カスタマーサクセスはプロダクトマーケティングとカスタマーマーケティングに分かれていく
※この記事は、cmkt Advent Calendar2019 の8日目の記事です(4日ぶり2回目)。
※初出時はPMMとしていた部分を、適切な並列記載にするため「プロダクトマーケティング」に修正。
カスタマーサクセスについて気になること
カスタマーサクセスについて、いろいろ考えていくと、どうも大きく2種類に分かれる気がしている。
(A) 顧客がプロダクト/サービスを使いこなせない。よって、オンボーディング支援や活用支援にリソースを割いている。
(B) すでにプロダクト/サービスを利用している顧客に、もっと付加価値を提供するためにリソースを割いている。
あちこちから聞こえてくる話は、どうもAの話が多い(私の観測範囲では)。
今年の夏ごろにカスタマーサクセスのイベントに登壇させていただいたときに、LINE WORKSにはカスタマーサクセスという部門もロールもない、という話をさせてもらった。
部門はないけど、「カスタマーサクセス的なこと」はもともと随所に埋め込まれてましてね、、、みたいなことを偉そうに話したんだが、今振り返ってみると、あれ、自分でもちゃんとわかってなかったな、という気分。
私が携わっているプロダクト(LINE WORKS)は、これまで「オンボーディング支援」がいらなかった。だから、たぶん大多数のA派のカスタマーサクセス界隈の人には響かなかったんじゃなかろうか。
カスタマーサクセスはオンボーディング支援じゃないはずだ
もしも、あなたが提供するプロダクト/サービスが、顧客にとってこれまで存在しなかったタイプのものならば、カスタマーサクセスの仕事の中心は Adoption になるべきだ。
なぜなら、顧客にとって新しい習慣を作ろうとしているのだから。
もしも、あなたが提供するプロダクト/サービスが、顧客にとってこれまでも存在していたタイプのものならば、カスタマーサクセスの仕事の中心は Expansion になるべきだ。
なぜなら、顧客にとって既存のプロダクト/サービスより価値があるはずだから。
(追記)このあたりの分類については、別記事に書きました。
何が言いたいかと言うと、オンボーディング支援なんて無い方がいいに決まってる。
その状態が目指すべきゴールだと考えるなら、一番大事な活動は何か?
それはプロダクト改善のはず。
『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則(通称 青本)』にもこう書いてある。
原則⑥ 本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ
~ カスタマーサクセスを重視する会社の目標は、その製品から顧客が価値を実感できることだ。
設計段階から素晴らしい製品を生み出すべく力を注ぎ込めば、それは他のあらゆるカスタマーエクスペリエンスの要素が入っているうえに、サービスやサポートが容易かつ顧客が価値を得やすい製品となるのである。
重視すべきなのは、直感的な製品にすることだ。(中略)そもそも、製品を理解するのに膨大な時間がかかるようでは、魅力に乏しい製品とみなされて誰にも使ってもらえない。~
わかりやすく言いかえると、カスタマーサクセス活動で、もっともスケールするのはプロダクトそのもの、ということ。
ところが、どういうわけかカスタマーサクセスの話には、あまりプロダクトフィードバックの話が出てこない。むしろ真逆のハイタッチな話ばかり聞こえてくる。
これは、まだ各社のカスタマーサクセスへの取り組みが初期段階にあり、CSMを中心とした活動になっているからなのか、salesforceをはじめとする高単価商材ベンダーが議論の中心にいるからなのか、外資系だとプロダクトへのフィードバックが難しいからなのか、はたまたカスタマーサクセスという組織や役割の存在意義を主張したくなるからなのか、、、よくわからない。
ちなみに「THE MODEL」で明らかに欠けている視点は、ずばりココ(←こっちも半額セールやってるね)。
なぜなら福田さんはずっと外資畑なのでプロダクトへのフィードバックという仕事をしたことはないから。
そして、それができたらもっと違う視点が持てたはずと、ご自身でも発言されている。
多分ここが西口さんと私のいちばんの差で、私はこれまで開発に関わったことがないんですよ。これは、という気づきがあっても、外資の組織上、R&Dに活かせるパスがなかった。もしその経験を積めていたら、もっと仕事が楽しかっただろうと、正直、自分のキャリアの中でいちばんフラストレーションがあるところなんです。
同様の理由で、セールスフォース日本法人のカスタマーサクセスの話をどんなに聞いても、プロダクトフィードバックの話は出てこない。
今の「カスタマーサクセス」の姿、とくにオンボーディングを頑張ってる姿は、あくまでも過渡期だと思う。
オンボーディングは、プロダクトの仕事になるのが理想の姿。
そのためには、カスタマーインサイトを収集・分析し、開発チームへフィードバックする仕事がとても大事なんだけど、CSMはそういうロールではない。
Customerを見ながら、Productのことを考える人が必要。たぶん、それはProduct Marketingロールなんだと思う。
カスタマーサクセスの人は、もっともっと開発部門へ言いたいことを言ったらいいんじゃないだろうか。
プロダクト/サービスがわかりやすくないので、顧客も自社もこんなに苦労している。
この状況を変えられるのは、プロダクトしかないんだ、と。
偶然かもしれないが、2016~2017年ごろの私のチームは Product Marketing という名前であり、実際に PMMのような動きをしていた。
日本のカスタマーサクセス第一人者である山田さんが元エンジニアであること、そしてSansanさんが上記のBのステージに達しているのは、もしかしたら経験年数だけの問題ではないのかもしれない。
オンボーディングから解放されたカスタマーサクセスの仕事
さて、オンボーディング支援から解放された「カスタマーサクセス」は、
(B) すでにプロダクト/サービスを利用している顧客に、もっと付加価値を提供するためにリソースを割いている。
こういう姿になるはず。
顧客にとっての付加価値は、必ずしも Upsell product を売ることとはイコールではない(そうなってるのが理想だけど)。
じゃあ、何なのか?
まさに、それを理解することが、カスタマーサクセスの仕事になるんじゃないだろうか?
そして、顧客にとっての付加価値を起点に「提供する」活動をスケールさせようとすると、必然的にそれはカスタマーマーケティングになるはず。
ほら、見たことあるでしょ、この流れ。
アドボケイト → ストーリー → 施策
そのためにも、顧客を理解する=カスタマーインサイトを得ることは本当に大事。
どれほど強調しても足りないくらい。
Success4 で ダンも言ってました。
Customer Success = Knowing your customer/market.
(写真撮り忘れた)
ちなみに、カスタマーインサイトと言うと、とかく購買理由の話に偏りがちなんだけど、そうじゃなくてユースケース中心のカスタマーインサイトが、すごく大事なんだよね、という話は、次の次くらいのnoteで書きたい。
(追記)書きました↓
まとめ
だいぶ話がとっ散ちらかってきたので、無理やりまとめる。
・オンボード中心のカスタマーサクセスは、あるべき姿じゃない。
・カスタマーサクセスの人は、プロダクトに仕事をしてもらうために、もっと開発チームと会話しよう。
・顧客の声をプロダクトに活かすことに興味があるなら、プロダクトマーケティングみたいな動きをしてみよう。
・顧客の声をスケールさせたいなら、カスタマーマーケティングをやってみよう。
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