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「つくって売る」を実践してみた! ― ポスト会社員の働き方 模索状況レポート 2021年9月号

10月に入りもうだいぶ経つような気もしますが、9月号です(汗)
9月までの話なので、9月号です!

ただの妄想を、曲がりなりにも「商品」にした半年間

以前にも書きましたが、働くことの原点は、自分で「つくって売る」だと思っています。そして、この「つくって売る」という経験は、ぜひ多くの方にトライしてほしいと思っています。ここ数ヶ月、実際にやってみて、これからの働き方を考える良いきっかけになると確信しました。

なんでかと考えてみて、「つくって売る」という体験は、働くことの原点なんじゃないかと思うに至った。

米や芋などの作物をつくって売る。
道具をつくって売る。
衣服をつくって売る。

時代を1,000年もさかのぼらなくても、たった100数十年前は、ほぼすべての人にとって、働くってこういうことだったはず。
つくる部分にやりがいを強く感じる人もいれば、売る部分の方にやりがいを感じる人もいるだろうけど、このふたつがセットになっていると、世の中に価値を提供している実感を得やすいんだと思う。

ところが、組織で働いていると「つくる」にたずさわれる人はとても限られる。「売る」に関われる人は、まだいい方だ。
現代の組織には「社内の人との(調整)仕事ばかり」という人が、ものすごく多い。だから、自分の仕事に価値を感じられなくて、働くことの楽しさを実感できない人が多い。
これ、すごくもったいないことだと思う。

もっと多くの人が「つくる経験」をできるようになったら、働く喜びや楽しさをもっと実感しやすくなるんだろうな......なんて考えを巡らせていたら、こんな考えにたどりついた。

「個人の時代」が来たのなら、いずれまた時代が回って(螺旋状に発展し)、だれもが「自分の商品をつくる時代」になるんじゃないか?


なにか自分で商品になるものをつくり、それを売り、お客様との関係を維持し、リピートで買ってもらう。そして、お客様と一緒に商品(事業)を育てていく。

半年前には、ただの構想(妄想)でしかなかったアイディアを、商品というカタチにすべくゼロからつくり始め、なんとか世に出すという経験をしてみて、ようやくこの考えを体現するスタート地点に立てました。

半年前の構想(妄想)↓

そこで、ジェネラリストの本領を発揮して、仕事で成功するだけでなく、より良く生きるために必要な科目は何なのか、基礎編として学ぶべき科目を集めたカリキュラムを考えてみた。

自分の人生経営のためのライフMBAのカリキュラム
これが、2021年4月時点での原案。

基礎科目は、
1 人生構想(会社経営では戦略・リーダーシップに相当、主体性について)
2 意思決定(仕事も人生も選択でできている)
3 健康(組織に相当、健康のための3要素について)
4 マネー(会計・ファイナンスに相当、税金・投資・資産について)
5 対人関係、社会生活(営業に相当、コミュニケーションと影響力について)
6 発信(マーケティングに相当、出会いを生む発信と逆フィルタリングについて)

応用科目は、
7 学習・インプット(研究開発に相当)
8 実行力・集中力(オペレーションに相当)
9 IT
10 個人の商品づくり(生産に相当)

基礎科目にあたる6つは、幸せな人生経営に必須だと考えられるものを選んだ。
「なるほどね、全部押さえてるよ」という人もいるかもしれないが、「ちょっと苦手科目が混じってるな」という人が多いのではないだろうか。
パッと見てわかるとおり、各科目については、世の中に膨大な専門家と専門書があふれている。
ただ、この6つが基礎科目だと理解し、自分の抜け漏れを把握するのが、もっとも大事なポイントだと思っている。
「商品づくり」は難しい #ポスト会社員の働き方 模索状況レポート 2021/5

おかげさまで30人以上の方にご購入いただきました。感謝ですm(_ _)m


「商品」といっても、いろいろあります。ハードウェアをともなう商品や、SaaS的な商品は、資本集約的で個人が手掛けるにはおそろしくハードルが高い。なので、個人が取り組むなら、資本不要、必要なのは手足と気合いだけなコンテンツから始めるのが良いでしょう。「コンテンツなんて商品と言えるの?」と思う方もいるかもしれませんが、世に出そうとすると、なかなか大変です。ともすると、情報商材と見下されがちですが、マトモにつくるのはおそろしく大変だということが今回よーくわかりました。

実際にやってみると予想外な壁にぶつかるもんです。「つくる」過程では、厳密な締め切りがないので、自分で自分を追い込み、自分で自分を盛り上げるのに苦労しました。内容面でも、思うようにまとまらないのは当然で、『これ出す意味あるのか?』と思ったのは一度や二度ではありませんし、『やっぱりやめようかな』という考えが頭をよぎったこともあります。

「売る」の段階では、個別noteをリリースした直後はほとんど反応がなく凹みましたし、有料マガジンをリリースするときには予想以上に緊張しましたし、「やらしいかな...」と思いつつもセール期間を設けたりしつこく営業活動することの大切さも実感しました。やってみないと分からなかったことばかりです。

もちろんできなかったこともあります。本当はもっと読者の皆さんと「共創」したかったのですが、うまくできませんでした。これは、私の苦手なことがバッチリ反映された結果です。私はいわゆるアジャイルなアプローチが苦手です。未完成な状態でもいいので、早く人に見せて、早くフィードバックをもらい、すばやく修正していく、というやり方ですね。その方がいいと頭では分かっていても、「もうちょっとだけ」「あ、ここも直したい」と思ってしまい、なかなか自分に対してGoが出せません。そんな自分に強制力をもたせるためにイベントを設定して、期限を区切ったり、フィードバックをもらう仕組みをつくったりしましたが、「共創」と呼べるようなアプローチは取れませんでした。ここは次の課題だなと思っています。

こういったひとつひとつの経験は、うまくいったこともいかなかったことも、ものすごく手触り感があり、圧倒的に自分でコントロールしている感があります。仕事を通じて世の中とつながっている実感を持ちやすく、反応があればものすごくうれしいし、お客様からのポジティブなフィードバックとかTwitterでの投稿とか、めちゃくちゃ興奮します

100年前に、自分でつくった農作物や衣服などの商品をつくって売るような商売をしていたら、こういう体験が日常的なことだったのかもしれません。オフィスビルで(いまは自宅かもしれませんが)メールや資料と格闘する仕事では味わいにくい「モノを生み出し、世に出す感覚」を味わえました

実は私は、副業にはあまり賛成ではなかったのですが*、小さくてもいいので、働く意義が感じられずモヤモヤしている人は、一度こういった「つくって売る」経験をするのは大いにアリだなと思うようになりました。

* 多くの人にとって正副のリソース配分は難易度が高すぎ、労力と対価が合わないので、やるならいっそ正のない複業の方がいいと思ってる派です。

ところで冒頭で引用した「いずれまた時代が回って(螺旋状に発展し)」という視点を、折りに触れて持つようにしています。世の中は得てして、ぐるっと回って原点回帰したり、温故知新的に揺り戻しがあったりするもの。でもそれは決して元に戻るのではなく、螺旋(らせん)状に進化していく、という発想は、この本で学びました。
この本では、ヘーゲルの弁証法的思考と、それを仕事に活かす方法が紹介されています。本物のヘーゲルを学んだことがないので、どこまでがヘーゲルの弁証法で、どこからが田坂流なのかよく知りませんが、この考え方を折りに触れ思い出しますし、けっこう役に立ってます。もう15年ほど前の著作なので出てくる事例は古いですが、この考え方・発想は学んでおいて損はないです。私自身が15年経った今でも覚えていて活用しているくらいなので。


中庸な普通の人に「個人で働く」という選択肢を

「個人で働く」というと、どうしてもスペシャルなスキルを持った人に限られると思いがちです。私もそう思ってましたし。でも、時代は進み、さまざまなテクノロジーが普及し、世の中の人々の行動や習慣も変わった今、スペシャルなスキルを持たない「普通の人」でも、「個人で働く」という選択肢を持てるんじゃないかと思っています。

私には尖った専門性がありません。○○のスペシャリストと言われたことは人生において一度もありませんし、□□と言えば萩原だよね、というキャッチフレーズ・ハッシュタグもはっきりしません(これまた、私の永遠の悩みでありコンプレックスです)。
年齢を重ね、経験だけはいろいろ積んできたので、「だいたいのことはある程度のレベルでこなせる」けど「誰もが認める、ここがスゴい!というポイントはない」というジェネラリストです。

尖ったところがない、中庸で普通のオッさんが、これまでの仕事経験と人生経験をもとに、オリジナルな商品をつくって売る世の中になったら、ちょっとおもしろいと思うんですよね。

多くのオッさん世代が組織内でくすぶり続けている今の世の中は、もちろんオッさん当人にとっても良くないですが、それ以上に未来への希望を持ちにくいという点で、若者にとっても良くないと思うのです。

そこそこ学歴がある人が、ある程度以上の収入を得ようと思うと、自分を押し殺すようなブルシットジョブを続けざるを得ないという不都合な現実。若いとき優秀だった人も、中年になると収入を維持するために仕事(会社)にしがみつかなきゃいけないとしたら、こんなに不幸なことはありません。

管理職になりたくないと言う若者。俺らを見てたらそう思うよね、と苦笑いするオッさんたち。この構図は一体なんなんだ、と思いませんか?

見栄えが良い大企業での仕事を選んで、働く意義を実感できないままにくすぶり続けるよりも、働く意義と喜びを感じる道を選ぶ人が増えた方が、個人にとっても社会にとっても健全だと思うんですよ。

でも、「そりゃそうだけど、そんなこと言っても、そんなのは理想論」「将来どうなるかわからないので、そんな選択は不安すぎる」「働く意義と喜びも大事だけど、安定して給料がもらえる仕事は手放せない」と思う人の方が多いでしょう。

だとしたら、世の中には「個人で働く」「つくって売る」という選択肢があること、そういう道でもそれなりに食っていけることを示す必要があるんじゃないかと思うのです。もちろん私が示さなくても、世の中にはすでにそうやって生きている人がたくさんいますが、事例は多いに越したことはないだろうと。さらに言えば、私がそれを示せる保証はどこにもないのですが、でもまあ、そういう挑戦をしてみようと思っているわけです。

なぜなら、

「そんな選択肢が世の中にあったの?なんだよ、もっと早く知っとけば...」「俺、なんて世間知らずだったんだ...」

自分の人生を振り返ってみて、こういう状況が一番嫌だったんですよね。

世の中には、いわゆる主流派向けの情報ばかり溢れています。なぜなら、その方がPVが稼げるから、アテンションが取れるから。
情報が増えれば増えるほど、アテンション獲得競争になり、さらに主流派向けの情報が増えていく。しかも、ものすごくキャッチーな見せ方で。結果として、こんな道もあるんだよ、という情報は表に上がってこず、選択肢を知る機会は減ってしまう。だから、今はまだ非主流派な選択肢についての情報発信は、やりすぎるくらいでちょうどいいでしょう。

個人事業主になってみてつくづく実感しますが、ハッキリ言ってサラリーマンでいる方が楽です。さまざまな制度面での優遇がハンパないです。一方で、サラリーマンでいることで不都合な真実を知る機会がなかったり、ジワジワと失っていることがあるのも事実なんです。

そんなことも含め、普通の人にとって「個人で働く」が選択肢になるか、という人体実験を続けています。


次に何をするか

さて、次の段階は、商品を「育てる」かなと思ってます。

「育てる」というのは、壮年期(40~65歳)の発達段階に必要な要素だと言われています。

心理学者 エリク・H・エリクソンが提唱した「心理社会的発達理論(psychosocial development)」において、ジェネラティビティ(generativity)と呼ばれた概念を、分かりやすくするため「育てる」と表現しています。壮年期で乗り越えるべき発達課題(development task)を、エリクソンはジェネラティビティーと呼び(造語)、「生殖」「世代性」「次世代育成能力」などと訳されます。子どもを育てたり、職場の後進を育成したりなど、のちの世代に貢献することです。そして、この発達課題を乗り越えることにより、世話(care)という力(virtue)を獲得することが、壮年期で必要な発達であるとされています。この課題に向き合わず、常に自分のことだけ考えて生きている状況は「停滞(stagnation)」と呼ばれ、「社会において、自分がやってきたことは何だったんだろう」と悩み、「停滞」していると感じるそうです。
(参考:エリクソンの「発達段階」を知ろう。年齢別「発達課題」はクリアできてる?「老い」と次世代を支える心

バブル期から就職氷河期あたりの世代にとって、この「育てる」経験が不足しているがゆえに、適切な発達をする機会が失われたんじゃないかと思うんです。急激な就職難(と少子化)により、1990年代後半から2000年代にかけて、後輩が入ってこない職場が激増しました。自分よりも後の世代が入ってこない職場では、30歳も35歳も、下手すれば40歳でも「若手扱い」です。いつまで経っても、育てる側になれないので、その世代が必要とする「世話(care)」という力を獲得する機会がありません。

これから若者人口が減っていくと、いまの中堅・若手世代も同じ悩みを持つことになるでしょう。また、ジョブ型雇用にシフトすると、分業化が進み、部下なしの人の割合も増えていきます(その代わり外注・業務委託先を管理する機会は増えます)。人を育てる機会が減っていくのであれば、マイベイビーとなるような「自分の商品」をつくり、それを育てるという選択肢を持つことは、意外と重要になるんじゃないか、なんてことも考えたりします。

そんな世の中の流れを考えつつ、私自身がこれからやろうとしている商品の育て方は3方向。

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1. 縦方向:
すでにリリースしたライフMBAの1~6について、もう少し深掘りしてほしい、解説が欲しい、ツッコミを受けたいといったフィードバックをいただいています。なので、深掘りや解説・ツッコミができるような場を、ワークショップのような形式で開催したいなと思ってます。これは、私も読者の方とのインタラクションができるので楽しみ。実は、解説付きの動画コンテンツを作りたいんですが、やり始めるとドツボにハマりそうで、ちょっと躊躇…
2. 横方向:
全体像で示しているとおり、ライフMBAは全10科目でして、まだ応用科目の7~10が残っています。1〜6と同様に制作していきますが、これは少し先になるかな。
3. 改善:
既存商品(1〜6)もブラッシュアップしたい。先日実施したアンケートや、1で実施するワークショップなどを通じて得られたフィードバックを既存の商品(マガジン)に反映し、ブラッシュアップしたいと思ってます。noteの仕組みで、既に購入してくださったお客様は、追加購入無しでアップデート版を入手できるので、早く買ったお客さんほど得をする仕組みでいいなと思います。
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いやあ、大変だ(笑) 
次に #ポスト会社員の働き方 模索状況レポートが書けるのは、一体いつになるでしょうか。。。

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萩原 雅裕|Prodotto代表
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