お取り寄せ彼女のご利用ありがとうございます
◾︎フリー朗読台本
◾︎1人用男性用
◾︎アドリブ歓迎
◾︎使用許可不要
とんでもない時代になったものだ
ボクはいま、お取り寄せ彼女が届く時間を
待っている
いや、滑舌のせいじゃなく
ボクはいま、お取り寄せ「彼女」が届くのを!
「彼女」が届くのを待っている
そう、彼氏彼女もお取り寄せ出来る時代なのだ。
今日、お取り寄せしたのは北海道の田舎出身の彼女。
ここまで聞いて、社会の波にのまれて過ごしてきた方々は、なんだ、そーゆうサービスか。とお思いでしょう。
うん。よこしまです。漢字で書くと邪でございます。
いや、ボクも最初はそう思ったのだけど。
ここのお取り寄せ彼女は手を出すのは一切禁止。ただ、その彼女と過ごし、話しをしてもらうだけらしい。
サービス料、出張交通費も全て
ボクもちなのだが、お金では買えないものがこの世にはあるのだ。
ピンポーン!!きたきた!!はーい!!
なんということだ
透き通る白い肌、黒髪ボブで丸メガネ。
基本的に微笑んでいるその姿
くそ!天使かよ!
え?あ、うん。大丈夫ですよ。
お取り寄せ彼女。「穂乃香」と名乗った
その子はキッチンを借りたいと。
持参のエプロンを付けて
お湯を沸かす穂乃香さん
穂乃香さんはその後
お茶を入れてくれて、色んな話をしてくれた。
雪国ならではの話や動物、エゾシカやキタキツネの話。
少しだけ訛りがある穂乃香さん
身振り手振りが少し大きな穂乃香さん
そんなに高い声ではないが透明感のある声。
メガネがずり落ちてくるのを
時々、くいっと直す穂乃香さん。
笑う時、口元を抑える穂乃香さん。
ああ、そうだ。そうなんだ。
ボクはすっかり穂乃香さんに魅入られてしまった。
男というのはなんて単純なのだろうか。
ということで
帰る前に「お取り寄せ定期便」に加入したのだ。
二週間に一度、穂乃香さんに会えるなら
まあまあなケタの金額がかかっても
安いものだ。
そして、その一ヶ月後、穂乃香さんに会える
前の日
お取り寄せ彼氏彼女を運営する会社から
連絡があったのだ。
要件は穂乃香さんは引退。
理由をしつこく聞いたのだが、教えてはくれなかった。
ボクの心にはポッカリと大きな穴が開き
運営さんにこの様に告げた
あの、、オススメな彼女いますか?
おしまい