便利の先にあるもの
不便益の便益
ご存知の方もいるかもしれませんが、これは京都大学の川上浩司教授が何年も前から提唱し、研究を重ねている分野です。
私は学者では無いので、学術的にどうこうということまでは理解していません。ただ、この考え方を初めて聞いた4~5年前には衝撃を受けたことを今でもハッキリ覚えています。
これを商品・サービスに意図的に取り入れることで得られる効果がある。便利であることだけが良いことではないなという気づきがありました。
そして、今だからこそ分かるのは、
不便益を取り入れることと「優しくないこと」は別物だということ。
ちょっと待って!不便益って、なんやの?
という方のために、簡単に説明しておきます。
世の中には、本当に「便利」なツールが溢れかえっていて、モノやサービスが飽和状態になっています。
例えば、高層階にアクセスする際に、当たり前に使用しているエスカレーターやエレベーター。
今では知らない人はいないと言えるほど、我々の生活において当たり前のものになっている。
もし仮に、あなたが10階建てのマンションに住んでいるとして、エレベーターが無かったら、、
少し考えただけでも「しんどそう」とか「毎朝大変そう」とかネガティブなものをたくさん思いつくことができると思う。
けれど、このエレベーターという”便利”なものがあることで失っているものもある。
失っているものとは何か?すぐに思いつくのは、10階までの階段を昇り降りすることで得られる足腰の健康やスリムな体型。
他にも、重い荷物を運んでいて、たまたま通り掛かったマンションの住人が「手伝いましょうか?」と声をかけてくれたことで新たな友人が生まれるチャンスなんかもあると思う。
この”便利であることによって失われるもの”つまり、”不便だからこそ得ることが出来るもの”が、冒頭の不便益の便益と言われるものです。
京都大学では、この不便益の便益を商品化した「素数定規」なるものが販売されていて、大学訪問の定番お土産としての地位を獲得するなど、大ヒットしたという話もあります。
現在、コロナ第3波真っ只中で、ウィズコロナを想定した様々な便利ツールが開発・ローンチされていますが、便利になればなるほど代償として、失われていっているものがあるということは我々も認識しておく必要があると思う。
わかりやすいのが、Zoomミーティング。
確かに移動時間の無駄がなくなり、時間の使用効率が上がったとは思います。けれど、特に初めましての方と打ち合わせをする際、面と向かって話す場合と、オンラインで話す場合とのどちらが相手の信用を得やすいか?
少なくとも私は、直接お会いしてその方が持っている雰囲気だったり温度感みたいなものだったり、顔以外の部分に現れる反応だったりといった小さな画面の中だけでは伝えきれないたくさんの要素を複合的に”感じる”方が、信用できるかどうかの判断を誤らずにできる。
#何様ですか
#あくまでも個人の感想です
こう聞いてしまうと、自分はオンラインでも十分に信頼関係を築ける。とおっしゃられる方もいるかもしれません。
それならそれでも良いんです。私は能力不足の凡人なので、難しいなと思っています。
#凡人だけど変態
けれど、そのような方にも一つだけ認識しておいていただきたいのは、「信頼関係」を築く際の話なので、自分がどうかという話だけではなく、相手側がどう思っているかも大切ですよねという視点。
そんなことは分かってる!
という方も多いと思いますので、”相手視点”を持つことができていてオンラインで信頼関係が築けるというスーパーマンの方は尊敬します。
話を戻しますが、Zoomを使用しないことによる不便益はほかにもあります。例えば、移動時間中にたまたま出会って、仲良くなる方との出会い、遠方の方との打ち合わせでたまたま訪れた最高に美味しいお店との出会い、街の景観が変化していることへの気づきなどなど、あげればキリがないです。
こういった全ての便益を代償として支払うことで、オンラインミーティングが成り立っていて、移動時間を含む「時間」を買っているということ。
これから先、良くも悪くも働き方に対する考え方は大きく変化し、個人の思想も多様化し続けていくということは、多くの皆さんが口を揃えて伝えているので、もうわかっていると思います。
そんな状況の中では、これまで以上に”便利”なものが生まれ続けていくことは間違いありません。「みんなが使っているから」「使っていないとダサいから」など、安直な理由で使い始めるツールもあってもいいと思います。
けれど、たまーにでいいので、立ち止まって「不便益」という話があったなと思い出して、『このツールを選択することで失われるものは何か』を考えて頂けたらきっと『便利の先にあるもの』がこれまで以上に意味を持ったものになっていくんじゃないかと思います。
ということで本日のまとめ
・不便益の便益という考え方について
・便利になる中で失われているもの
・便利の先にあるものに意味を持たせる
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