白樺の森の奥に -Kivach waterfall-
Day5 part2
キジ島を出た船は、キジ島を含むカレリア共和国の首都ペトロザヴォーツクへ向かっていた。ペトロザヴォーツクに向かう間は上映会と、2時半頃に取る遅い昼食だった。昼食ではこの船初めてのペリメニが提供された。ペリメニは人気なようで、ロシア人たちはお皿に山盛り盛っていく。ついでにサワークリームとマスタードも山盛り、一人来たらビュッフェの台から半分は消える。「取り分考えて…。」と思ったが、確かにおいしかった。プチ水餃子みたいなもので箸というかフォークが進む。お昼が遅く、映画祭参加のメンバーと歓談していたせいか、次のツアーのバスに乗り遅れそうになる。
走ってバスに乗り込んだら、私たちが最後だったようでそのまま出発した。ペトロザヴォーツクの街をバスは抜けていく。ロシア人のユリアによるとペトロザヴォーツクは美しい街なのだそう。バスから見ているだけでも寂れているように見えるが、それが感じられる。ペトロザヴォーツクも見ておきたかった…。
バスはハイウェイに入り北上していく。道はとりあえず広いが、アメリカほどでは無かった。ニューヨークからフィラデルフィアを越えてワシントンへ来るまで向かったときのあのハイウェイの広さと、トラックの大きさとそれに対する恐怖はロシアには無かった。想像する以上に日本の田舎の道に近い。
ロシアの本当の意味での現在の田舎を走っていた。日本の冬の3時頃に近い日の光がずっと続く。1時間半ほど経つと道路は白樺の森に囲まれていた。ペトロザヴォーツクを北上したフィンランドとの国境近く。キヴァチという森林公園だ。
小学生ぐらいの子供とその集団が多かった。ここは珍しく中国人の集団がおらず、純粋にロシア語と英語しかない場所だった。警備は警備会社ではなく多分ロシア軍。撮るのはちょっと怖いので撮っていない。
熊の木彫り像とКнвачの看板。
鷲や梟の木彫り像が所々に。そして狸なのかハリネズミなのかよくわからない奴の像。白目むいてるし…。
桟橋をツアーリーダーともに渡っていく。ツアーリーダーはロシアのおばちゃん。フルでロシア語なため何言っているかは分からない…。
この時点でもう4時半なのにまだ昼下がりな感じが不思議だった。さすが北極圏。
進んでいくとごうごうと水が流れる音が聞こえてきた。
ごつごつした岩場を通り抜けて。
誰かが積み上げた石が所々に。
滝に合流していく小川。それを抜けると滝が見えてきた。
黄緑と黄色と深緑が織りなす森のグラデーションのなかに滝が見えてくる。
周りの色と水の色が日本の滝とは何か違うことを感じさせる。初めて見た海外の滝だった。段々で流れていく勢いの強さを感じた。
鏡面反射する水面と勢いよく落ちる水の白さのコントラストがすごい。
何故そこに生えたのか…。
良い時間に来たのかもしれない。この時点でもう5時過ぎだった。
すぐそこの階段から戻って駐車場に入る。
トイレに行こうとしたがトイレが衝撃的なにおいと汚さで、船に戻るまで我慢することを決心した。
バスはキヴァチを発ち、再び来た道をたどりペトロザヴォーツクを目指す。
どんどん日は暮れていき、ペトロザヴォーツクについたのは19時50分ごろだった。船は20時20分出航のため結構ぎりぎりの時間になっていた。
寄港するするごとに犬がいたように思う。しかもオオカミかと思うぐらいでかい。
船が泊まっているペトロザヴォーツクの港は、夕暮れに染まっていた。赤と青の美しい遅い黄昏時。船に向かうツアーに参加した人たち皆が振り返っていた。港に泊まる船やクレーンも黄昏時の色に染まって重厚な味を出していた。コンスタンティン・シモノヴ号は夜の明かりを灯し始め夜を迎える準備は万端だった。
KROK映画祭ののれんが大々的に船のデッキから垂らされている。
旅も折り返し地点に来ていることを実感させる黄昏時。もの寂しさがすこし漂っていた。カレリア共和国はまた来てみたい。ペトロザヴォーツクの街を巡ってみたい。そんな思いをよそに、コンスタンティン・シモノヴ号はペトロザヴォーツクの港を出港した。この日の夜のご飯はおいしかった。
ここからロシアの首都モスクワへ向かって南へ下っていく。
ペトロザヴォーツクを発った船は夜の闇につつまれるオネガ湖を進む。
この日の夜は快晴のためか美しい星空と天の川に包まれていた。