お取寄せ彼氏
◾︎フリー台本
◾︎登場人物(女性1人、男性1人)
◾︎アドリブ歓迎
◾︎使用許可不要
【部屋の玄関で仁王立ちしてる女性。1人でブツブツ言っている】
最初に言っておくけど私はそれなりに
見た目は悪くない
自分で言うのも変だけど、いわゆる美人だと良く言われる
すっぴんで鏡を見ても整った顔だなぁと思うし
化粧して街を歩けば、異性の視線は良く感じる。勿論、声かけられることも多いし
営業職なのでお客様から食事に誘われる事も多い。
笑顔を常にキープする様に心掛けているので
同性の女性からも好かれる
なんなら、天然と言われて可愛がられたりもする。
後輩からは憧れてます。とも言われる。
特に家族環境も問題も無く
持病も特にない。。。花粉症くらいかな?
そうなの!
そんな私が!何を思ったのか
「お取寄せグルメ」ならぬ「お取寄せ彼氏」を
利用してしまった。
なぜなら、友達がやってみなよー。と。
別に風俗とかじゃなくて、ただ、話をしたり一緒に食事をするだけだから。
考えてもみて、普通の男とそんなことしたら
あとあとめんどくさいでしょ?
変な男から言い寄られたり
ハッキリ断ったらなんか怖いし、、
でも、たまに男性と話したくなったり
する時ってあるじゃない?
そんな時にとても良いサービスだと思うの!
是非、1回でいいから使ってみてよ!
ほら、初回無料クーポンもあるし。
……と、いうわけで
私は玄関で立ちながら待っているのだ。
もう、、どうしようどうしよう
やっぱり知らない人を家に居れるとか
なんだか怖い、、けど
色々調べても、利用した後に問題になってない企業みたいだし
国への申請も通ってるみたいだし、、
でもでも、もし、変な事に発展したら、、
最近、そーゆうの無かったし、、
どうしようどうしよう
きゃ!!!よ、、呼び鈴が!!
は、はい。どうぞ。
いま、開けますね。
【お取寄せ彼氏登場】
🚹「はじめまして。九個の島とかいて九島と申します。本日担当させていただきます。不都合があったら気兼ねせず仰ってください」
……あ、はい、よろしくお願いします
🚹「素敵な方で良かった✨」
え、、く、、く、、久島(くしま)さんですね。よろしくお願いします。私は山本と言います。
(偽名だけど、、え、でもなんか普通のおじ、、さん??もっとホスト的な人が来るのかと思ってた、、、、)
🚹「では、失礼させて頂きます」
あ、はい。どうぞどうぞ。
こちらです
(うわー、リビングに入れてしまった!)
🚹「とても陽射しが柔らかくて、いい日ですね。リビングもシンプルで素敵です。では、まずは自己紹介から。私、九島は創業当時からこの仕事させて頂いております。
もしかしたら、山本様のお好みでは無いかもですが、お話やお食事を共に過ごせるのを楽しみにしてます」
あ、いえいえ、そんなそんな。
正直、とても普通で和やかな方で安心しました。
じゃあもう5年もお取寄せ彼氏してるんですね?
そんなに前からあったんですねぇ
🚹意外と需要はあったみたいで、私どもも驚いております。ところで山本様はどの辺の出身なんですか?
え?あの、、私は北海道の札幌なんです
🚹札幌ですかー!もしかしたら、、豊平区とか南区とか?
え!南区ですー!もしかして九島さんも??
🚹ふふ、かもしれませんね。南区ってとても広くて、定山渓も南区らしいですよね。
東京だと、東京23区がすっぽり全部入るくらいの広さらしいですよ。
え!そーなんですかー!確かに広いですもんね
🚹「高校で1週間分の体育まとめて、スキーとかしませんでした?何故か中学では」
歩くスキー!!あれ、良く分からないですよねー!滑らせて欲しいのに!ただ、みんなで歩くっていうw
🚹そうそう、まあまあ疲れるんですよね。あと、スキー終わりで靴履き替えると、違和感凄いとか。
あ!分かりますー!!あと甘いものが欲しくなる!!
🚹「はははは!それは、女子だけじゃないのかなぁ」
えーそんなことないですよ!カバンに毎日お菓子持っていってみんなで味見会とか楽しかったなぁ〜
🚹「あ、そうだ。新しいお菓子少し持ってきてたんだ。ちょっと食べてみます?」
えー!やばい!ホントに!!?あ、じゃあ私お茶入れますね!
🚹「ありがとう」
え、え、、え、、あ、はい
(なんだろう、あの笑顔、、、照れる、)
🚹「でも、こんな年になってお菓子好きなのが早くもバレてしまいましたね」
えー、良いと思いますよ!だって美味しいモノ食べると幸せだもの。
さ、どうぞ。粗茶ですが。
🚹「ありがとう。では、頂きますね」
どうぞどうぞ
🚹「ふー。美味しい。緊張も取れてきたかもしれません」
え?だってもうベテランさんですよね?
緊張とかするんですか?
🚹「いや、まさか、こんなに素敵な方から呼ばれるなんて想定してなくて。さっきから私、緊張しっぱなしですよ」
ふふ、やっぱり上手ですね
みんなに言ってるんでしょうけど
嬉しいものは嬉しいです。
🚹「ふふ、よく言われますが、僕はあまり嘘とかは付けなくてだから駄目なんでしょうね」
え?私、九島さんで良かったですよ。
話しやすいし、楽しい。
あと、お菓子食べれるし♡
🚹「結局お菓子なんですねwあ、このチョコレート新作みたいですよ」
えー!美味しそう!頂きまーす!
うん!やだこれ、美味しい!ちょっとブランデー入ってるのかな?
🚹「あまり食べ過ぎないようにね」
大丈夫ですー。
この後美味しい食事が待ってるんですもんね?
🚹「一生懸命作らさせてもらうね。」
ふふ、なんだかこんな風に
和やかな時間過ごすの久しぶり。。というか
男性とこんな感じで過ごせるのって
初めてかも
🚹「今までは、、、あまり気が休めないお付き合いの仕方だったんですか?」
そうですね。。なんだか、仕事忙しい人とばかり付き合って来たからかもだけど
いつも仕事の愚痴とか、不満とか、たまに時間作って旅行にでも。とか思っても
仕事忙しくなってキャンセルして
それで、、、喧嘩とか?
私もなんだか、愛されてないのかなとか
不安で試すような事言ってしまったり
ダメよね
恋愛は不器用なのかも
🚹「山本様は笑顔が素敵だと思うよ。悩んだり困ったりしてるより、ホントの笑顔で居たらとても愛おしく感じるよ」
え?
(え?え?なんて??)
🚹「ほら、チョコレート食べて笑ってて。ほら、あーん」
え?あ、あーん。ぱくっ。
(きゃー!あーんで口に入れてくれて、
頭ポンポンされたー!!え!?え!?何このドキドキは!!)
🚹「好きとか、愛してるとか、もっと普通に言えたらいいけど、ホントに思ってるから言えなくて、素直になれなくて喧嘩みたいになってしまうことあるよね。うん。わかるよ」
あ、ありがとう
(ドキドキしている、、私、ひょっとしてチョロいのかしら。いや、この人の笑顔。この人の話し方、声がドンピシャなんだよね、、これは、やばいやばい。)
🚹「あの」
ひゃ!!ひゃい!!??
🚹「ふふ、なんて声をw。調理器具少し借りますね。お菓子も程々に。」
あ、私、手伝いますよ
🚹「では、2人並んで料理しましょうか。」
はい///
🚹「夫婦みたいに見えるかな?」
え!!え!!なにを!!
🚹「ははは、では」
【2人で料理を作り、テーブルに並べ、少しだけアルコールの入ったスパークリングワインを呑み、お互いのこと、仕事のこと、恋愛観のこと。2人は話すことに困らなかった】
🚹「あ、こんな時間だ」
え?あ、そっか、、、。
🚹「あのね」
うん?
🚹「キミにはとても素敵な人が現れると思うんだよね。」
……そうかな?
🚹「うん、そうだよ。きっと。うん。幸せになって欲しいなあ」
藤原美嘉なの。私。
🚹「え?山本じゃなくて?」
うん。九島さんは本当はなんてお名前?
🚹「えー、、、と、、うん。島田裕二だよ。」
裕二さん。お願い。一度だけ。一度だけ、美嘉って呼んで
🚹「……うん。分かった……うん。いいよ。……じゃあ、、、、、、美嘉」
……うん。裕二さん。ありがとう。
じゃあ、素直になって言うね。
私は裕二さんの事を、まだ好きかどうか分からないけど
裕二さんといると誰よりも楽しいし
心が落ち着くの。
🚹「うん。ボクもだよ。美嘉」
ありがとう
🚹「うん、ありがとう」
うん。……じゃあ……ね
🚹「……うん。……うん。それじゃ。」
……そう言って裕二さんは、出ていった。
私はおそらく
裕二さんに恋してたのだろう。
おじさんなのに。ヘラヘラしてるおじさんなのに。なんで、あんなに素敵な人と
こんな感じの出逢い方をしてしまったんだろう。
もっと、違う形で、例えば仕事の取引先で。
例えば友達の紹介で。
そんな出逢いをしたかった。
だってこのお取寄せ彼氏のシステムじゃ
好きになっちゃダメなんだもの。
裕二さんにとっては、沢山いるただの客の1人で、しかも、私はただのお試しの逆。
裕二さんが特別なんだと思っているのは
私だけ。
言葉にしなくて良かった。
口に出したら止まらなくなるから。。
いつも大事な言葉を伝えられない。
「大好き」なのに。
(泣き崩れる美嘉)
【ガチャと玄関が開く】
え、、、?裕二さん?、、、??
裕二「……美嘉。私……いや、俺、お取寄せ彼氏やめてきたよ。」
え??
裕二「美嘉。君を好きになってしまった。嫌なら不都合なら断ってくれても大丈夫。君とずっと幸せな日々を送りたい。」
裕二さん……。嬉しい。
ねぇ、そうだ。札幌のテレビ塔、久しぶりに登りに行きたいなーって思ってたの。
付き合ってくれるかな?
あそこの展望台の台が私、好きなの!!
だ、だ、、、、だいすき、、、なの
おしまい