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ある日の猟の記録

朝9時半。狩猟仲間と合流し、仕掛けた罠の見回りに向かう。罠に獲物がかかっているのを発見する瞬間はテンションが上がる。自分の予測通りに動物が罠を踏み、捕獲できたときは、動物との知恵比べに勝った喜びを感じられるからだ。

今では、ICTを活用して罠が作動したことを知らせてくれる便利な機器もある。でも、自分の目で成果を確認する楽しみが減る気がして、猟全体を最新技術で行うことには少し躊躇している。

この日は、前日に竹林の斜面に仕掛けたくくり罠に若いメスの鹿がかかっていた。前足をうまく捉えている。仕留めた後は鮮度を保つため、すぐに解体しなければならない。狩猟仲間とこのあとの流れを打ち合わせしていると、突然電話が鳴った。今年狩猟免許を取得してわな猟を始めた女性の狩猟仲間からだった。


こちらを見る雌の鹿

「どうしました?」
『仕掛けた罠に鹿とイノシシがかかったんですが、どちらも大きくて…。イノシシは初めてなので止め刺しが不安で』

頼りにされるのはやっぱり嬉しい。自分の鹿の解体が終わったら向かうことを伝え、電話を切った。それを受けて鹿の解体を急ぐことに。

止め刺しを済ませた鹿を解体場所に運び、狩猟仲間と手際よく作業を進める。まずは「大バラシ」まで行い、切り分けた肉はペットシーツに包んで冷蔵庫で一晩寝かせる。その後、精肉して真空保存し、冷凍するのだ。

解体を終え、大バラシした肉とともに女性狩猟仲間の元へ向かう途中で再び連絡を取ると、彼女は配偶者とともに鹿を無事生け捕りにできたとのこと。あとはイノシシだけだ。急ぎ現場に向かうと、そこにはわなに前足をくくられ荒ぶるイノシシがいた。




イノシシと対峙する筆者

少しワイヤーが長く、動き回れる範囲が広い状態だった。イノシシの止め刺しは危険なので僕が行うことを伝え、慎重に獲物に近づく。ワイヤーの限界範囲を確認しながら、斜面の上から回り込むと、イノシシが猛ダッシュで突っ込んできた。斜面を駆け上がる分突進力は少し落ちるはずだが、それでも動きが速い。

イノシシがワイヤーで引き止められる瞬間を見極め、頭を殴打する。一撃で動きは止まらず、同じ動作を何度か繰り返した末、ようやく昏倒させることができた。汗だくになりながらも素早く止め刺しを終える。

数人がかりでイノシシを車に運び、女性の家で解体作業を行うことに。体重計で測ると、45キロあった。僕はこの後仕事があるためここで離脱することに。生け捕りにした鹿の処理も残っているので、まだまだ彼女らの猟は終わらない。健闘を祈りつつ現場を後にした。

気づけば夕方。朝から動きっぱなしで疲れたけれど、自分の猟も仲間の支援もできたことで、充実感が広がる。ただでさえ少ない猟仲間だから、これからも一緒に続けていけるよう力になりたいと思う。頼ってもらえた嬉しさを胸に、家路についた。

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