海運業界のしくみ
海運業界の仕事
世間一般の認識としては船で物を運ぶ仕事というイメージがあると思います。普通にサラリーマンとして生きていく分にはそれで構いませんが、海運を投資対象として見た場合ではそれでは足りません。今回はより深い認識として海運業界がどのように成り立っているのか?分析していきたいと思います。
海運大手3社
日本国内において大手3社といえば日本郵船、商船三井、川崎汽船が挙げられます。下の図は売上高の推移になります。
参照 株式投資の銘柄発掘・銘柄探検サイト|株探(かぶたん)
2015年の通期決算時より下落傾向にあることが分かると思います。
また、下の図は大手3社の株価推移を表しています。青色が日本郵船、水色が商船三井、橙色が川崎汽船です。
(色を統一できなくて申し訳ないです、、、、)
参照 Trading View
これらから言いたいことは売上高と株価には相関関係があるということです。
では、売上の大部分は何によって左右されるのでしょうか?
売上の内訳
例として、日本の海運事業におけるリーディングカンパニーである日本郵船株式会社(以降は日本郵船と呼びます)を参考にします。2021年8月4日に公開された日本郵船の決算説明資料によると事業としては4つありまして、定期船事業、航空運送事業、物流事業、不定期専用船事業があります。
2022年3月期 第1四半期決算の時点で
参照 日本郵船株式会社 2022年3月期 第1四半期決算説明資料
でした。
経常損益とは純粋に本業のみで出た損益のことです。上の表を見てみるとトータルの経常損益の3分の2が定期船事業に含まれています。なので、この事業によって大部分の売上が左右されます。それだけ海運業にとって主要事業なのです。
日本郵船HPより定期船事業とはコンテナ船部門、ターミナル関連部門があり、コンテナ船部門で食料品や日用品、電化製品などさまざまなものをコンテナ船にて運び、ターミナル関連部門によりターミナル運営と荷役サービスなど船の運航をサポートする港湾関連サービスを行っています。
よって、コンテナ船の運航に関わる事業が売上の主要な部分に関わっていることが分かると思います。
コンテナ海上輸送の運賃
コンテナ船の運賃は日々変化しており、下の図のようになっています。
参照 公益財団法人 日本海事センター
これは日本→北米西海岸に向けたコンテナのサイズが40ftの場合のコンテナ船運賃推移になります。以前に乗せた大手3社の株価推移と比較すると
コンテナ船運賃と大手3社の株価は相関関係にあることが分かると思います。
収益のしくみ
大体の会社には保有資産があり、それに対するランニングコストは必ずかかってきます。そのランニングコストより収益が増えない限り、会社は純利益を出すことが出来ません。
純利益=(会社の利益)-(ランニングコスト)
しかし、ランニングコストは基本的に一定額なので、会社の利益が増えれば増える分だけ純利益が増えることになります。
海運業に当てはめるとコンテナ船の維持費であったり、事務所の家賃であったりがランニングコストに当たります。
下の図を見てください。
※自身で作成
2月と3月を比較すると売上は2倍になり、純利益は12倍となっています。
ここから分かることは純利益が出ている状態では売上が増えるたびに加速度的に純利益が増えていくということです。
海運業ではコンテナ船の運賃が変動するので、ある一定価格を越えたところから純利益が出始め、加速度的に増えていきます。
コンテナ船の運賃の決定要因
コンテナ船の運賃の決定要因としては3つ考えられます。1つ目が港湾の取扱能力、2つ目が船の輸送能力、3つ目がコンテナの供給量です。港湾の取り扱える能力以上の貨物が運び込まれれば需要があるということで運賃が上昇しますし、船は簡単に増やすことが出来ないので輸送能力以上の貨物があれば運賃は上昇します。コンテナ自体も世界各地に運ばれるのである一定地域で急に必要となった場合、コンテナ不足で運賃は上昇します。
参照 ヤマシタコンテナサービス
まとめ
海運業はコンテナ船の運賃の変動により多大な影響を受けます。運賃が上昇すれば、海運業を営む会社は純利益が加速度的に増え、株価にも影響が出てきます。その変化に対して鋭敏に反応するためにもコンテナ船の運賃の変動をチェックし、世界情勢についても詳しくなっておくことが大事になってくるのではないでしょうか?