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【読書感想文】《エリザベス女王の事件簿》〜女王陛下は自らも事件を解決されていた!?
国民のみならず、全世界から愛されていたのではないか?な、イギリスの女王エリザベスII世陛下。
007とパラシュートで降下してみたり、クマのぬいぐるみのパディントンとマーマレードサンドウィッチでお茶をしたり。
そんなエリザベス女王は殺人事件も解決していた?というミステリーシリーズ。
もちろん【架空の事件】。
☆☆☆☆☆
ウィンザー城で過ごす女王陛下の顔見知りの兵士が、乗馬中の事故で亡くなった。
乗馬の熟練者だった被害者。
女王陛下自身も走るコースで起きた事件に、疑問を抱いて...。
もちろんご自身で、木に登ったり聞き込みをなさる訳にはいかず、公務スケジュールも既に超過密。
そこで元軍人である秘書官補が、陛下の意向を受けて調査に動き出す。
【いたいけな世間知らずの老婦人】という周囲の高官の思いこみを心中で呆れながらも、的確な推理と秘書官補への指示を積み重ねて事件を解決に導くのだが、ご自身で解決したと公言すると差し障りも生じる事まで織り込み済み。
高官たちから報告を受けて『おやまあ、そんな事だったの?みなさんの尽力で事件が解決できて本当に良かった。さすがですね。』と高官たちのプライドをくすぐり【いたいけな世間知らずの老婦人】としての虚像も守り続ける見事さ。
推理の間に挟まれる、エリザベス女王の人となりや公務の数々、王室メンバーの発言や行動がとても細かく、どれほどの調査に基づいて執筆されたのだろうと感じる。
《王室オタク》と言ってもいい、著者の女王陛下への愛情と尊敬が溢れている。
☆☆☆☆☆
そしてシリーズ第二作がこちら。
バッキンガム宮殿で起きた、少しスキャンダラスな殺人事件。
『こんなスキャンダラスなことは陛下のお耳汚しになる』と大きなお世話の高官たちが穏便に忖度しまくって女王陛下に報告をするが、女王陛下はそんな高官たちのプライドを砕くことなく、秘書官補の行動とご自身の経験と知識を併せて、事件を解決なさる。
夫君フィリップ殿下とのやり取りが、架空とはいえ長い時を一緒に過ごしてきた夫婦らしい。
また『こんなに忙しいの!?』な毎日の公務。
その度に適切なお召し替えと化粧直しをなさり、その合間に事件の推理も。
愛犬を涙で見送り、配下への濃やかな目配りを忘れず、そして王室の将来を見据えながらの日々は、【いたいけな世間知らずの老婦人】ではやっていけない。
ということを、男性の高官たちは実は知ろうともしていない、というところも私としては笑えるし、著者もそう思っての描写だと推測してる。
☆☆☆☆☆
フィリップ殿下も、そしてエリザベス女王も亡くなり、チャールズ国王となっている現在のイギリス王室だが、このシリーズは続くのだろうか?
それとも《チャールズ国王の事件簿》みたいなのが誕生するのかな?
いずれにしても、イギリスらしい作品です。
ぜひ!
☆☆☆☆☆
ではまた。