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おひとりさま入院記(グルグル七転八倒篇)1日目

これは至って健康、元気に過ごしていたおひとりさまに起きた、まさに青天の霹靂の病と慎ましやかな入院生活の日記です。

コトは11/4水曜日の早朝に起きた。
朝いつもの時間6時に目を覚ますとベッドの上で天井がグルグルと回っている。かなり驚き、ベッド横にある本棚に目を向けても同じくグルグル回っている。とにかく今までに経験した事のない回転だったので、すぐに自分が出勤できない状況であることはわかり、上司に現状と今日仕事を休む旨を連絡した。

その次は間違いなく病院に行かなければならない事はわかっているが、ベッドから起き上がってもとにかくすごい勢いで世界が回り続けていて頭が持っていかれて立っていられない。
例えるなら「ひとり震度5」状態だ。
実際には地震が起きてないことは頭で理解できるものの、自分にだけは周囲の世界が揺れに揺れて、目が回って立っていられない。

落ち着けワタシ、わたし落ち着け。
まずは病院を調べよう。
ネットを見る限りでは回転性めまいの場合は脳神経外科、もしくは耳鼻科へとあったので、事態は深刻なので脳神経外科に行くことにする。
ただ、こんなに切迫した状況なので、下手な病院には行けないと思い、グーグルマップで自宅近くの脳神経外科を検索、3つあった病院の口コミと外観写真をザッと見て一番良いと感じた病院、東急大井町線の荏原町駅前にある、もり脳神経外科クリニックに行くことに決めた。
自宅からたった二駅、定期圏内ではあるものの、とても電車に乗れる状況ではない。しかもずっと震度5の中にいるので揺れに酔ってしまい吐き気もすごい。とりあえずいったん吐いてスッキリしてからタクシーを呼ぶことにした。

昼過ぎに嘔吐は済んだのでタクシーを呼び出し病院へ。
タクシーの座席でも真っ直ぐ座っていられない。
とにかくひとり震度5の中、自分が振り落とされないよう、左上にある取っ手を左手で掴んだ。身体は力が入らないので右方向へダランとしている。何故か取っ手の形が電車の吊り革のような丸い形状だったため、まるで美術の授業で見た西洋絵画の中の磔つけにされているキリストの横にいる群衆の1人のような形状になっていた。今思えば、運転手さんがバックミラーで見た私の形はさぞかし滑稽だったろうと思う。

タクシーは現地についたものの、ここでも悲劇は起きた。
クリニックの前が一方通行の道で、近くの交差点までとなってしまった。体感として交差点からクリニックまではたった数10メートルだが、歩いて進むことが出来ず(大袈裟でもなんでもなくひとり震度5なのだから、普通に立って歩こうとすると身体が勝手にマトリックスみたいになり、頭から地面に行きそうになるのだ)、とりあえず頭を打たないように何とかクリニックにたどり着くまで、しゃがんで、地面を見ながらほぼ這うようにして進んだ。その道は商店街なので人出はあったが、謎の女性が石ころのような形で道を横断しても、特に声をかける人はいなかった。さすが東京砂漠。いや、自分でも声かけられないか、奇妙すぎて。遠巻きで見守るかも…
助けてくれる人がいなくてもとにかくクリニックには着かないと行けないのでここは必死だ。変な人だと思われてもいい、とにかく吐き気をガマンしながら前進あるのみ。

エレベーターに乗った時の手すりがある事への喜びは忘れ難い。つかまれる場所があるって素晴らしい。
エレベーターが開いて目の前のクリニックに入るも、受付の椅子にも座ってられない状況で入口の床に座っていた私に受付の方が気づいて看護師さんを呼んでくれて、奥にあるベッドに案内してもらった。
揺れは続くもののベッドに横たわれば転倒回避をしなくて済むで、まずはひと安心。ただ、吐き気はすごい。
ベッドに横たえながら診察の順番を待つ間、私を案内してくれたガンバレルーヤのまひるちゃん似の看護師さんがとても良くしてくれて、何も終わってないのにもう涙が出そうになった。温かいお声掛け、親身な対応、手を握ったりさすったり。やまない激震の中あらわれた神様に見えた。きっとこういう行為を本当の手当てというのだろう。
まーちゃんありがとう。元気になったらお礼状書きます。

ベッドで待つ間、また嘔吐しながらもようやく診察の順番がまわってきた。先生は伊原剛志にインテリジェンスを加えたようなロマンスグレータイプ。声は低いが息多めで優しさが伝わる。簡単な検査をされたがその段階では異常は見られずMRIをすすめられた。本来なら今日予約いっぱいで本日中のMRIは取れないけど、あなた辛そうだから2時半で良ければ今日やりますよと言ってくれた。
閉所恐怖症なので出来れば避けたいが、そんな事を言ってられる状況ではないのは自分が一番わかってるので、お願いしますと即答した。先のマリア看護師まーちゃんが「狭いところとか大丈夫ですか?」と聞いてくれたので(さすが神だよ!)、すかさず「本当は大丈夫じゃないです」と息も絶え絶えに伝えたところ、そしたらボーッとするお薬打ちますね、と言ってくれたので少し安心できた。

ただ実際MRIをしたときに、何も注射などは打たれず、投薬もされなかったので、あの一連の流れの中でいつどうやって私をボーッとさせたのかの方法が未だにわからない。音はガンガン聞こえていたし、ただもうひたすら具合が悪いのでずっと目を瞑って固定された身体が前後に動いていたという記憶しかない。なんかガスとかだったのかな?それともボーッとする薬と聞かせる事で心理的にだけ安心させるテクニックだったのかな?今となっては確かめようもないけど。

MRIの検査結果も異常は見られなかったので、めまい薬を処方されて帰されることになった。ああ、またあの石ころ女の修行が待ってるのかと気が重くなったが、脳には異常無いといわれてるので帰るしかない。またタクシーを呼んでもらって自宅へ戻る。

自宅に戻ったところで今週末旅行へ一緒に行くはずだった友人達にラインし、ひょっとしたら行けないかも、の状況を伝える。そしてコンビニにも行けないので、仕事帰りだった友達にウイダーinゼリーや飲むヨーグルトの差入れを頼んだ。(本当にありがとう!助かりました(T_T))
ウイダーinゼリーすら半分も飲めないまま処方されためまい薬を飲んで、今日はもう寝ることにした。

まだこの時点では、薬を飲んで寝たら治るかもとの希望的観測もない訳ではなかったが、直感的に旅行には行けなさそうなことは自分でわかったので、泣く泣く友達にキャンセルを申し出た。
今年初めての一泊旅、2年ぶりの河口湖を楽しみにしてきただけに悲しかったが、こればっかりはどうしようもない。残念だがまずは目の前のめまいの解消に集中しようと決めて床についた。まだ揺れは激しく続いている。
    ーこれにて1日目終了、2日目へ続くー

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