足背屈制限因子の1つ〜長母趾屈筋とは?〜
早いもので7月も終わりですね。
新人さんも少しずつ仕事にも慣れてきて余裕もでてきたのではないでしょうか?
ただ、慣れてきたときにインシデントやアクシデントを起こしてしまうこともあるため気をつけていきましょう!
今回はちょっとマニアック?ではありますが、長母趾屈筋(FHL)について書いていきます。
学生時代はまったく考えたこともなかった筋肉ですが、臨床にでると足関節を診る上で非常に大事な筋肉だなと痛感しています。
なぜ長母趾屈筋が大事な筋肉なのか?
3つのポイントで書いていきます。
長母趾屈筋(FHL)について
まずは簡単に解剖の復習を。
詳しいイメージは解剖の教科書などで確認してほしいのですが
起始:腓骨後面
停止:母趾末節骨底
神経:脛骨神経(L5〜S2)
作用:母趾の屈曲、足の底屈、内返し
となっています。
これに追加で、意外と知られていないのが
長母趾屈筋の収縮は、母趾だけでなく1-3趾を屈曲させることが大事になってきます。
さらに筋肉の大きさは
後脛骨筋>長母趾屈筋>長趾屈筋
となっています。
それほど足にとって母趾が重要だということです。
臨床との関連
臨床的に長母趾屈筋が関連することとして
などがあります。
わたしも特にギプス固定中での長母趾屈筋などの収縮は、上記の観点から足指の運動としてよく指導しています。
3つのポイント
前置きが長くなってしまいましたが
長母趾屈筋を語る上で大事な3つのポイントは
①足関節の背屈制限因子
②内側縦アーチを構成する筋肉
③歩行の蹴り出しに関与する
です。
1つずつみていきましょう。
①足関節の背屈制限因子
まずは背屈のバイオメカニクスですが
距骨の後方滑り・外旋、腓骨の開緋・挙上・内旋(内旋に関しては文献によって外旋と書いてあることもあり)となっています。
また背屈制限に関与する関節として
・距腿関節が約40%
・遠位脛緋関節が約60%
といった報告もあります3)。
長母趾屈筋は走行上距骨の後方を通る唯一の筋肉のため、短縮してしまうと距骨の後方滑りを阻害してしまいます。
さらにアキレス腱下脂肪体(Kager's Fat Pad)とも関与しているため、長母趾屈筋の収縮を促してKFPの滑走性を出すことで、背屈制限の改善につなげることもできます。
KFPについてのさらに詳しい内容はこちらをチェック↓
②内側縦アーチを構成する筋肉
内側縦アーチのトップには舟状骨がきます。
舟状骨を支えてアーチを形成している筋肉として、主に後脛骨筋・長母趾屈筋・長指屈筋・前脛骨筋があります。
その中でもとくに後脛骨筋の影響が大きいといわれていますが、長母趾屈筋も後方から支える筋肉として大事になってきます。
ちなみに内側縦アーチの低下がもたらす問題として、いわゆる扁平足があります。
これにより前足部に負担がかかり、外反母趾につながりやすくなります。
さらに歩行でいうと立脚中期の不安定性が問題になります。
③歩行の蹴り出しに関与する
歩行の蹴り出しに足趾が関与するのは周知のことですよね。
その中でも母趾への荷重は他の4趾の総和の倍以上が負荷される4)といわれ、母趾の固定は最も重要なものになります。
筋肉でいうと、長母趾屈筋や長趾屈筋が働くことで母趾を使った蹴り出しを可能にするわけです。
歩行時のCOPの軌跡などから考えても、他の4趾に比べて母趾が大きい理由がなんとなく分かりますね。
長母趾屈筋の筋力と可動域評価のポイント
簡単ですが、FHLの筋力と可動域を評価するうえでのポイントについて書いていきます。
・MP関節からしっかりと完全屈曲できるか
・背屈時に母趾が底屈しないかどうか
です。
意外と見落としがちなところでもあるので、長母趾屈筋の評価をする際は確認してみてください。
まとめ
本日は長母趾屈筋について書いていきました。
大事なポイントとして
①足関節の背屈制限因子
②内側縦アーチを構成する筋肉
③歩行の蹴り出しに関与する
があります。
長母趾屈筋は、足関節を診ていく上では非常に大事な筋肉となっていますので、今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考文献
1)小川ら:分担解剖学 総説・骨学・靭帯学・筋学.金原出版株式会社.p140,1950.
2)林典雄ら:運動療法のための機能解剖学的触診技術(下肢・体幹).メジカルビュー社.p210.2010
3)鶴田ほか:足関節背屈における可動域制限因子の検討(CiNii Research).理学療法学Supplement.1538-.2014
4)山口ら:結果の出せる整形外科理学療法 運動連鎖から全身をみる.メジカルビュー社.p184.2011
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