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ACL損傷の基礎知識ー術式についてー
どーもです。
去年に「前十字靱帯(以下:ACL)の機能解剖」について書きましたが、今回はACL損傷の術式について書いていきます。
ACL損傷後の術式として、STG法とBTB法があります。
術式それぞれの特徴やメリット・デメリットを知ることで、理学療法を提供する際のリスク管理やリハ内容にも反映されてきます。
少しでも参考になれば幸いです。
ちなみに前回の記事はこちら↓
https://note.com/masa99/n/n95564f2bc447
術式について(STG法)
STG法は1重束再腱術と2重束再腱術があり、1重束に比べ2重束の方がACLの解剖学的走行に近く、前方安定性と回旋安定性に優れているとされています。
手術のイメージ画像は下記から↓
メリット・デメリットは以下になります。
このデメリットにあるST腱の筋力低下については、一般的に大腿四頭筋:ハムストリングスの筋力比(HQ比)=2:1といわれていますので、特に急性期での大腿四頭筋の収縮には注意していかないといけません。
なぜなら、ハムストリングスが弱くなると脛骨の前方移動を制御出来なくなるのでACLの再断裂につながる可能性にもなります。
ですので、OKC下(レッグエクステンションを例に)では大腿四頭筋収縮時の膝関節の角度がポイントとなります。
特に術後早期では膝関節の前方剪断力の増大を回避するために、膝関節伸展域ではなく、屈曲域(80°以上)での膝伸展exを行うと良いでしょう。
アプローチとしては下図のような感じです。
ISOMETRICS(等尺性収縮)に行うことで関節への負担も考慮しながら行えます。
術式について(BTB法)
BTB法は、膝蓋腱と脛骨の一部ごと膝蓋腱を採取し、再建靱帯を作成する方法です。
手術のイメージ画像はこちらから↓
メリット・デメリットは以下になります。
このデメリットにある腱採取部周辺の疼痛については、特に膝立てや深屈曲時にみられやすい印象です。
また痛みのほかにも、腱採取後の脂肪体が硬化しやすいためSTG法に比べて、ROM制限が生じやすくなります。
ですので、初期から膝蓋下脂肪体へのアプローチは大事になってきます。
まとめ
今回はACL損傷後の術式について書いていきました。
再腱術後は競技復帰までに約1年かかるといわれています。理由として、再腱靱帯の成熟期間の影響が大きく、靱帯化には約1年を要するとされているからです。
特に再腱術後早期は再腱靭帯が脆弱であることから、ACLの過負荷に注意した動作指導などが余儀なくされます。
上記のように、それぞれの術式のメリット・デメリットを把握した上で理学療法を提供していきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・引用文献
・林典雄ほか:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション(下肢)116-117, メジカルビュー社, 2014
・医療法人弘仁会三条整形外科スポーツクリニックHP