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現代アート「My fair prisoners!?3」の星新一さんの調書とエッセイ※全文掲載
この方は、ショートショートで有名な先輩作家です。「ボッコちゃん」の作者です。星新一さんです。
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My Fair Prisoners!?調書
囚人番号:20171013230733
名前:試行魔
懲役:71年
服役した刑務所:東京府東京市本郷区
音楽:ベートーヴェン「田園」
映画:「モダンタイムス」チャップリン
本:哲学の本ならばなんでも。「火星年代記/レイ・ブラッドベリ」
罪:自分の本がいたずらのようなもの。
喜:初めて自分の本が書店に並んだ時。「狐のためいき」が本になった時。
怒:政治家
哀:本が売れなかったとき
楽:仲間との釣り
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「試行魔」さん
「試行魔」は、とにかく本の虫。本さえあれば、大人しくしていた。学校の勉強は好きだった。
特に算数と理科が好きで、何でもかんでも試す事が好きだった。その経験が、後の作品に活かされている。
戦争中は、とにかく勝てる訳がないと踏み、早く終わる事を祈っていた。戦後、やっと自由になると思い、仕事を作家にすると早い内から決めていた。
しかし、実家を継がなければならなくなり、作品を書き溜めていた。実家が他人に渡り、一安心した。これで自由に本が書けると思った。
作家・柴野拓美との時間は、掛けがえのない時間だった。ここで、ショートショートを書き始めた。千本くらい書いたが、納得出来たのは、1%くらい。多くの人に駄文を読ませてしまい、面目ない思いで一杯だった。 文章を書いている時間が、最上の時間だった。時を忘れて、とにかく書いた。自分でもよく書いたと思う。特に、「狐のためいき」が雑誌に載った時、そこに売っていた雑誌を全て買った記憶がある。本当に嬉しかった。
今は、生前散々本を書いたので、読書の毎日。講義もしょっちゅう受けていて、今までの自分の愚かさを想い知らされた。でも、多くの著名人と話す時間は、本当に言葉にならないくらいに嬉しい時間。そう「試行魔」ははにかみながら言った。(了)
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※この方も刑期を終えました。