マネジメント力
採用力
資金力
1. マネジメント力
マネジメント力は、スタッフを成長させ、事業を拡大し、離職を減らすための根幹です。
経営者や管理職には、以下のようなスキルを備えていることが求められます。
スタッフのモチベーション管理: スタッフ一人ひとりの目標や課題を把握し、成長をサポートすること。
離職率の低減: 職場環境の改善やキャリアパスの提供を通じて、スタッフが長く働き続けられる環境を作る。
業務効率の向上: 無駄の削減や業務フローの改善により、時間とコストを最適化する。
2. 採用力
訪問看護では人材が命とも言える存在です。
採用力が不足すると、人員不足による負担が全体に広がり、事業の持続性が危うくなります。
具体的な対応策は以下の通りです。
採用プロセスの整備: 魅力的な求人広告の作成や、迅速な選考フローを導入。
ブランド力の構築: 地域に根ざした事業所としての信頼を築き、求職者にとって働きたい職場となる。
人材紹介会社の活用: 必要に応じて外部リソースを利用し、適切なタイミングで人材を確保。
3. 資金力
資金力は経営の基盤です。
資金が不足すると、適切な人材確保や設備投資が難しくなり、事業継続が危ぶまれます。
特に訪問看護は人件費が大きな割合を占めるため、収益と支出のバランスを常に見直す必要があります。(*ここ、重要なので後述します)
上記のポイント、どれか一個欠けると注意報、二個欠けると警報、三個欠けると退場というイメージを持っています。
2年以内の早期撤退のほとんどが「人員の問題→資金枯渇→心折れて辞める」という印象です。
3の資金力は医療職上がりの人が数年から10年で貯められる限界値もあるので、1と2を極めていくことをオススメします(というか、1と2があれば事業が伸びていくので、結果3も手に入るという事業構図です)。
*1と2は私のnoteでもかなり解説しているので、興味ある人は探してもらえれば勉強材料になると思います!
マネジメント力は、スタッフを成長させ、事業を伸ばし離職を少なくします。
採用力は、スタッフを採用することで事業が伸び、離職というリスクにも対応出来るようになります。
訪問看護事業でここをしっかりと押さえておけば、廃業する状況になることはまずはないと思っております(月の資金繰りを押さえておくことは大前提)。
ただ、逆を言えば、採用力がなくても、資金力があれば人材紹介会社を多用して解決する可能性も高いでしょう。
マネジメント力がない場合でも、資金力があれば優秀なマネージャーをそこそこ高い金額で雇うことも可能でしょう。
そのため、「マネジメント力」「採用力」「資金力」、どれか一つが突出していれば良いというわけではなく、最低でも2/3以上のリソースが必要なのは明白なのがわかると思います。
地場の会社で5-10年健全に運営している会社は、1〜3のリソースを兼ね添えている企業がほとんどです。
新規出店する事業所は、この会社たちと対峙していく必要があります。
決して喧嘩をしろという話ではなく、新規出店時特有の少ないリソースを余すことなく使い、生き残り戦略を取りながら事業を成長させ、1〜3を早期に手に入れていくことが必要ということです。
このように、訪問看護経営は楽ではありませんが、私はすごくやりがいが多い業界だと思っています。
やばそう!と思ったら一度ご相談下さい。その時はギリギリか既に遅いケースもありますが、フォロー出来ることもあると思っております。
【お金は血液】赤字になってしまう原因を押さえておこう
みなさん、アレルギーを出しやすいのが「資金力」の部分だと思うので、ここを深掘りしてみようと思います(お金のことは経営者の仕事ですが、管理職やスタッフも理解しておいて欲しいことです)。
資金管理の基本原則
損益分岐点の把握: 月間の必要収益を正確に把握し、これを下回らないようコントロールする。
赤字の早期対応: 赤字が続く場合、その原因を迅速に特定し、対策を講じる。
融資への依存回避: 必要以上に融資に頼らず、事業収益を元に運営を安定化させる。
もちろん、廃業と聞くと、お金がなくなったんだな…儲からなかったんだな…と想像できるかと思います。
その通りで、訪問看護経営にとってお金(資金)は会社の成長に重要な要素です。
会社(身体)にお金(血液)が無くなれば倒産(死)となります。
人間の身体にも血液が必要なように、会社にもお金という血液が必要なのです。
その点、血液が適正に回って配分されていると、身体は新陳代謝して成長していきます。
逆に淀めば血管が詰る可能性は高くなりますし、十分に回らないと各部の機能不全を起こします。
出血(赤字)し続けるといずれ死(倒産)を迎えるため、止血(損益分岐点を越える)や輸血(融資等)が必要となる。
輸血(融資)なんて短期間に何度も受けれるものではないため、やはり出血(赤字)状況の把握と原因究明および対策が大事なのです。
赤字になりやすい理由
では、出血(赤字)になりやすい理由を押さえておきましょう。
稼働率が上がらない(依頼が少ない)
スタッフを一気に採用し過ぎ
無駄な経費が多く販管費過多
借入額が大き過ぎて毎月の返済でマイナス
先ほど挙げた「マネジメント力」や「採用力」にも通じている事がよくわかりますね。
訪問看護はどの会社も人件費割合が1番高く、給与は簡単には下げれないため、まずは稼働率の問題が一番大事になってきます(1.2の部分)。
3の経費に関しては、ここも企業(月商1000万円程度)によっては数万〜数十万円かは見直せることも多いです(ただ経営者は嫌がる人も一定数いるはず、、、)。
4に関しては、、、企業としてはかなり末期だと考えます。
例えば、コロナ時期にあったゼロ融資などで無計画に借りまくって出血の対応を仕切れてなかったり、借入分の成長が出来なかった企業などは、返済が始まった辺りから相当苦しんでいます。
1.2は管理職・スタッフ、3は管理職も一部担うと思うので、日々血液を適切に回すことを意識しておいた方が良いでしょう。
まとめ
訪問看護業界は、他の業種と比較をして廃業率が高い傾向を示しています。
特にマネジメント力、採用力、資金力という三大要素が欠けると廃業リスクが高まります。
これらの要素を組み合わせ、リソースを最大化する戦略を取り入れることで、訪問看護事業の成功につなげることができるでしょう。
その中でも資金力はしっかりと理解しておくべきで、ここは経営者だけでなく、管理職やスタッフも同じことが言えます。
訪問看護業界での経営は決して簡単ではありませんが、やりがいのある仕事です。
この記事が、訪問看護業界を生き抜く皆さんの一助になれれば幸いです!
えん訪問看護ステーションでは、一緒に働いてくれる仲間を随時応募しています!(会社HP:えん訪問看護ステーショングループ)
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「訪問看護に興味がある」「初めてでも大丈夫かな?」という方は、ご相談だけでも構いませんので、ぜひご連絡ください!
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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)