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ラスベガス

サンフランシスコからラスベガスまで、バスで14時間かかります。時間の感覚がおかしくなってきたので、24時間以内の移動は早いなと感じるようになりました。

いつもなら、バス停に到着したら宿を当てもなく探しますが、今回は違います。ネットで調べてきました。ラスベガスには安宿らしきものが2つほどあり、一つはネットの状況を見ていると満員だったので、もう一つの空いてるほうを目指します。

金曜日で観光客がピークに達するらしく、宿もフルになったり高くなったりするらしいので、バス停から予約しようかなと思ったけど、僕の語学力だと電話代がもったいない気がして躊躇します。とりあえず、歩いて行ってみます。

歩いて、45分ほどして、安宿に到着します。「部屋はあります?」と聞くと、両方に鼻ピアスをあけた大柄な白人のお兄さんは「予約はしてるのかな?」と聞いてきます。なんか、まずい予感です。「いや、してない」と、僕が言うと申し訳ない顔で「ごめんよ。2時間前にいっぱいになってしまったんだ」と、鼻ピ兄さん。「マジっすか」と自分につぶやきます。

「わかった。ちょっと座っていい?」と、聞くと「もちろん、もちろん」と、片手にフライパンを持ちながら勧めてくれます。彼がご飯を作ろうとしてる所に、僕が強引に話して来たから、そんな格好になっています。「安宿は他にないかな?」と聞くと、ネットで満員になった宿を紹介してくれました。「わかった、ありがとう」と、笑顔でそこを出て「さて、どうするかな」と自分に話しかけます。近くに公衆電話があるので、ダメもとでその安宿に電話します。

スタッフ「ハロー」

僕「ハロー、私は泊まりたい。あなたのホテルに」

スタッフ「今はどこにいるの?、グレハンのバス停かな?」

僕「ノー。ラスベガスブルーバード12ストリート。部屋はある?」

スタッフ「大丈夫だよ。君のIDを教えてもらえないかな? (と、聞こえたから、一生懸命にパスポート番号を2回も言ったら) わかった、とりあえず来て」と言われました。

とりあえず、その宿に向かってみます。途中から荒廃した景色が、目の前いっぱいに広がり、その景色は宿まで続きます。安宿の周りは、いつもこんな環境の所ばかり。

宿のお兄さんは気さくな人で、さっきのボコボコな英会話の電話相手が僕だと分かると、すこし笑っていました。6人用のドミトリーを紹介され、行ってみると、僕しかいませんでした。満員とは、なんだったんだ。相変わらず、わからないことが多いです。

次の日、ラスベガスの繁華街に繰り出します。ホテルが一つ一つ個性的に作られていて、自由の女神もあれば、歴史をみじんも感じさせないスフィンクスもあります。

お昼は豪勢にハードロックカフェに行きました。ジューシーなハンバーグをぱくついて、コークをゴクゴク飲みます。だいぶ、アメリカンな食事にも慣れてきました。僕の受け持ちのお姉さんはやたらと、コークのおかわりをもってきてくれます。支払いの時におつりをもらって、そこからチップをあげるつもりだったけど「おつりは全部もらっていい?」と、笑顔で言われ「う、うん」としか言えませんでした。早く「NO」と言える日本人になりたいです。

明日はグランドキャニオンの日帰りツアーなので、早めに宿に戻ります。宿に戻ると、ドミトリー部屋には、日産の外国人社長みたいな顔したニュージーランド人がいました。挨拶だけして、あとはお互いに干渉しない感じです。

夜中、韓国人のお兄さんもドミトリーに入ってきて話を聞くと、飛行機が遅れたからこの宿に移動させられたらしいです。「そうか、たいへんだね」と言って、明日、早いからさっさと寝に戻る僕。深夜なのか早朝なのか、微妙な感じの4時頃に目が覚めます。なんか、物音がしました。周りを見ると、日産の社長が女の子を連れ込んでいました。そして、ベットの中で2人、もぞもぞしています。

「なんだ、なんだ。車検でもしているのか?」と、さすがにそんなことは思わない。軽く、吐息も聞こえてきます。韓国人のお兄さんも気付いたらしく、寝返りをうっています。日韓チームかなり困惑です。

外人だから派手な音でもたてるのかと勝手な先入観がありましたが、地味にやり始めました。なんか、それにむかついて目覚まし時計を、少し早めにセットします。たぶん、彼らが最高潮の時に「ピピピ、ピッピッピッ」と、僕のアラームが鳴り始め、なにくわぬ顔で身支度をはじめました。彼らを見ると、まさかの寝たふりでした。さすがに人前ではやらないみたいです。「もしかしたら」と、少しだけ思ったのですが。

そんな目覚めで、グランドキャニオンに出発します。

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