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雑記:アップル信者の社長

 短期間ではありますが、かつて私は、ベトナムにある日系IT企業に勤務しておりました。その会社は中国地方を拠点とした日系企業で、ベトナム・ホーチミンにも支店を持っておりました。その会社の主軸として、ホスティングサービスという(レンタルサーバ、ホスティングとも呼ばれる)業態で、事業者が管理するデータセンター内に設置されたサーバをインターネット経由で貸し出すサービスを提供しておりました。
 ちなみに日本もベトナムも社長は一緒。なので定期的に日本へ行ったり来たりしておりました。

 私自身、かつてとある組織が保有する通信網のヘルプデスク業務に勤めていた経験からIT関係の知識をある程度もっているということで、当初は社長から好意的に受け取られておりました。
 また当時、ベトナム政府が「国内でWEBサービスを提供する企業(海外企業も含む)は、サーバ拠点を国内に置くこと。拠点を置かない企業には違反としてペナルティを課される(確かそのような法律でした)」とする法案が近日中に可決する情報を掴んでいたため、ベトナムに進出している海外企業(特に日系企業)からの受注が増大されることが予想されて、人員増員のために私を採用したそうです

 会社は小さく社長と私だけが日本人で、あとは現地人のプログラマ2人と会計係が1人という構成でした。
 面接時に、営業するというよりも、サービスを購入された顧客対応が業務の主だと伝えられました。そこで業務を経験してもらってから、のちにはさまざまな業務も任せると伝えられました。

 ですが実際は違いました。
 
 実際には新規顧客の開拓と営業が主となりました。

 これはどうしてかといえば、その法律が確かに可決はされましたが実際にはそこまで強制的な法律ではなく、予想していた新規の顧客がまったく来なかったのが原因でした。
 現地の水準に比べて高い給料を毎月支払わなければならなかったのは、社長にとっては痛手だったことでしょう。結局すでに日本人を雇ってしまったものの遊ばせるわけにはいかず、私は営業補助から営業へ「格上げ」されることとなりました。
 ただその社長の仕事のやり方が非常に面倒臭かったでした。
 基本的に行動すべて管理したい人間で、報告が遅れたり、意思疎通の齟齬が少しでもあると怒り出す性格でした。しかも厄介なことにベトナムと日本間を行ったり来たりするため、コミュニケーションが非常に取りずらい状態でした。
 そのため基本的にはチャットやメールでやり取りをしておりましたが、さらに厄介なことに彼が使うスマートフォンとノートパソコンは、アップル製品(しかも最新機種を使うのが彼のこだわり)。そのためデータによっては文字化けしたり、開けなかったりすることでした。

 基本的に会社内の端末はOSなどの規格は同じにするかと思います。

 しかし私や同僚の端末はWindowsとandroid製品。しかも会社名もどこだかわからない安物の中華端末という始末…。
 最新の機種で仕事する社長との格差を感じつつ、しぶしぶ会社向けの資料を作成したものの、社長から怒りの電話。いわく英数字の文字サイズが明らかに違っていて文書が崩れてしまっているとのこと。何度確認して、作り直しても状況が変わらず。そのうち気が付いたのは、社長が指定する「こだわりの」フォントがWindowsとIOSの間では変わってしまうということ。
 さんざん怒っていた手前、自分のフォント指定ミスだったのがバツが悪かったのか口調が柔和になり「まあ次から気をつけて資料をつくってね」というよく分からない返事をしてきました。
 ちなみに日本にいる社員さんとは定期的に連絡を取っていて、業務に関することは基本的に彼と取っていましたが、ベトナムの現場にいないことと、彼自身も多忙なために充分なサポートが受けられませんでした。

「社長はそんな人だから。うちらも諦めているんだよね、社長の性格」

 悩みを彼に打ち明けたら同情される始末でした。

 面接時に伝えられた仕事内容も変わり、重要な情報もなかなか共有されず、せっかくとった契約も何故か社長がしゃしゃり出て対応する。くだらない無駄話は延々とするくせに、仕事についての相談はまともに取り合わない、「俺のことを察して」仕事しろスタイル。そしてこのフォント事件を機に思いました。

マジでこの人の下で働けない

 そう感じたため使用期間が終了とともに辞職を伝えました。

 いまだにふと思うんです。

 IT企業のくせに社内の端末を統一されず、パワーポイントのフォント指定すら微妙って大丈夫か?あの会社。

 ちなみに社員から後に聞いた話だと、ベトナム支社は社長肝いりの事業だったものの、ホスティング事業は予想を下回る売上なのだそう。なので日本で受注した仕事を、現地人に制作させるオフショア開発がメインなのだそうです。
 きっと今もベトナムのどこかで社員たちを振り回しながら、あの社長はひとり気ままに仕事をしているのでしょう。最新のアップル製品を使いながら…。

 会社選びは慎重に。


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