【訪問看護の経営】立ち上げの時ってやっぱりつらい?週4常勤での立ち上げはOK?
昨今、訪問看護の経営を志している人は増加傾向にあると思っておりますが、希望もあれば不安もたくさんついてくるもの。
中でも立ち上げ時は限られた資金、看護師の採用、地域需要の開拓といった課題が次々と押し寄せ、不安とともに経営者の手腕が試される時期でもあります。
今回は、実際に訪問看護の経営(えん訪問看護ステーショングループ)をしている私が、「訪問看護の立ちあげって実際のところどうなの!?」という目線でお伝えしてまいります。
また、管理者含めて全員週4日勤務での運営はアリか?ナシか?という部分にも触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
訪問看護の立ち上げ時は、時限爆弾を抱えているようなもの…。
「時限爆弾を、見ず知らずの人たちと、一定期間内に、どんな方法でも良いから解除してね」
私が思う訪問看護の立ち上げは、上記の言葉に集約されていると考えています。
もう少し説明を加えると、
時限爆弾=資金余力
見ず知らずの人たちと=看護師2.5人以上
一定期間内=資金が尽きる前の黒字化or次回の資金調達出来るタイミング
です。
つまり、資金は限られていますよ、1人ではできません、必ず誰かとミッションを達成しなければなりませんよ、そしてそれには期限がありますよということです。
これが訪問看護の創業時の課題であり、経営者が置かれる状況です。
もちろん、時限爆弾なので、解除をしなければ爆発、つまり廃業に追い込まれてしまいます。
この爆弾を解除するために、絶対に必要な要件は以下の通りです。
看護師2.5人以上の維持もしくは増加
資金枯渇(倒産・撤退)までのリミットを把握
飽和しつつある地域需要を営業活動で掘り起こす
確かに、社長が看護師(人員基準1.0の確保)、資金が2500万円以上、元々地域との繋がりが深くて見込み新規依頼が取れるといった、時限爆弾の解除を楽にするアイテムはあるのですが、みんなが保持しているものではありません。
では、実際私はどうだったかというと、「そう考えると色々辛かったよなー」って思っています。
東京から高知にUターンするまで13年も離れていたため、繋がりはほぼない中の起業。
資本金500万円+公庫・地銀1100万円=1600万円の運転資金。
経営に専念すると決めてたので現場へ訪問することは皆無。
地元の繋がりがなかったため、看護師採用は難航(管理者で内定出してた人が辞退等)して人材紹介会社も使用。
初期の看護師の3人中2人は数ヶ月以内に退職。
営業して認知度を上げ、新規依頼を獲得しないと資金ショートが起こる。
一方で、負荷が上がると看護師が退職してしまうのではないか…という不安も増してくる。
どうですか…?笑
今でこそ笑える部分もあるのですが、当初は本当に辛かったです。
24時間の体制維持もそうですし、訪問看護の人員基準さえもままならなかったのが立ち上げからの半年間です。
私もそうでしたが、みんな時限爆弾を持った瞬間(起業・創業)は、私ならやれると思っています。
しかし、いざカウントダウンが開始されると毎月凄いペースで資金が減り、自分勝手なことを言い出すスタッフは出てくるし、営業には行きたくないというオーラも出始めてきます。
何なら暇を持て余し、スタッフ同士の足の引っ張り合いや会社への不満をぶちまけ始めます。
そうなると1人抜け、2人抜けという感じになります。
間違いなく負のスパイラルです。
このような状況の中でも、やり抜くという意思を持ち、冷静に判断を繰り返していくのが経営者です。
全ての会社責任は経営者にある。
会社で起こることは社長の自己責任である。
ちょっとキツイ言い方かもしれませんが、決して経営・起業を否定しているのではありません。
これくらいのリスクと辛さは覚悟しておいた方が、後々のためになると思っています。
訪問看護はこれから佳境を迎えてより一層、統廃合が進むでしょう。
地域で生き残れるステーションになるには、想いも資金力も含めて強くならなくてはなりません。
週4日常勤での訪問看護立ち上げはOKか?
昨今、ライフワークバランスという言葉が浸透しているように、管理者を含むスタッフ全員が週4日の常勤というケースもちょくちょく見かけるようになってきました。
この是非に関してXでアンケートを取ったので、まずは結果をご覧ください。
95票の回答をいただいたのですが、一番多い結果は「週4日常勤あり」でした。
すごく意外に感じる人もいるのではないでしょうか?
週4日で本当に現場は回るの…?って思ってしまいますよね。
私の意見はというと、『全員週4日常勤での訪問看護立ち上げは、スタッフには優しいがマネジメントおよび経営の難易度が高くなるのであまりオススメ出来ない』です。
その理由を、「スタッフ目線」「管理者(マネジメント目線)」「経営目線」に分けて深掘りしていこうと思います。
スタッフ目線
週4日ってなんか憧れる!週3日も休みがある! ダブルワークや子育てもあるし、休みが多いからプライベートも大事にたくさん遊びにも行けそう!!
でもお金(給与)は欲しいよ…?
もちろん、誰とどの会社で働きたいかという話はありますが、求人を見てアクセスするとなったら働き方と給与が先行してくるはずです。
特に週4日以下の選択肢となると、訪問看護をガッツリやりたい層の比率は少なくなり、どちらかというとライフワークバランスを取りたい人たちの問い合わせが多くなりそうな印象です。
週4日でも週5日分の給与相場くらいあれば理想ですが、特にスタートアップだと基本的には週5日勤務の80%くらいの給与設定しか出来ないでしょう。
スタッフ目線でいうと、確かに魅力的な部分も多いが、給料と天秤をかける必要があることは覚えておくべきです。
管理者(マネジメント目線)
私はここが一番の課題だと思っています。
管理者が週4日だと、残りの週3日分(土日営業の場合)の管理負荷が高くなってしまいます。
週5日勤務の管理者でさえ、残業が多かったり休みの日も持ち帰って仕事をしているのが現実です。
そう考えると、週4日でマネジメントするのは難易度が高くなり過ぎな気がしています。
具体的な話をしますと、マネジメントコストが増えるため遂行難易度が上がるという話です。
例えば、「週5日×スタッフ4人」と「週4日×スタッフ5人」の場合、稼働日に対しての出勤人数は同じになりますが、マネジメント負荷は後者が高くなる傾向にあります。
コミュニケーションなどのマネジメントコストを週5日100%とした時、週4日のスタッフには80%であるべきですが、実は『95-90%』くらいは掛かってしまう肌感があります。
単純な管理時間ではなく、管理人数が影響してしまうのです。
ということは、週4日常勤ばかりで週5日常勤と同じ件数や売上を作ろうとすると、管理者の負荷は10-20%程度上がることが見込まれます。
負荷が高くなればなるほど、管理者の能力値が高くなければ事業所は回せません。
マネジメント目線の課題はここに集約されるでしょう。
経営目線
最後は経営目線です。
この目線では、採用戦略とコスト見合いが大事だと思っています。
確かに「週4日常勤」は差別化もあり魅力的な文言のため、採用戦略としての訴求力は高いかもしれません。
一方で、週4日と週5日のスタッフを比べると、売上に対する間接コストは上がり利益圧迫に繋がってしまいます。
例えば、週5日スタッフの売り上げを80万円と想定すると、週4日スタッフは80%の64万円です。
しかし、以下のような問題が起こってきます。
同じ支払い総額給与でも、スタッフ人数が多い方が社保支払いが増える。
車(移動手段)の台数もスタッフ毎に準備する必要がある。事務所に取りに来てというスタイルでも、勤務日が重複したりすると余計な台数を保有しなくてはいけない。直行直帰するため一人一台渡せば尚更。
電子機器やバイタルセットなども基本は人数分
スタッフ毎の給与計算やその他諸費用も、基本的には人数が増えると増加する
そのため、1人辺りの売上が週5日勤務の80%としても、人件費(社保)+販管費の割合増加は必ず起こってしまいます。
週4日という売りで採用戦略が上手くハマれば良いのですが、選択制の事業所も増えてるため、週4日だけでは大きな強みにはなりにくい気もしています。
弊社も基本は週5日40時間勤務ですが、ライフワークバランス取りたいスタッフ向けに週30時間から時短常勤採用をしています。
子育て時期は短くして、子育てが落ち着いたら長くするといった臨機応変な働き方もOKです。
以上が、『全員週4日常勤での訪問看護立ち上げはスタッフには優しいが、マネジメントおよび経営の難易度が高くなるのであまりオススメ出来ない』と思っている理由になります。
決してこの体制を否定しているのではなく、マネジメントが難しいのに加えて、損益分岐点までの投資コストや利益ベースになっても利益圧迫になりやすいためオススメできないという話です。
運営・経営が上手くいってから週4日常勤に切り替えた方が、戦略的に良いかなと思っております。
まとめ
訪問看護事業の立ち上げや運営は希望が溢れる一方、資金や採用、マネジメントといった多岐にわたる課題を伴います。
正直、つらいことはある、楽ではないことは肝に銘じておきましょう。
特に週4日常勤体制はスタッフにとって魅力的である反面、経営やマネジメント面では大きな挑戦を伴います。
しかし、適切な資金管理、マネジメント体制の強化、そして柔軟な採用戦略を通じて、これらの課題を克服することは可能です。
ただし、経営に正解はありませんからね。
今回お伝えしたメリットとデメリットを鑑みて、あなたらしい事業所を作り上げてもらえたら幸いです。
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