いまこそ読もう興梠本
ということで、たまたま図書館から借りてきて手元にある本のご紹介。何度目だろう借りてきたの。古書でもいいから手に入れたいなーと思いつつ、いまだゲット出来ていない(まあ、安く買いたいってのと、通販でなく直接買いたいって思っている程度で、真面目にガンバってゲットしたいってことでもない。なんせ借りてこられるし)。
興梠一郎著 『現代中国 グローバル化の中で』 岩波新書 2002年。
「改革開放」政策で変化したチャイナ社会の中で噴出した諸問題について、描き出されています。ざっくりと目次。
序章 計画化から市場化へ
第1章 都市と農村の変貌
第2章 ゆらぐ秩序 -- 権力と暴力
第3章 高度成長のジレンマ
第4章 政府が直面する試練
終章 中国はどこへ向かうのか
今年に入って習近平が盛んに演説で言及する「共同富裕」が「改革開放」の揺り戻しであり、常に金欠な郷や村の行政予算不足の解消や都市部に流入する「農民口」対策などを見据えているんだろうな、ということが透けて見えます……習の思惑を探る(忖度?)には「ちょと前のこと」を知るのは大事だなあって気がします。
たとえば、「公共教育以外の民間教育禁止」って発令があったらしいけれど、その背景には農村から都市部へ出稼ぎに来た労働者が子を為し(しかも「一人っ子政策」の規制の外で複数人、産み育てることが出来たらしい)都市部で就学させる需要に応える公共でない私的な学校というものがあったという(31ページ「北京に約200校が存在」)。都市戸籍を持たず、出稼ぎで裕福になった農民口で稼ぎ労働者向けの高級な私学というのもあったらしい。営利教育禁止は、戸籍のあるところでしか就学出来ないままであるなら、「農民戸籍の人の子供は地元・農村へ帰れ」という意味になるだろう。
……また農村イジメ? 都市優遇? って気もするし、「改革開放」で崩れた「古き人々の紐帯の復活」で人気回復を図ろうという公算だろうか、という気もする。
そうはいっても(この数年、毛沢東のモノマネしてる習近平だけれど)「改革開放」以前の「計画経済」にチャイナ全体を逆戻りさせられるかどうかといえば、「改革開放」と「計画経済」の折衷であちこち折り合いつけた感じで国家運営していくより仕方ないんだろうな、って思います。……というようなことを考える縁(よすが)にはなるであろう、本です。
軽く20年前の本だけれど、いま振り返るように読むといろいろ面白い、と思います。紹介おしまい。おまけもなし。