『浴衣』~JKの思い出はいま、創られている~
高2の娘が、仲良しグループ4人でのお泊まり会に行った。なんでも、まずは情緒のある町で浴衣を着て歩きたいのだそう。
普段なら出かける15分前に起きてくるのに、珍しく2時間前に起きてきて、ご飯も食べずにメイクを始めた。
朝からグループLINEで、携帯からは女の子の会話がひっきりなし。「なんか浴衣着たら靴が合わないんだけど」「メイクが変になっちゃった」「(泊まる家の子に)メイク落とし貸してくんない?」「すでにもう浴衣脱ぎたいから早く銭湯に行きたいんだけど」
そんな中、鼻唄を歌い出すわが娘…。
これは4人揃ったらかしましくなることだろう。
集合時間近くになっても、誰もおしゃべりをやめない。要するに、みんな支度に手間取っているのだ。
「あと1時間はかかるんだけど」「マジ間に合わない」
全員一致で時間が変更になった。
四日ほど前、娘が携帯を見ながら私に言った。
「ママ、これ可愛くない?」
見せられたのはネット通販の浴衣の写真。
「えー、おばさんみたいじゃない?」を連発する私に、「ママが見ると全部オバサンじゃん」
私の意見が当てにならないことを知った彼女は、選びに選んでそのうちのひとつをポチッとした。
自分のバイト代で購入するから、数日前から悩んでいたのだ。
「浴衣の到着予定日の時間指定したんだけど、当日の 8日から12時なんだよね」
友達との集合時間は11時だったはず…。
なにを呑気なことを言っているのか…。と思っていたが、類は友を呼ぶという言葉がある通り、どうやら似た者同士が集まっている様子。
そうして真昼の暑い日差しの中、彼女はやっとこバス停に行った。
夜はスーパー銭湯に行って、どこかで花火をしてご飯を食べて『常識の範囲内の時間』には、友達の家にたどり着く予定なんだとか。
果たして、そんなにうまい時間に友達の家に着きそうにはないように思うが、とにかく楽しそうに出かけて行った。
娘が「17歳の今が一番美しい時なんだよ、コロナでどこにも遊びに行けないとかマジあり得ないから」と言っていたのを思い出す。
世間では遊びに行くなど、感染拡大につながるからよくないという風潮がある。
でも、毎日満員電車に乗って通学している子供を見ていると、電車の中こそ危ないのではと思う。
ソーシャルディスタンスが保たれていないのは、電車ぐらいではないか?
飲食店も映画館も一席づつ空けている。
カラオケも一人カラオケなら空間を保てるだろう。
一番綺麗で楽しい年代の若者に、『どこにも遊びに行くな』というのは酷というものだ。
とにかく今日は私も、ゆっくり自分のペースで夜の時間を過ごそう。
彼女は友達との楽しい青春の1ページを刻んでいる。
女子高生の思い出は、いま、創られている。
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