からだの感覚が変わって起こった事
知覚が与えた作品への影響
以前、道具と民族差やその使い方の感覚差について書いてみましたが
今回はカラダの感覚が変わったことで起きた『知覚』の気付きが作品に与えたイノベーションについて、ある女性ファッションデザイナーの例をお話ししたいと思います。クライアントでもあり友人でもある彼女はあるアパレルメーカーに所属するデザイナーです。
積極的に販売店に顔を出してはお客様からの御意見を聞いたり店員さんからお客様の動向など
常に社内に留まらずに意見を聞きに現場に常時赴き商品デザインに役立てることを心掛けていると聞いておりました。
彼女いわく うちのお客様層は
割ときちんとしたイメージを求められ、
社内での服装も以外と気を使っている方
しかしながら仕事もしやすく、
でもオシャレであって欲しい、
といった物が求められているとの事でした。
先日彼女から、あるイベントでお客様を招いてゆっくりお話しする時間が出来
大変参考になる意見や 思ってもいなかった評価に『びっくり』したことを聞きました。
春夏物のトップス商品に脇から背中腰にかけてある工夫をしたそうなのですが
すると、購入していただいたお客様自身ではなく友人や仕事仲間から
『どこで買ったの?』
『動きやすそう すごくおしゃれ』
『背中が丸まって見えない』
『どのブランド?』
『お値段は?機能的だから』
といった質問を多数受けたそうです。
ご本人は確かに仕事しやすいし程度のことは考えていたようですが
脇から背中、腰にかけてのちょっとした工夫がこんなに目に止まるんだと、お客様もびっくり。
人はこんなところまで観ている
脇から腰、背中にかけては人からは見やすくても、自分では見にくい部分、しかし人はそこを見ているのだと改めて感心しました。 前回、背中の機能と道具の関係を述べましたが、抗重力筋である背中が使いやすくなるだけで、 民族差を超えてこんなことにまで影響することが起こりました。 実は彼女自身以前から背中、脇、腰の硬さに悩み問題を抱えていましたが、このところ改善の兆しが現れ出し やっと感覚や意識が現れ始めた矢先にデザインしたのがこの商品だったのです。
カラダの知覚が描いたデザイン
意図的にそこに繋げようと思ったのではなく なんとなく こうしたら良いのではないか? と自然に感じながらデザインしたらこうなったと 彼女は述べています。 『意図的』にしたのではない ここに大きな意味が隠されています。 体の機能から作為的に考えた物ではなく 自分自身のからだにおきた『知覚変化』によって からだの内側から浮かび上がってきた感覚を 無意識にデザインしたことで、このアイディアが生まれてきたのです。 常々お客様がどのような使い方をしているのかデザインの先にあるものを心がけて仕事をしていると語っていましたが、 今回は日常からの心掛けとカラダに起こった改善がうまく融合しておきたイノベーションであったと私は感じました。
『知覚』は発想支援の源泉
昨今、イノベーションを求められながらも なかなかうまく行っていない現状があります 生み出すのも人間、受諾するのも人間 お互いの最大の共通点であるカラダの問題点を題材に自分自身にイノベーションを起こすことの 大切さを痛感した出来事でした。 最後に彼女はまだ肩から腕への硬さは改善は完璧ではないといいます。 治すのではなく能動的にカラダに『知覚』する時間を繰り返し丁寧に行い、その瞬間を大切にする。 自分の問題点と向かい合い、 カラダに染み付いてしまった抽象概念から自由になれた時に 本当の答えはそこにある。からだの知覚は理解力であり一番シンプルな本質そのものです。 それを無意識に感じた時のデザインは本当に人に役立つのだと、彼女は感じ始めています。意図的、作為的に作り出すことよりまずは自分の『知覚』を改善することをお勧めします。『知覚』は必ずや発想支援肩の源泉となります。肩や腕の『知覚、開放』から生まれるイノベーション、次はどんなデザイが生まれてくるのか楽しみです。