小説っぽい何か『禁止事項を破ろうかな』
ウマ年生まれだから、馬に乗ってはいけませんと親に禁止された。乗馬はいけません、馬に近寄ると蹴られて死んでしまいますよ。午年だからってそれはないんじゃない?だいたい、蹴られて死ぬのは、ひとの恋路を邪魔するヤツ限定では?よくわからない。
仕方がないので弓を射ることにした。
弓はいい。ぴんと張った弦を、とにかく力任せにむねのあたりでぐいぐいひっぱるのがいい。矢が当たろうがあたるまいがどうでもよかった。ぐいぐいぐいぐい。指を離すと一瞬で弦は元に戻る。またぐいぐいぐいぐいぐいぐいぐい。
先輩も顧問の先生も精神と弓と矢と的を一体にするとかなんと言うけれど、どうでもよかった。
ただ弦をぐいぐい引っ張って、引っ張って、引っ張りつづけて三年が過ぎ、飽きたので弓道はやめた。
馬はダメというのでバイクに跨った。でも本当は馬がいい。ぱからんぱからん揺れるのを膝と腰とで衝撃を消すのが、いいんだけどなあ。バイクはどこまでも滑らかで道路もどこまでも滑らかで、似ているけれどぜんぜん違うっぽい。まあバイクも好きだけど。
……だいたいさあ。干支でどうのこうのって言うのなら、ネズミ年のひとはネズミを徹底排除しなきゃいけないじゃん!丑年のひとは牛肉食べちゃダメなのか?寅年の人に限らず虎は人間を襲うだろうし、猪とか猿とかむしろどうやった接点生まれるのさ。午年だけ乗馬禁止とか意味がわからない。……龍とか、乗れるもんなら乗ってみたくない?そういえば「蛇を踏む」とかいう小説もあったっけ。巳年の人は迂闊に蛇も踏めない?
ジンギスカン鍋を食べ、犬を飼い、蛇のぬいぐるみを巻き付けながらウサギの耳を付けたところで乗馬禁止の慰めにはならなかった。
そんな半生であった。……両親ともとっくに死んじゃったし、蹴られ死ぬ覚悟で乗馬でも始めてみようかなあ。
(あとがき)
まあ、大昔の兵(つわもの)じゃぁあるまいに、乗馬必須ってご時世でもないのだから(それ言い出したら和弓だって必須じゃないが、だいたい馬に乗れるなんてそこそこの身分でないとね、そもそも)、まあ、どうでもいいかな。丑年の人は平安のお姫様であっても牛車禁止!だったのかねえ……なさそう(苦笑)。干支にパソコンとかスマホとか映画とかあったら、ずいぶんと面倒そう。インスタグラム年とか迂闊にインスタしてるとインスタに蹴られて死んじゃう、とか?(ないないない 苦笑) YouTube年生まれの人はYouTube禁止だな、うん(意味不明)。