【読書録104】致知2023年11月号「幸福の条件」感想
致知の感想をnoteに書いて、今回が26回目。ずっと続けていきたい習慣である。
今回の特集は「幸福の条件」。なんとも直球なタイトルであるが、登場する人々の深さ、そして実体験から導き出した考え方には共通点が多く勉強になる。
総リード 幸福の条件
「大学」の冒頭にある、人の上に立つ人間にとって三つの大事である三綱領を人が幸福に生きる道を説いているとして紹介する。
そして八木重吉の詩を紹介してこう言う。
幸福と快楽は、違う。
本号では、様々な人の「幸福の条件」が語られる。共通することは、真摯さの中に幸福はあり、他人のために尽くす中に幸福はあり、人との協力関係や支えの中に幸福はあり、ということであろう。
総リードでは、先達たちの幸福についての言葉を多く紹介してくれているが、その中から、私の心に響いた2つを紹介したい。
偉人たちの言葉は、真理なのであろう。私もこんな心境になれるようにしたい。
幸福な生き方と死に方
人間の生と死を見つめ続ける医師2人による対談には、感じ入る所が多かった。
お一人は、八十七歳の今も医療現場に立ち続けるホリスティック医学・第一人者の帯津医師、もうお一方は、ホスピス医とそて、四千名もの患者を看取ってきて、人財育成にも尽力する小澤医師である。
ホリスティック医学とは、体・心・命を一体と捉え、人間を丸ごと対象とする医学であるという。ホリスティック(Holistic)は、ギリシャ語のholosを語源とし、全体・関連・つながり・バランスという意味だという。
正直言って、私には、医学的なことはよくわからない。
ただ、帯津先生の「生と死を統合する」「患者さんに真に寄り添う」という考え方には、共感した。そんな考え方になった一つの契機が、僧侶から言われたこんなひと言だったという。
なかなか深いひと言である。そして、87歳になる帯津先生は、「人生の幸せは後半にあり」と言い、「アンチエイジング」ではなく、「ナイスエイジング」だと言う。
そんな生き方が、生と死の統合に繋がるという。
先日、ある読書会で、ユングの「今は人生の何時か?」ということについて話をした。あまり歳のことは考えず、一日一日を楽しく精いっぱい、やりたいことに取り組んでいけば、下り坂の午後は来ないのではないだろうか。そんな風に考えた。まだ50手前。午前中だと考えても良いのだ。永遠に下り坂の午後は来ない。それこそ「ナイスエイジング」と言えるのではないだろうか。
一方のホスピス医の小澤先生のお言葉も深みがあるものばかりである。
「一人称の幸せには限界がある」として、「自分がいることで誰かが喜んでくれる」ことこそ、一番の幸せであるとする。
終末医療に携わる中、死生観を押しつけないことが大切だとしてこういった。
「医師として、力が及ばす悔しい思いをしたケースが強く印象に残っている」としてこういう。
弱いからこそ、苦しみがあるからこそ、何が大切かがわかる。
私にとって、それほど重たい経験をしたことはないが、コロナになった時、子どもの手術のときなど苦しい時になって何が大切か、誰が大切か分かるものである。
死を間際にした患者さんから多くを学んだという小澤先生。
私にとって、何が大切か?もう答えが出ているのだと思う。
家族であり、好きな本を読むことであり、好きなライブを見に行くことであり。
対談の最後、お二人が語ることがまた良い。
小澤先生は、「幸福の条件」についてこう語る。
一方の帯津先生は、地球自身の自然治癒力がますます落ちてきているのを危惧していると言う。
身近なことから地球という大きなことまで、共通するのは、対談で引用されるアインシュタインの言葉だ。
自分の人生の意義を考えるのにとても役に立つ。結婚し、子どもを持ち育てる中で、私もようやくスタートに立てたような気がする。まだまだ人生これからだ。ナイスエイジングの心意気で、毎日過ごしたい。
企業繁栄への道
二人の企業経営者による対談記事。
一人は、関東で和食レストランを中心に直営八十四店舗を展開する坂東太郎の青谷会長。もう一人は、鶏肉の加工販売を手掛け、種鶏処理業界トップを走る鹿児島の南薩食鳥の徳満社長。二人には、致知出版社から著書を出しているということと、共に幸福創造企業を目指している会社を率いているという共通点がある。
そんな二人の対談記事は大変興味深い。
二人とも、一番大切にしているのは、「社員だと言う」。
青谷会長は、こういう。
「お客様を大切であるからと考えるからこその順番」だという。
社員を大切にすれば、この社長のために頑張ろうと思い、満たされた社員がお客様を大切にする。そして、お客様を喜ばせてくれる業者を大切にすることの重要性を言う。
一方の徳満社長も全く同感として、同社の「経営の心得」第六条を紹介する。
また両名とも、家族、特に奥さまの支えの大きさを語っているのが印象的である。
徳満社長は、
一方の青谷会長もこう応ずる。
私も家族の支えというのが一番大きく自分を支えてくれている。家族がなければ、私は私ではない。私の一番の柱である。
また徳満社長の以下の言葉にも非常に共感をもった。
私にとっては、家族と一緒にいることが幸福の源泉である。
転勤の時期になると、地方での勤務を打診されるが、転居をともなう転勤は断り続けよう。昇格や昇進よりも重要なことってある。自分の生活の基盤を失ってまで会社や仕事に縛られるのはナンセンスだと改めて強く思った。