【人材開発研究大全⑥】第8章 入社後の初期キャリアに対する就職活動の影響 高崎美佐
今回は、就職活動が、入社後の自分のキャリアにどのように影響するかの研究についてである。
私自身、もう30年近く前であるが、就職活動を通じて、ほぼはじめて企業や社会人というものと向き合い、また自分を知ることで大きく成長できたと思っている。
そのためか、本章を読んで、納得するところが多かった。
概要
従来、就職活動に関する研究と組織適応に関する研究は、そろぞれ独立して行われてきたとする。本章では、就職活動を通じてどのような変化が大学生に起こりうるか。またその変化によって入社後の初期キャリア形成にどのような影響があるのかを実証研究をまじえて検討している。
先行研究
就職活動とその後の組織適応に関連する研究の蓄積はあまり多くないとするが、いくつかを概観する。
また第9章の際にも紹介した、RJP研究(Realistic Jon Preview)についても紹介している。
就職活動を通じた変化
本章において、「就職活動を通じた変化」という概念が非常に重要になっている。具体的には、以下の通り定義する。
また2013年9月に東京大学社会科学研究所人材フォーラムプロジェクトで実施した就職活動に関する調査」で行った14項目の質問から「就職活動を通じた変化」についての3つの因子を採択している。
そして、本章では、「就職活動を通じた変化」についての実証研究を2つ紹介する
実証研究その1
(目的)
(仮説)
(方法)
(実証結果)
(わかったこと)
以下の①~④に示すような連鎖が起こる。
実証研究その2
(目的)
(概念的枠組み)
就職活動に関連する具体的な行動について、以下の3つの概念を活用。
就職活動の結果を把握する変数としては、以下の2つの概念を用いる。
初任配属職場での主体的な行動
(方法)
研究1と同様のデータを活用
(実証結果)
・自己探索、環境探索により、「就職活動を通じた変化」をもたらし、その結果、入社予定企業に対する満足度に影響を及ぼす
・入社予定企業に対する満足度や「就職活動を通じた変化」は入社後の「仕事への自信」に影響を及ぼす
(わかったこと)
従来の組織社会化研究では、新規大卒者は入社前・入社後にかかわらず組織によって適応させられる対象であったが、自らの就職活動や入社後の主体的な関係構築行動によって将来の職業的な成功につながる可能性が示唆された。
人材開発における「就職活動を通じた変化」
大学側のキャリア支援の視点および企業側の視点から以下の通り述べるが、両側の視点でももっともだなと思う。内定を得る、辞退を防止するという場当たり的な対応とせず、中長期的な視点から若者を支援を行うことが必要なのではなかろうか。
・大学教育、特にキャリア支援からの視点
・企業の採用・育成からの視点
大学生が自分の力だけで、「就職活動を通じた変化」を達成するのは難しいので、企業の側からの支援することも企業に取っても有益ではないかとする。具体的には以下の2点を挙げる。
感想
就職活動は、自己を見つめなおし、自分がどうなりたいか、どうありたいかを考える良い機会である。
なかなかうまくいかない事も多く、精神的に厳しい場面も多かったが、企業に入り、活躍するために必要なプロセスだと思う。大人の階段を登っていく感覚かな。
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